英単語witherとblight – 「枯れる」ニュアンスの違い

wither-blight-difference 雑学

新しく出会った英単語などの意味を調べたら、既にその意味の別の単語を知っているということがあります。英単語を知れば知る程に、そういった場面が増えていき、言語表現の奥深さを思い知らされることになります。

今回は、学校では習わない単語ですが、ゲームや映画などでは結構目にする英単語のwitherとblightについて、紹介しています。どちらも辞書で調べると「枯れる」という日本語訳が載っている単語ですが、二つの単語のイメージやニュアンスは異なっています。それぞれの単語がどのようなイメージなのか、使われ方などを画像と共に確認していってみましょう。

witherとblightの違い

witherとblightは、どちらも「(特に植物などが)枯れる」という単語です。どちらの単語も「枯れる」という意味合いから転じて「弱らせる」といった意味としても使われます。

ただ、「枯れる」のニュアンスには、大きく以下の根源的なイメージの違いがあります。

witherblight
(盛りを過ぎて)枯れる(毒病気で)枯れる
witherとblightのイメージの違い

簡単に結論から確認しておくと、Witherの方は自然に枯れるイメージで、Blightの方は外的要因に侵されて枯れるイメージです。

順番にそれぞれがどのようなイメージなのか、分かりやすく画像を踏まえて確認してみましょう。

wither

witherという英単語には、「歳を取ったり、盛りを過ぎて」というニュアンスがあります。

植物でいうと収穫時期やシーズンが終わってから枯れるというイメージです。以下の画像は、収穫時期を過ぎて枯れてしまったトマトで、wither tomato(又はwithered tomato)と表現します。

夏の終わりのトマト

witherは、植物が枯れるというイメージと共に、しおれる、萎えるといったニュアンスや意味を持っています。日本語的に「枯れる」というと「茶色く変色して乾燥したイメージ」ですが、witherは、元気がなくなってしおれた植物や果実などにも使われます。

日本語では、一枚目の画像が「枯れたトマト」で二枚目の画像は「しおれたトマト」といった表現をしそうですが、英語ではどちらもwithered tomatoと表現できます。

英語の文章としては、以下のように使われます。

英文 : A plant will wither and die without water.
和訳 : 植物は、水なしでは枯れて死んでしまうだろう。

blight

blightという英単語には、「毒や病気といった外的要因によって」枯れるというニュアンスがあります。植物が病気にかかったり、キノコにやられて枯れたといった場合に使われる英単語です。

ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、分かりやすく比較するために同じくトマトの画像を紹介します。以下のように病気にやられて枯れた・ダメになった状態をblight/blightedと表現します。

また、果実などだけでなく、植物の葉や全体が病気に侵されている状態もblightと表現します。葉っぱがblightの状態も画像で紹介しておきます。

本来元気に育つはずだったものが、何らかの外的な要因によって枯れている状態のことをblightと表現するため、「被害を受けた」というイメージがあります。witherの自然的なイメージとは全く異なります。

英語の文章としては、以下のように使われます。

英文 : The blight caused by the disease destroyed the farmer’s crops.
和訳 : 病気による荒廃は農民の作物を破壊しました。

対象物によって変化するblightの日本語訳

上記例文では「荒廃」と訳されているように、blightは対象によって日本語では異なる言葉に訳されることが多い単語でもあります。代表的な例を以下に紹介します。

対象物日本語訳
植物枯らす
都市や建物荒廃させる
希望くじく
経歴など傷つける
だめにする
対象物によるBlightの日本語訳変化例

色々な日本語訳に変化してはいますが、共通して「だめにする」というニュアンスの言葉として訳されています。こうして考えると、英語ではBlightだけで表現できるのに、日本語だと色々な表現が必要ということになり、日本語は面倒な反面、より豊かな表現が可能とも言えるのかもしれません。

日本語では「ダメになった希望」というのは少し違和感がありますが、「Blighted Hope」と英語で表現すると、(ダメになったのか失われたのか挫かれたのか分かりませんが、)ニュアンスとして「ダメになった希望」として違和感なく伝えることができます。

wither, withering, withered

witherは自然的に枯れた、弱ったといったニュアンスの単語でしたが、英単語としてよく登場する変化形についても少し確認してみましょう。

今回は、比較的よく登場するwitheringとwitheredについて、意味やニュアンスと共に実際の使われ方を紹介していますので、是非イメージとして覚えるのに役立ててもらえればと思います。

witheringには委縮させる、怯ませるのニュアンスも

witheringは「枯らす」という意味の単語ですが、それと共に「弱らせる」というイメージから「委縮させる」「怯ませる」というニュアンスとしても使われます。witherが変化して-ing形となったことで、元の枯れるといった受動的な意味合いから、枯らす・怯ませるといった能動的な意味合いに変化しているので、使う時は注意しましょう。

ゲームなどではWithering Fireのように、攻撃技の修飾子として登場することがあります。意味やニュアンスを知っていれば、名前から、「相手を委縮させる/怯ませるために何かを打ち出す」技であると想像できます。主に威嚇目的や制圧射撃用途の技名などに使われることが多いでしょう。

以下の画像はBlizzard Entertainment社のHeroes of the StormというLoL(League of Legends)によく似たゲームに登場する、Sylvanasというキャラクターの攻撃技(Withering Fire)の説明文ツールチップです。説明文にある通り、最も近い敵(closest enemy)を撃つ(Shoot)技です。

