教えてもらってないからできません – 他責思考を改めよう

他責思考 戯言

多くの学生は高校・大学・専門学校などを卒業すると、就職活動をしてどこかの企業に就職するのが一般的です。卒業した学生の採用は、企業側では新卒採用として扱われ、その時点の能力だけでなく将来性などを加味して採用することもあり、能力重視の中途採用とは少し異なる採用基準が設けられていることが多いです。

社会人経験をある程度積んだ中途採用の場合には少ないですが、新卒採用の社員の場合には何かを勘違いしているような価値観を持った人が稀にいます。特に聞くことが多いのが、学生時代のアルバイト経験のせいなのか、「教えてもらってないからできません」という理屈です。

今回は少し厳しいようですが、企業の教育と学校教育の違い、正社員とアルバイトの違い、そして資本主義社会における雇用と被雇用の基本的な原則を改めて見つめ直しながら、自分の能力がない事を他人のせいにしてしまう価値観を正すための、啓蒙的な記事になっています。

人によって考え方は様々なので、一人の意見として参考程度にご覧いただけますと幸いです。

企業に雇われる事 = 能力を買われている

基本的に、企業は何かを実施するための労働力として、人を雇っています。形は様々ありますが、一般的な企業の場合、その多くは利益の追求をすることが最大の理由でしょう。企業に雇われているということは、その企業の利益へ何かしら貢献することが求められるのです。逆に言うと、企業利益へ貢献しない人材は雇っている意味がないということになります。これは売り上げ金額への貢献という意味だけでなく、間接的に利益追求に繋がる採用活動や事務作業なども含みます。

企業内で行われる教育について

近年では、企業内で新人研修などの教育を実施する企業も増えてきました。特に新卒採用の場合は勘違いしてしまうかもしれませんが、新人研修などの企業内での教育制度は、学校での教育とはまったく異質のものです。

学校教育は、教育を受ける人に物事を教える事自体が目的です。基礎学力や教養などの能力を個人に付与するための仕組み・制度です。

一方で、企業などで行われる新人研修などの教育は、社員を教育することで企業の利益を最大化することが目的です。利益を短期間に拡大するために、できるだけ効率よく社員に仕事のノウハウなどをまとめて伝えます。研修の内容には、仕事の進め方だけでなく、企業の一員として最低限求められる社会人としての振る舞いなどが含まれている場合もあります。これは、社員の失敗による利益損失を防ぐためのリスク回避の一環ともいえるでしょう。

社内での教育

企業としては、新人教育などを必要とせず、直ぐに最前線で働ける社員が入社してくれるのが一番理想的な訳ですが、経験してからしか分からないような専門的なノウハウなどもあるため、難しいのが現実です。そのため採用後に研修制度などの中で、最低限教えておいた方が良いということをまとめて伝えるのです。雇用と教育においては、出来る人 = 必要な人、出来ない人 = 不要な人が基本であって、出来る人を最初から雇うことが難しいため、出来ない人に「仕方がなく」教育しているのが現状という事です。

残酷なようですが、教えなければできない人は、基本的には要らない人なのです。

あなたは何をできますか

よく分からずに働いている人もいるようなので、正社員とアルバイトの違いについても考えておきましょう。

雇われる側としては、アルバイトよりも正社員の方が給料が良いとか、保険やその他の福利厚生などが充実していたりといった観点になることが多いでしょう。正社員は「アルバイトよりも少し待遇がいい仕事」という程度の認識の人もいるくらいです。

企業側では、正社員とアルバイトには大きな認識の差があります。正社員は人材であり仲間であるのに対し、アルバイトは単純な労働力でありコストです。分かりやすく極端な表現をすると、正社員は人間で、アルバイトは物品の仕入れと同じくらいの感覚というくらい、まったく扱いが異なります。

アルバイトは「与えられた仕事を実施する労働力」なので、正直誰でも構わないのです。与えられた期間や給与などの条件で、決められた内容の仕事を終えることが出来さえすればよいのです。人間でなくロボットやAIで済むのであればそれでも良い仕事です。

