日本では、義務教育過程などで数学や社会など様々な分野の基礎を学びます。科目の一つとして学ぶことになる英語は、現在も多くの人が会話や文書などの広い用途で使用している言語です。
ITエンジニアは仕事をする上で英語に触れる機会も多いため、就職採用の試験などでは人材の英語力に重点を置いている企業も少なくありませんが、実際にIT業界に入って働いていない人にとっては、英語が必要な理由は分かりにくいものです。今回は、ITエンジニアを目指して勉強したり就職活動をしている人に向けて、IT現場での英語が必要になる状況や理由について紹介していますので、是非参考にしてみてください。
就職採用試験に向けてのアドバイス
最初に就職採用試験について確認しておきましょう。
IT企業に限りませんが、英語という科目は就職試験の筆記試験では定番で、文系理系問わず多くの企業が採用試験の科目の一つに含めています。これは、英語という言語が日本語とは違って「世界共通語」としての役割があり、人と接する上で必要となることが多い状況にあるためでしょう。また、義務教育過程に英語の科目があることから、学生の本分である「学業」にどの程度真剣に取り組みしてきたのかも判断されます。

英語の試験の内容については、各企業が求める英語力に基づいて試験問題が作成されているため、企業によって様々です。英訳が重視されることもあれば、単語力が重視されることもあるでしょう。企業採用試験の傾向を知ることは難しいため、基礎学力を十分につけてから臨む他ありません。
IT企業での採用を担当していた経験から、いくつかアドバイスを紹介します。
筆記試験の結果は「間違い方」も評価項目
英語に限りませんが、筆記試験の結果は点数だけが評価項目でない事にも注意が必要です。
私の経験談ではありますが、面接試験の前には、面接担当官である私を含めて、社長や管理部など他の社員と簡単な打ち合わせの場が設けられることがあります。その際には、履歴書などの提出書類と共に、筆記試験の結果が提示されて、対象人材(応募者)の注目点や気になる点などを確認し合います。
筆記試験の結果では、数学などでは解き方など解答に至った経緯も評価項目になりますし、英語については単語力や英文法など得意・不得意分野を見極めます。集団ではなく個人面接の場合は、面接中に筆記試験の結果に関連した質問をすることもあります。(例 : 英語は苦手 or 嫌いですか?)
募集人員に対して応募者が多い場合には、筆記試験や一次試験は「単なる足切り」として利用して、結果に注目しないことも多いかもしれません。比較的応募人数の少ない中小・零細企業などの採用試験では、全員をしっかり評価しても大きなコストになりにくいため、特に一次試験の結果を大事にする傾向が強いでしょう。
英語関連の資格について
TOEICや英検など、英語に関する様々な資格がありますが、就職活動のためにチャレンジすることを検討している人もいるのではないでしょうか。
資格試験に合格していることは、就職試験において「絶対に有利になる」要素です。採用試験では、能力がある事を証明する以上に、「目標を定めてそれを達成する能力」が評価されます。もちろん、企業に有益な資格所持者は、企業利益への貢献も期待されます。
ITエンジニア募集での「英語に関する資格」については、それほど重要視されていない場合が多いかもしれません。確かにITエンジニアに英語力は求められる傾向にありますが、英語が中心の仕事ではないからです。もちろん、資格試験に臨んだ姿勢は評価されますし、実務でもしっかり役に立ちます。
ITエンジニア採用での情報処理関連の資格について
ITエンジニアに関連した職種への就職を目指して資格取得を検討しているのであれば、基本情報処理などIPAが実施している「情報処理関連の国家資格」から選択することをオススメします。特に学生時代は社会人よりも時間的な制約が少なく、勉強にしっかり時間を取りやすいため、資格取得にチャレンジする絶好の機会です。
エンジニア採用として最も募集の多いプログラマーという職種については、以下の記事でもう少し詳しく解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
ITエンジニア職に求められる英語力
ITエンジニア職といっても職種には様々ものがあり、職種によって求められる能力は異なります。
ITエンジニアという職種は紛れもなく技術職ですが、特に新卒採用の場合は採用時点の技術力には期待せず、それよりも人間性や向上心といった部分に重点を置いて評価している企業も多いです。
- 人間性・向上心
- 専門技術への現時点の能力や興味
- 業務遂行に必要とされる周辺知識
企業にもよりますが、概ね上記のような優先順位で、採用試験を通じて人材を評価していきます。ITエンジニア職における英語は、この中の3番に該当する「業務遂行に必要とされる」知識になります。
ここでは、ITエンジニア職全般に共通して必要とされる英語力について紹介しています。
英会話はほとんど必要ない
英語は嫌いではないけど、英会話は苦手という人も少なくないでしょう。英語は日本語にはない発音も多く、英語を発話することを恥ずかしいと感じる日本人も多いようです。日本に住んでいると、英語を使ってコミュニケーションが必要となる機会は少なく、英会話を実践した経験のある人は、海外旅行の経験がある人など一部の人に限られるでしょう。

