英語の「ワース」は良い・悪いの意味がある

英語の「ワース」は良い・悪いの意味がある 雑学

英単語の中には、音がそのままカタカナの日本語として使われるものがいくつかあります。特にゲームやe-Sportsなどの世界では、レベルとかアイテムのように元々英単語だったものがカタカナの日本語になって定着しているものが多くあります。

今回取り上げるのは、「結果としてワース」のように使われる「ワース」という言葉と元の英単語における危険性についてです。カタカナでワースと表現する英単語は一つではないため、この言葉を使う場合には十分注意が必要です。

「結果としてワース」のような表現

近年盛んなe-Sportsの分野などで聴く言葉に、「結果としてワース」のような表現があります。これは、英単語の「Worth」を基にした日本の造語で、「価値がある」という元の意味から、プラスとなった・結果的にOKといった意味で使われています。

チームで戦う競技などで、一人が犠牲になったけれどもそのおかげでチームが勝利することが出来た場合などに、その犠牲は痛いけれども「結果的にワース」といったように使われます。VALORANTやLoL(League of Legend)のようなe-Sportsの競技シーンにおける実況だったり、そういったゲームをプレイするストリーマーの会話の中で聞くことがあるでしょう。

時には、競技シーンでも活躍するストリーマーの方の中には、全然関係ないゲームの失敗などをごまかすために、理由を付けて「結果としてワース」というような冗談を言う人もいるでしょう。この失敗は、大事な経験であるとか、成功するための重要な布石なのだ、といった意味で使われていて、ただの失敗ではないことをアピールする意図で使われている、とても面白い使われ方だと思います。

ワースというカタカナ語

ワースという言葉は元々は英語で「Worth」で、価値があるといった意味になります。

# (例文) This guitar is worth two thousand dollars. 
# (和訳) このギターは2千ドルの価値があります。

上記例のように、物の価値がある場合に使われる他、自分にとって価値があるといった概念的なものにも使われることがある言葉です。発音記号ではwə’ːrθで、th音がありますが日本語のカタカナでは「ワース」に近い響きとなります。

しかし、このワースという言葉には注意が必要です。

カタカナでワースと表現できる英単語には、Worthの他に「Worse」もあります。

カタカナで単に「ワース」では悪い意味もある

英単語のWorthは価値があるといった良い意味ですが、同じような音のWorseという単語では「悪い」という意味になります。

英単語カタカナ表記意味
Worthワース価値がある
Worseワース悪い
カタカナ語のワース

英単語のWorseは、発音記号ではwə́ːrsとなり、最期の音がs音になっています。

日本人的にはth音とs音の聞き分けは難しいかもしれませんが、この小さな音の違いで意味がまったく異なるために、使用する場合には注意が必要です。

# (例文) The storm is getting worse.
# (和訳) 嵐がひどくなってきました。

上記例文のように、悪いの他に酷いといった意味でも使われる単語で、日常会話の中ではgettingとあわせて悪くなっている状況を表す場合に頻繁に使われます。どんどん酷くなっている、だんだん悪くなるという意味で「getting worse and worse」という表現は、特に英会話の頻出イディオムとして知られています。

二つのワースは、似た音を思った単語ではありますが、意味が全く異なっているため、日本人は特に注意しなければならないでしょう。

英文読解で間違えないように!

e-Sportsは広い世代が楽しんでいる比較的新しいエンターテインメントですが、これまでのアナログスポーツと違って自分たちも気軽に参加することもできるため、多くの人が見るだけでなく実際にプレイして楽しんでいます。

特に近年のインターネットの普及に伴って、若い世代における新しい遊びや趣味となっていることもあり、学業との両立をしながら隙間時間に楽しんでいる人もいるでしょう。こういった人たちの中には、遊びでe-Sportsを楽しんでいる一方で、学校や塾などで勉強しているといった人もいると思います。

世界のe-Sportsの試合などを観戦すると、同時に英語の勉強にもなったりもするかもしれないので、積極的に新しい文化に興味を持って触れ合っていくことは良い事でしょう。しかし、今回取り上げている「カタカナ語」には注意が必要です。