利益の最大化

正社員は「共に利益追求をする仲間」です。企業の方針に則って、より高い利益を得られるように努力することが求められます。そうでないのであれば、正社員である必要はありません。もしそういった役職や正社員の仕事があるのであれば、企業側はコストのかからないアルバイトに置き換えることを検討すべきでしょう。

正社員であるということは、企業利益に貢献するために、あなたは何ができるのかを常に問われ続け、それに答え続けなければなりません。

正社員とアルバイトのコストの差について

実質の手取り金額として、「アルバイトも正社員もあまり変わらないのにそんなことを言われても」と嘆く新卒社員もいるかもしれませんので、企業側のコストについても確認しておきましょう。

アルバイトの給与は、企業側での支払いは額面通りであり、例え交通費などが支給されたとしても変わらず、月10万円支給であれば、ほぼ10万円のコストとして計上されます。

一方で正社員の場合、社会保険料などのコストに加え、会社の運営全体にかかるコスト(電気や機材、事務所賃貸料など)も含まれることになり、社員数など企業の規模にもよりますが、概ね支払う給与の2倍から3倍のコストがかかっています。総支給額が20万円の場合であっても、実際には40万円から60万円くらいのコストが掛かっているという計算です。

この金額を知っておくと、アルバイトと同じくらいしか仕事をこなせない社員が、どれほど企業に重荷となっているか理解できるのではないでしょうか。一か月の給料は2倍であっても、求められる仕事の内容は4倍から6倍となっているのです。

求められる仕事の大変さに対して手取り給与が比例して増えないことに理不尽を感じるかもしれませんが、日本での社員はアルバイトと違い、企業側は簡単に解雇できません。保険などの事を鑑みても、よく言われるように「安定」という強力なメリットが付いてきます。アルバイトは契約の更新をしなければ自動的に終了となり、口約束で継続と言われて過酷な仕事に耐えていたとしても、企業側が契約更新に応じなければ法的には納得せざるを得なくなります。

一方で、正社員の雇用契約は、期間が定められているものを除き、基本的には来月も来年も働き続けることができます。会社に損害を与えたなどの正当な理由がない限り、企業側は基本的に解雇しません。不当な解雇を行うと企業の経歴に傷が付き、長期的な利益損失につながるからです。

解雇されないことを見越して悪質な行為を繰り返す正社員がいたりしますが、企業側もそういった場合にはしっかりと対処して法的に処分します。そういった人材は、解雇された後に他の企業へ就職しようとしても、解雇した企業と情報が共有されるなどして採用されなくなることも多く、人生が終了してしまう可能性もあるので、日々の振る舞いには十分注意しましょう。

能力を認められるためにも自己投資しよう

会社の中では、指示された仕事をこなすのは「当たり前」の事です。

よく「給料があがらない」と嘆く人を目にすることがあります。自分の能力も上がらず、会社全体の利益も業績や利益も向上していないのに、給料が上がるはずもないのに、そういった会社を批判している人の多くはその事実と向き合おうとしません。よく政治家が選挙前などに、所得を増やすといった耳障りの良いことを演説していたりするのを耳にしますが、企業の支払う給与は企業側が決める事であって、政治家に決められるものではありません。税制などを改善することで、手取り給与を増やすということは、政治家も関与・貢献できる部分なので、勘違いしないようにしましょう。

本当に自分が貰う給料をあげることを望むのであれば、企業に対して「自分の能力が高い」ことを示すことが必要です。何か特別な事ができるといった能力は個人のステータスとしては魅力的ですが、ここでいう「能力が高い」というのは、企業から見て「利益貢献能力が高い」という観点です。企業の利益と関係のない事を実施する能力は、評価されない可能性があることには留意しておきましょう。資格取得のような分かりやすい能力の証明だけに限らず、真剣に自分の仕事と向き合って、効率やコストについて考え、改善について上司と話をするだけでも、自分の利益貢献能力を示すことになるでしょう。

「教えてもらってないからできない」という行動は、この「高い能力を示す」行動と全く逆であることに気づいたでしょうか。つまり、そういった人たちは給料をあげるどころか、企業側としては減給したいと思う程でしょう。

努力は報われるが100%還元ではない

自己投資を継続することで、会社に認められて昇給・昇格する人は大勢います。しかし、自己投資にかかった期間やコストに比べて昇給や昇格が「割に合わない」と感じる人もいるかもしれません。