ITエンジニア職の多くは、英会話能力を必要としません。もちろん世界規模で展開している大企業などへ就職する場合は必要となることもあるでしょう。その場合はITエンジニア職としてではなく、企業内で働くこと自体に英語力が必要とされることになるでしょう。
ITエンジニアは英語を使って会話をする機会は少ないですが、パソコンの画面や印刷された文書での英語を読解する機会が多い職種です。
そのため、英語の口語表現や発音といった知識や能力は、ITエンジニアの仕事の中では役に立つ機会は少なく、就職に向けてそれらの能力を向上させても高い効果は得られないでしょう。もちろん、趣味や興味の範囲で取り組むことは悪い事ではないですし、採用面接などで英会話が好きだという話は、面接官の興味を引くこともできるでしょう。ただ、技術職の評価を高める効果があるかどうかは、採用担当者やその企業の英語に対する姿勢次第といったところです。
世界的に発展途上なIT技術における英語
少し専門分野の話を紹介していきます。
IT技術というのは、今や世界中で活用されている重要技術の一つなため、古い歴史があるように思う人もいるかもしれませんが、車や電化製品などとは異なり、この50年程度で一気に成長した新進気鋭のまさに発展途上技術です。今や生活インフラにもなっているインターネットですが、場合によってはお父さんやお爺さんの時代にはなかった技術であることを忘れてはなりません。(WindowsがOS統合されたのが1995年で、インターネットは更に数年後に爆発的に普及)

物凄いスピードで進化・発展しているIT技術は、今も尚新しい技術が生み出され続けています。その技術は日本だけではなく、世界中で研究開発されているのです。
リファレンスや各種ドキュメントの最先端は英語
世界中で研究開発が進むIT技術の重要書類のほとんどは、基本的に英語で書かれています。開発された国の言語と、第二言語として最優先にされるのが英語という場合も多いです。逆に言うと、英語の文書のない技術は世界に広がりにくく、優れた技術の場合は有識者が英語のドキュメントから用意することもあるでしょう。日本語のドキュメントは、そうして広まったものに付与される10番目くらいの言語です。
日本産のものを除き、日本語のドキュメントがある技術は「一昔前」のもので、英語のドキュメントしかないものが「最先端」なのが、現在のIT技術分野の世界といえるのです。
特に最先端技術の活用を推し進めているIT企業の場合、ITエンジニアを含めた技術職が触れるリファレンス(説明書や使い方)や、仕様書などの各種ドキュメントのほとんどは英語という状況でしょう。Googleのような大手企業のサービスであっても、日本語のドキュメントを掘り下げていけば、最終的には英語の文書に辿り着く(日本語のローカライズ/翻訳が間に合っていない)ということはよくあります。
安定した技術だけを採用する様な企業であっても、セキュリティーなどを含めた各種アップデートは最新情報を追わなければならないことも多いです。世界的なソフトウェアを活用している場合は、最初から日本語のドキュメントが用意されていることもありますが、こういったアップデートの告知なども英語でされていることも多く、ITエンジニア職はその英文を読解して、アップデートの是非について決断を迫られるという局面はよくあります。
プログラム言語仕様も基本は英語
ドキュメントやリファレンス以外でも、プログラム言語のようなITエンジニア職しか触ることがない部分にも英語が頻繁に使われています。
プログラム言語の中には日本語で命令文を記入できるようなものも一部ありますが、ほとんどの場合はアルファベットや英単語を使った文法体系になっています。プログラム言語の文法だけでなく、機能や仕様面に関する名称などでも英語が使われていることが多く、英単語が分かればどういった機能であるかを知ることができるでしょう。
逆に言うと、ITエンジニアは仕事を通じて英単語を覚える機会が多い職種とも言えます。