また、本来の弱らせるの意味から弱体化、デバフ効果の意味としてWitheringが使われることもあります。以下はLast EpochというARPGに登場するAilment(状態異常)の一つ、Witheringの説明文です。Last Epochでは受けたターゲットが呪いのダメージを多く受けるようになるデバフとして登場しています。

余談 : SylvanasとAnduinがカッコいいWoWのTrailer紹介

余談ですが、上記で紹介したWithering Fireを使うSylvanasという女性キャラクターがカッコいいWorld of WarcraftのTrailerのYoutube動画を紹介してみます。

下の動画サムネイルの左の女性がSylvanas、右の仮面の人はイケメン男子でヒーラーでもあり、海外ではBaby faceとも呼ばれて愛されて?いるAnduinです。2024年現在で3000万回以上再生されているトレイラー動画で、私も時々思い出して見直したくなるカッコいい動画です。

World of Warcraftは世界で最も多くの人がプレイしているMMO RPGでもあり、上記トレイラー中の決め台詞(Stand as one For the Alliance!)は、その直前の情景含め本当にカッコいいです。

witheredはweakに近い弱体化の定番

witheredという単語は、ゲームなどのデバフ(弱体化)などで頻繁に登場します。

元々の「枯れた」というニュアンスと共に、「しおれた、弱った」といった意味があり、日本でもお馴染みの単語であるweak(ウィーク:弱い)に近い使われ方をします。「ただ単純に弱った」というよりも、「植物が枯れてしおれたイメージの弱った」なので、若干言葉としてのニュアンスは異なります。

相手が弱ったという状態・デバフなので、ゲームや作品によって様々な効果として汎用的に使われる傾向がありますが、概ね被ダメージ増加系のデバフであることが多いように思います。

Withered in PoE

2024年の11月には続編のリリースを予定しているSteamの任期ARPGであるPath of Exileでは、Witheredは特定の種類(Chaos)のダメージを増加するデバフとして登場します。同作品ではこのWitheredのデバフを与えるWitherという魔法も登場します。

Witherは、本質的には「植物を枯らす」というニュアンスの単語ではありますが、転じて「弱らせる」というニュアンスでも使われることが多く、Witheredは(毒や病気等の)混ざり物のない自然な弱体化というイメージで使いやすい単語とも言えるでしょう。

blight, blighted

blightingという単語は辞書を引くと「荒廃」と出てきますが、日常会話や文書などでもあまり見かけないように思います。

blightedは、witheredと同じように「枯れた」から「弱った」といった意味で使われますが、「毒」や「病気」というイメージが加わります。毒のような悪性の何かに「侵されている」というニュアンスが強い言葉です。ゲームなどの作品においては、毒のような効果があるものをPoisonではなくBlightとしているものがあるほどです。

枯らすの意味であるblightは、カタカナ表記すると「ブライト」になりますが、日本の洗濯用洗剤や照明機器などで使われる「ブライト(bright)」とは単語が異なるため注意が必要です。以下の記事では、明るいを意味するBrightと、枯らす意味のBlightについて比較して紹介しています。Dead By Daylightという人気のホラーゲームにも「ブライト」が登場しますが、このキャラクターの英名は「The Blight」です。記事内で詳しく紹介していますので、是非気になる方はチェックしてみてください。

以下の画像は、Darkest Dungeonというゲームに登場する技の説明文の画像です。同ゲームでのBlightは、出血ダメージと同じような継続ダメージとして登場します。日本のゲーマーの人には毒の継続ダメージと紹介したくなる効果ですが、下の技はPlague Doctorというキャラクターが使用するものであることを考慮すると、毒というよりもPlague(黒死病:ペスト)のような病気のイメージに近いのかもしれません。ただ、Blightの効果は敵やPlague Doctor以外のキャラクターも使うことができるため、毒や病気等「キャラクターに害を及ぼす何か」というイメージにも受け取れます。

日本語訳が同じ単語は興味深い

日本語と英語は異なる言語で、一つの英単語が一つの日本語に結びつくようにはそもそも出来ていません。それぞれの言語において、各単語の元のイメージを知ることは、言語を理解する上でとても重要な事だと感じます。

今回まとめたWitherとBlightは、日本語訳としては両方とも「枯れる」として問題のない英単語です。ですが二つの単語には、今回紹介したように、それぞれには異なったニュアンスがあり、そこから転じた意味も含めて使われ方には明らかに差があります。

英単語を覚える際には、例文などを頭に叩き込むというのも良いかもしれませんが、個人的には画像や動画、映画のシーンなどと合わせて覚える方が記憶に残りやすいように思っています。赤ちゃんが言語を習得する過程では、辞書の説明や難しい例文などを覚えたりしないのと同じように、目で見て耳で聞いたことを覚えるのが一番効果的なのかもしれません。特に、絵や情景が浮かぶものと一緒だと、思い出しやすいようにも思います。

日本人的には、WitherとBlightは日本語訳が同じことから「似ている言葉」と感じてしまいそうですが、おそらく英語話者の人からすると全然似てもいない単語なのだろうと思います。逆の立場では、日本語の敬語表現(食べる、頂く)や一人称(私、俺)に通じるものが有るのではなかろうかと思います。

どちらも同じ意味ではあってもニュアンスや使う状況が異なるといった表現や単語は、どんな言語にも存在していて、その言語の作られた歴史や文化を感じることができ、とても興味深いと感じます。是非皆さんも、出会った単語と同じ意味の単語を知っていたら、その単語のニュアンスの違いについて調べてみてください。言語の面白い部分と出会えたり、新しい発見があるかもしれません。

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