企業側は、個人の自己投資に感謝をし、またその社員の将来性や人間性を高く評価します。しかし、企業の昇給や昇格はすべて、企業の利益の範囲内でしか行うことはできません。大きな利益を生み出すことに貢献した場合は、それなりに大きな昇給や昇格に繋がる可能性もありますが、それでも企業は利益の継続性などを考慮して、リスクの大きな大盤振る舞いはできないでしょう。

自分の貢献が100%自分に還元されないことに不服な人は、その分「自分の能力が高まった」ということで納得すると良いでしょう。企業を踏み台にして、自分の経験値を貯めることができたのだと割り切るのです。逆に言うと、自分の挑戦が失敗していた場合には、損失を個人に負担させるのではなく、基本的には会社側が負担してくれるのです。良い意味で「会社を利用している」形で、会社側としてもこういった個人の取り組みは歓迎しているところが多いです。

どうしても納得できず、「リスクがあっても自分は挑戦したい」と考えるような人は、個人で独立起業する道も考えてみると良いかもしれません。

自分が能力を認める側になる道も

教えられなければ仕事ができない、と考えるような人とは対極で、自分で考えて新しいことに挑戦しようと考えるような人は、自分の出した利益を会社が奪っているように見えて、不満を覚えることがあります。

先にも述べた通り、企業側の事業は、リスク・コストと利益を天秤にかけながら、バランスを取って実施されています。大きな挑戦は大きなリスクをはらむため、提案した大きな挑戦の稟議が通らず頓挫するということもあるでしょう。逆に、自分がリーダーとなって大きな事業を成功したとしても、そこで生み出された利益の多くが会社の取り分となって、自分には寸志程度の報酬しか貰えず、悔しい思いをすることもあるでしょう。企業運営では全体を優先する必要があり、個人はどうしても二の次にせざるを得ないものです。

成功失敗も含めて自分ですべて責任を負う覚悟がある、という人は独立起業を検討するのも一つの道です。

夢を目指して独立起業

独立起業には、自分で資金を用意して自分で考えた挑戦をし、そこで出た利益は全て自分のものになるという、大変ではありますが大きな夢がいっぱい詰まっています。しかし当然失敗すれば、それは全て自分の責任なので、大きなリスクがある事は言うまでもありません。

運よく事業が成功して軌道に乗れば、税金などの経理面や、広報その他の雑事から手を放し、本業に集中したいと考えるようになるかもしれません。つまり、雇用される側から今度は雇用する側へと思考が入れ替わっているのです。最初は指示した内容を従順にこなしてくれるアルバイトを雇うことになるでしょう。しかし、事業規模が拡大していけば、同じように利益を追い求める仲間が必要になるでしょう。

そんな時に、「教えられてないからできません」という社員を、あなたなら雇いたいと思うでしょうか。

他責思考を止めることから始めよう

今回は、企業内で行われる教育と学校教育の違いから、正社員とアルバイトの違い、そして起業して正社員を雇うところまで広げて、資本主義の根幹でもある「雇用」について考えてみました。

「教えられていないから出来ない」と考えるような人は、仕事の事だけでなく全般的に「他人が悪い」と考える傾向にあり、そういった思考回路の事を「他責思考」と呼びます。

他責思考は、自分の非を認めず改善もしないため能力の向上が見込めず、採用担当者は絶対に採用しない方が良いですし、就職活動をしている側であれば、まず他責思考を改める必要があります。何事もうまくいかない理由は、「自分に問題がある可能性」と考えて自分に出来る改善に注力することで、例え事態が改善しなくても、自身の能力は向上していきます。継続すれば、他責思考の人との間には埋めることが出来ない程の差を生み出し、将来大きな成功に結び付くことになるでしょう。

他責思考を止めれば仕事に役立つだけでなく、謙虚な姿勢によって人付き合いでも好意的に思われることが多くなるので、日々の生活も楽しくなることでしょう。自己肯定感を下げて自分を卑下するのではなく、自分の改善点を見出して努力するしていく行動は、自分の事を客観視して成長させているようでもあり、楽しいものです。是非前向きに取り組んでみてください。