日本語になってしまっている英語をカタカナ語で覚えることも多いですが、ITエンジニアの場合その元になっている英単語自体を知っておくことはとても大事です。何故なら英語で調べた方が効率よく情報を収集できるからです。先の話と同様に、「最先端の情報は英語」にあることが多いためです。
プログラムの不具合で困っている時には、日本語の情報だけでなく、日本語と英語の情報を活用できた方が、圧倒的に速く問題を解決できることになるでしょう。環境によっては、エラーメッセージが英語でしか表示されないということもありえます。
日本はIT後進国 – IT関連技術・サービスで日本製はほとんど無い
プログラム言語だけでなく、OS(Operating System)やServer、NetworkなどITソフトウェアの各種周辺技術でも英語が基本の世界です。
ServerやOSの設定においては設定の項目名やコマンド名などは英単語が多く、日本語の項目があるものはWindows上くらいかもしれません。Windowsは非技術者が利用することが多いため、Windows用のソフトウェアなどのマニュアル文書等では日本語が使われます。ITエンジニアはサービスを提供する側なので、専門技術の英語を理解して活用し、利用者に日本語で提供する能力が必要になります。
残念ながら日本製のOSやServerといった技術はほとんどなく、日本のIT技術者は母国語を技術分野で活かす機会は多くありません。そういった土壌を作りたいのであれば、世界的なOSであるWindowsやLinux、Macなどに打ち勝つ技術力や信頼性を勝ち取るところから始めなければなりません。
多くの人が利用しているAmazonやX(旧Twitter)のようなWebサービスは、日本語で利用することができていますが、そのサービスを提供する側であるServerやDatabase、Networkなどの多くは英語圏で作られていて、日本語の文書は「あったらラッキー」程度のものなのです。
「日本語は特殊な言語」と思い知るIT業界
私はITの世界で生きてきた人間ですが、日本語という美しい言語に魅せられている人間の一人でもあります。しかし、IT業界で働くエンジニアの中には、IT分野における日本語の特殊さのせいで、仕事で日本語を扱うことが嫌いになる人もいたりします。
近年ではIT業界以外の人も聞いたことがあるかもしれませんが、ソフトウェア上の日本語には「文字化け」という不具合が生じる可能性があります。正確には日本語だけでありませんが、アルファベット以外の文字を利用する場合にのみ起きうる障害の一つです。
日本語は「文字化け」が起こる可能性のある言語
IT分野での日本語はマルチバイト文字と区分けされます。これはアルファベットと違い、文字の表現に必要とされる情報量が多い(複数バイト)ことを意味します。簡単に言うと英語の「A」は情報量が[1]なのに対して、日本語の「あ」は[2]のように、情報量が倍になるという話です。(バイトというのはコンピュータ上の情報量の単位)

この複数バイトの組み合わせによって様々な文字を表現するのですが、この規格には統一されたものがなく、各企業や団体が自由に発展させてきた経緯があって、この規格を文字コードと呼びます。文字コードが異なれば、データとしては同じ組み合わせなのに表現される文字が違うということが発生し、文字化けという現象が起きてしまいます。
現在は、世界的にこの文字コードの問題を解決すべく、Unicodeという世界規格が登場し、発展してきており、その中でも有力なUTF8という文字コードは、今やインターネット世界での共通規格のように広く利用されるようになってきています。そのおかげで、現在は文字化けという現象自体を利用者が目にする機会は圧倒的に少なくなりました。それでも特定の操作、特にLinuxやMacなど、Windows以外の環境とデータをやり取りした際などには注意が必要なことは変わりません。
日本語入力ができない環境もある
文字化けが起きる機会は少なくなってきましたが、それでもIT分野における日本語は特殊で扱いが難しい言語です。
日本でWindowsのパソコンを利用していると、「半角/全角」キーを押すと、いつでも日本語を入力することができますが、世界的にはそのキー自体がないのが常識です。機器もOSも英語用に作られていて「日本語が使えない」のが基本で、その上で「日本語を使えるよう」にしてあります。
ITエンジニア職が使うことが多いLinuxなどでも、日本語が使えるようになっているものも多いですが、サーバーの設定や状況の確認などでは英語が必要になることも多く、日本語を使えるようにすることの作業量の増加や日本語モジュールへの危険性から、サーバー等には日本語環境を構築しない選択をすることも珍しくありません。その場合は、日本人が利用しているにも関わらず、注意書き(コメント)なども全て英語で記入することになります。
日本語は歴史や文化の面では素晴らしい言語ではありますが、IT分野においては面倒ごとが付きまとう厄介な言語でもあります。
英語を読むことを楽しもう
今回は、ITエンジニアを目指す人には英語が必要になる理由について紹介してきました。ITエンジニアが開発や運用で使うことになる製品が英語圏で作られている以上、英語という言語が「必要になる」ことは避けられません。
IT業界を目指すのであれば、日本語ドキュメントがあったとしても、英語のドキュメントもチェックするように心がけるくらい、「英語が最新」であることを意識しておきたいものです。何故なら日本語のローカライズ(翻訳)は、英語の文書ができた「後」に作られるものなので、最新とは限らないからです。
英語を読むことを苦痛に思うのではなく、英語を読むことを楽しむ気持ちで触れ合っていきましょう。コミュニケーションの英会話とは違い、文書の中身を理解できればよいので、プログラム言語のように構造的に文書を捉えていくと、ITエンジニア志望の人であれば一層楽しめるかもしれませんので、是非試してみてください。楽しみながら英語と触れ合うという点では、海外の映画やドラマ、英語のゲームのような趣味も良いでしょう。ただ楽しむだけでなく、少し「英語を学ぶ意識」をもって楽しむようにすると、そういった物からでも学びはあるものです。
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