ThickとThinの覚え方 – 間違いやすい「厚い」と「薄い」

ThickとThinの覚え方 言語

言語学習では「単語力」という言葉が使われます。言語の学習においては、文法や時制なども重要ですが、「単語」を知らないとそもそも言葉を紡ぐことすらできません。日本語を使う日本人も、日本の言葉で知らない単語があるように、英語など他の言語を使っている人たちも全ての単語を知っているわけではありませんが、最低限「日常的に使う単語」は覚えているものです。

「厚い」と「薄い」という単語は、日本語では全く異なった単語ですが、英語では両方とも「Th」から始まっていてよく似ています。間違えてしまうと逆の意味になってしまうこれらの単語について、基本的な意味から覚え方の例まで紹介していますので、是非参考にしてみて下さい。

ThickとThinの基本的な意味

まずはそれぞれの英単語について、辞書的な意味を確認しておきましょう。

単語の違いをイメージで覚える方法については後述しますが、簡単に違いを覚えるだけであれば、「長い単語(Thick)の方が太い・厚い」と覚えると良いでしょう。

Thick and Thin image

Thick – 厚い

Thickの代表的な意味は「厚い」です。発音はカタカナで書くとすると「シック」ということになりますが、最初の音はTH音なので注意が必要です。

物の分厚さを表現する以外にも、以下のように様々なニュアンスで使われます。

  • 厚い, 分厚い
  • 太い
  • (木や群衆が) 密集した
  • (霧が) 濃い, 濃厚な

総じて分厚くて濃いニュアンスで使われますが、愚鈍頭が悪いといったニュアンスでも使われます。愚鈍の意味合いは、日本語での「頭が固い」に近い表現ですが、英語では「頭が太い」という表現にり、言語の違いを感じることが出来て大変興味深いところです。

Thin – 薄い

Thinの代表的な意味合いは「薄い」です。発音をカタカナで表すと「シン」ということになりますが、最初の音はTH音なので、「スィン」と表されることもあります。

ただ単に分厚さを表す以外にも、以下のように様々なニュアンスで使われます。

  • 薄い, 厚みのない
  • 痩せた, ほっそりした
  • (液体が)薄い, 希薄な
  • (ひげが)薄い, まばらな

またこれ以外にも、弱弱しい感じや、内容がない(貧弱な)といった意味合いでも使われる英単語です。そういう意味では、日本語の口語表現にある「しょぼい」に近いニュアンスともいえるでしょう。

英語では「太い・細い」と「厚い・薄い」が一緒

英語と日本語は異なる歴史の中で形作られた言語であって、物事の表現に関する「区分け」が異なっていることがよくあります。英語のThickとThinは「厚い」と「薄い」の意味と紹介してきましたが、それぞれ「太い」と「細い」としても日常的に使われます。

thick and thin (at tree)

言葉の違いで生じる違和感

日本語では、分厚い本を「太い本」というと意味は伝わりますが違和感が凄いです。また、細い棒を「薄い棒」と表現してしまうと、どういった形状なのか伝わらない可能性もあるでしょう。

こういった違いは、海外の日本語学習者を困らせているようですが、日本人としても英語での表現がひとつの単語にまとまってしまう事で、「細かなニュアンス」が失われていると感じる事も多いです。

以下の記事では、日本語の「濃い・薄い」という言葉を英語に訳す場合の、対象の物によって変わる単語についてまとめています。今回の記事のThickやThinの他に、味が濃い・薄いといった表現を英語でどういった単語を使うかを紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

また、形容詞としての単語だけでなく、名詞においても言語の区分けの違いが存在しています。日本語の方が単語がまとまっていて、英語の方が厳密に区分けされている場合も当然あります。

以下の例では、日本語の「たまご」が、英語では「Egg」と「Roe」で使い分けられることから、明太子を英語では何と説明すればよいのかということを紹介しています。

日本語では区別しない言葉であっても、他の言語ではそれぞれ区別した別の単語があるというのは興味深いですが、こういった脳内イメージの区分けの違いは、他の言語圏の人とのコミュニケーションで誤解も生まれやすい部分でもあるため、言語学習においてはしっかりと確認しておきたいところです。

TFT液晶で覚えるthin

人によって覚え方は様々ですが、身近なものに関連付けて覚えておくと、思い出しやすいでしょう。ここではthickとthinを覚えるのに役に立つ、パソコンの画面(ディスプレイ)などに利用されることが多い「TFT液晶」について紹介します。

TFTは「Thin Film Transistor」 – CRTから液晶の歴史

TFT液晶に使われている「TFT」は、Thin Film Transistorの頭文字から作られた言葉で、日本語では「ティーエフティー」とそのまま読まれます。

パソコンの画面は、最初は大きなCRTディスプレイ(ブラウン管)が主流で、大きくて場所を取るものでしたが、小さく薄い液晶型のディスプレイが登場したことで、CRTディスプレイは使われなくなっていきました。

CRTディスプレイ
CRTディスプレイ (分厚い : thick)

今では液晶型のディスプレイが一般的ですが、各種メーカーは「薄く・軽く・場所をとらない」液晶ディスプレイの改良を行い続けてきました。このことから、TFT(Thin Film Transistor)に使われている英単語「Thin」が、「薄い」イメージと結びつけて覚えやすいのではないでしょうか。

TFT液晶
TFT液晶 (薄い : thin)

日本語では、アルファベットの頭文字を繋げた略語が使われることが多いですが、その基となっている言葉には、特性などを表した重要な単語が含まれていることがよくあります。便利な略語を使う場合も、できるだけ「元の単語を知った上で」使うように心がけると、単純な単語力の向上だけでなく、単語がどういった使われ方をするのかを学ぶことにも役立つでしょう。

余談 : TFT液晶と有機EL液晶の違い

液晶ディスプレイには、今回紹介したTFTの他に有機EL(OLED)という構造のものがあります。

これらの違いは「発光の仕組み」にあります。TFT液晶は後方から光を当てて画面に映像を映し出すのに対して、有機ELの方は、画面自体が発光して映像を表示します。

発光の仕組みの違いによって、「黒の表現」には大きな違いがあり、有機ELが発光を停止することで完全に黒を表現できるのに対し、TFTではバックライトによる明かりの影響で完全な黒を表現することが難しくなっています。それぞれの長所について、簡単に紹介します。長所の反対は短所でもあります。

TFT有機EL
発光の仕組みバックライトディスプレイ自体
黒の表現難しい完全
長所寿命が長い
安価
ハイコントラスト
応答速度が速い

何かと関連付けて覚えよう

言語の学習において、辞書などの単語などを機械的に覚えてしまうと、会話の中などで思い出すことが難しくて、せっかく覚えたのに実際には使えないということがよくあります。そういった事を防止するために、辞書などでも「例文」などを併記されており、使われる状況を思い浮かべやすいような工夫がされていることが多いので、一緒に覚えると効果的です。

個人的には、辞書などに掲載されている例文以上に、現実世界で使われている具体的な物事やシーンなどで覚えた単語や表現は忘れにくいと感じます。同じような状況になった時などには、「日本語より英語が先に思い出される」ことがあるほどです。これは、英会話のようなテンポが重要な場面ではとても有利に働きます。また、文書などを読んでいる時にも、曖昧になっている記憶を、情景から思い出すことにも役立ちますので、是非試してみてください。

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