インターネットが普及したことで、日本人として生活していても英語と触れ合う機会が格段に増えていっているように感じます。YoutubeやX(旧Twitter)などで英語の文章をみかけた際などに、単語は知っていても文全体の意味が直感的に分からないことがあります。単語一つ一つの意味が分かっていても、慣用句的な表現として熟語的に使われることで異なる意味になることが、日本語にも英語にもよくあります。
今回は、Leaveという中学校で習う単語を使った表現について少し掘り下げてみます。Leave it to me(任せて!)という表現では、日本語と英語において言葉のニュアンスが異なる印象で、個人的には非常に興味深いと感じます。
映画などで頻出するLeave it to me!
Leave it to meという表現は映画やアニメなどで頻繁に登場し、「任せて!」という意味で使われます。
類似表現としては以下のようなものがあります。
- I’ll take care of it:任せてください、私がやります
- Let me handle it:俺に任しとけ
- I’ll handle it:私に任せてください
複数人で何か問題と直面した際に、自分が一人で対処することを伝えるために使われるため、物語の重要な場面などで聞くことが多い表現です。日本人的には、波乱が起きる前兆に感じたり、いわゆる死亡フラグのように感じることもあるかもしれません。
しかしこの表現は、日本人的には少し違和感を感じてしまいます。もう少し詳しく見ていってみましょう。
Leaveの本来の意味は「離れる」
Leaveは中学校で習う英単語で、「離れる」とか「去る」といった意味の動詞です。自動詞、他動詞どちらにも使われる単語で、それぞれ以下のような意味合いで使われます。
- (他動詞) 去る、置いていく
- (自動詞) 去る、出発する
時制の変化は少し変わっていて、以下のようになります。
- (現在) Leave
- (過去) Left
- (過去分詞) Left
- (現在進行形) Leaving
Leftは、動詞として使われている場合はLeaveの過去形で、形容詞として使われる場合は「左の」という意味になるため、文中に現れている場合は注意が必要です。日本人としては、左をカタカナを使ってレフトと表現することも多く馴染みがありますが、英語では動詞としてもよく使われます。
- I left the room. (私は部屋を出た/立ち去った)
- My left arm was broken. (左腕を骨折した)
離れる、去るという意味のLeaveですが、目的語などが付くことで少しずつニュアンスが変化します。
Leaveは目的語を取って「残す」
Leaveという単語は、目的語を取ると「残す」という意味になります。目的語を「残して離れる」というニュアンスです。この表現は過去形のLeftを用いても様々な場面で使われます。また、自動詞として使われる場合は「出発する」という意味でも使われます。
- I left my daughter. (私は娘を置いて立ち去った)
- The train left Tokyo. (その列車は東京を出発した)
どちらも離れるという元の意味ではありますが、日本語に訳す際には適切な表現に変化させると、より違和感のない日本語になるでしょう。試しに元の意味で訳してみましょう。
- I left my daughter. (私は娘から離れた)
- The train left Tokyo. (その列車は東京を離れた)
「離れる」と訳してもどちらも意味は通じますが、ニュアンスが伝わりにくいように思います。個人的には「離れる」は意志が感じられないように思いますが、Leave + 目的語の形は明らかな意志の力が働いていると感じるため、「立ち去った」とか「出発した」の方がニュアンスとしてはより正確だと感じます。
頻出表現のLeave me alone
Leave me aloneという英語表現は、「私の事は放っておいて!」「ひとりにして」といった意味で、ドラマのワンシーンなどで頻繁に使われます。鬱陶しい人に付きまとわれた時にも使える表現なので、海外旅行に行く前に覚えておいても良いかもしれません。
特に、Leave + 目的語の後に「alone」が付くパターンは口語表現では定番で、以下のようにme以外を目的語にする形でも使われます。
- He left the children alone in the car. (彼は子供たちだけを車に残した)
- I left her alone. (私は彼女を放っておいた)
この表現は、日本人である私にはイメージしやすいと感じます。「離れる」という本来の意味そのままで、「私から離れて = ひとりにして」と直感的に理解できるからです。
この形に「to」が付いたらどうなるのでしょうか。
Leave + 目的語 + to で「任せる」
「Leave + 目的語」は「残す」という意味で使われますが、そこに「to」が付け加えられると、「任せる」という意味合いになります。
- Leave + 目的語 : 残す
- Leave + 目的語 + to ~ : ~に任せる
今回最初に紹介した「Leave it to me」という表現もこの形になっています。
この表現は、日本人的には直感的に分かりにくく、私は日本語と英語が異なる言語であることを改めて思い知らされました。日本語的には、「任せる」と「離れる」は信頼や心情的なニュアンスで大きく異なるように感じます。英語では、目的のものから離れることで「任せる」というニュアンスになっているようです。
日本語での「信頼して任せる」というニュアンスで使われる他に、投げやりに「決めていいよ」というニュアンスで使われることもあります。
- Leave it to me. (私に任せてください)
- I’ll leave it (up) to you. (君の判断に任せた)
「おまかせ」を意味する「up to you」はネトゲなどでも便利
上記例文の中に省略可能な(up)が登場していますが、口語表現などではLeaveを使わず「up to you」という表現も「任せる」という同じ意味で使われます。特に意見がない場合、相手に判断を委ねる際に使える表現です。
- What do you want to go next? (次どこ行きたい?)
- (It’s) up to you. (おまかせ~)
ネットゲームなどのチャットなどでとても便利な表現ですが、あまり使いすぎると「やる気がない」とか「不機嫌」なようにも見えるので、相手との信頼関係や状況をみながら使いましょう。It’sは省略されることが多く、up to youだけで意味は伝わります。
ポジティブもネガティブもあるLeaveの頻出表現
英語のLeaveは、目的語 + toが付くことで「任せる」といったポジティブな意味合いで使われますが、元々の意味は「離れる」というネガティブな印象の単語で、単語としてとても興味深いと感じます。
今回取り上げた英語表現について以下におさらいしておきます。
- Leave it to me : 任せて!
- Leave me alone : ひとりにして…
Leave it to meは、「俺に任せろ」という自信を感じる前向きな表現ですが、言葉の本来の意味としては「邪魔だから離れていろ」というものと言えるでしょう。
日本語では心情を誤解させないような言い回しを大事にするからか、英語のこういった誤解を与える可能性がある表現は特に面白く感じます。これを言われた英語ネイティブの方は、「心強い」と感じているのか、「邪険にされた」と感じているのか、日本人としては理解しにくく興味深いです。英語話者でない日本人が、この表現を知らずに単語から直訳してしまうと、間違いなく後者に感じてしまうでしょう。
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