英語の試験などで「Worse」という英単語が出てきたとき、頭の中で「ワース」と読んで「価値がある」としてしまうと、それは誤りです。価値があるのはthの「Worth」の方です。

この誤り自体は昔からよくある間違いでもあり、似たような事例で「Worth」を最低と読み取ってしまうということもあります。これは日本語で使われる「ワースト」という単語がとても一般的に認知されていることに起因している間違いで、Worthは価値がある意味なので全く逆の意味で捉えてしまうという致命的な誤りです。

e-Sports界隈で使われるワースを、単純に価値があるという意味で理解するのではなく、英単語のWorthが基になっていて、似た様な音の単語にはWorse/悪いという意味がある事を知っておけば、英文読解の試験などでこれらの単語がでてきても間違えないようになると思うので、是非この機会に覚えてみてください。

Among Usをアモアス!?

カタカナ表記に関する似た様な事例を一つ紹介します。

Among Usという人気ゲームがあり、公式の発表では日本語表記は「アモング アス」とされています。Among Usはゲームのタイトルとしてとても有名になりましたが、英会話の中で結構使われる表現でもあり、映画などでも「私たちの中の誰か」といったような言い回しで度々耳にします。

Among Us

Amongという英単語の発音記号はəmʌ’ŋです。普通にカタカナ表記すると間違いなく「アマング」でしょう。何故公式がアモングとしたのかその意図は判りませんが、ネット界隈ではアモング・アマング論争が起きていたことは記憶に新しいです。

問題となっているoの音ですが、この音は母親を意味するmother(発音記号:mʌ́ðər)と同じ音です。

日本人には分かりにくいかもしれませんが、英語ではoの音をア、aの音をオに近い発音をする単語が多くあります。よく例に出される単語としては、workはワークで、walkはウォークがあります。

ゲームのAmong Usの事をアモアスと表記することは、公式の発表に準じているので間違いではありませんが、英語のAmoung Usをアモングアスと読んでしまうと、それはMotherをモザーと読んでいるのと同じくらい恥ずかしい間違いをしていることになるので注意が必要でしょう。

カタカナという危険で便利な言葉

カタカナという言後システムは、特に外来語を音で表現して取り込むことに使われていて、多くの言葉をスムーズに利用することができるため、とても優れていると言えるでしょう。

しかし、このカタカナという言後システムがあるがために、本来の単語を変形して自分たちの言語体系に取り込むという習慣が根付いていることは、個人的にはとても危険で良くない事だと感じます。

何故なら、日本人は「カタカナ語」として覚えた後に、更に「本来の単語」を覚えるという作業を行い続けているからです。人によっては「本来の単語」を知らないままで済む人もいるかもしれませんが、インターネットを通じて日本語だけでなく英語など海外の人やコンテンツと触れ合う機会がある人は多く、そういった人たちはこの2段階の習得を行い続けています。

明治時代の日本語廃止論者ではありませんが、日本語という言後システムは他の言語に比べて複雑で、習得することがとても大変な言語の一つです。その要因の一つが平仮名・カタカナ・漢字という3種類の文字システムがあることで、日本人は外国人に比べて「言語の習得に脳のリソースを多く割いている」とされることがあります。

今回のワースについても、カタカナのワースを覚えるのではなく、脳内で「Worth」と英単語で直接覚えてしまえば、覚える量は半分になり、変な間違いをすることもなくなるためとても合理的だと思うのです。同じようなことは国名の中にもあり、イギリスやオランダのような、英語や現地の国名と違う日本独自の国名は、命名していることも覚えることも意味を見出すことが難しいと感じます。元の国名であるUKとかNetherlandsと日本国内でも使っていれば、わざわざ英語の試験や海外のニュースを見る際に覚え直さなくてもよくなると思うのです。

カタカナはとても便利な言語体系ではありますが、新しい外来語由来の言葉を覚える場合には、必ず元の単語も一緒に覚えるようにするのがオススメです。

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