近年は、日本に興味を持ってくれた外国の人が、「日本を訪れて良かったこと」などをSNSなどを通じて発信していることも多くなりました。その一方で、外国人犯罪の増加などによる国内の治安悪化は問題視されています。
もはや「日本は安全」というのは過去となりつつあり、日本の世界的な評価が低下していっている現状を憂いている日本国民は多いようです。今回は、国会でも話題にあがった「外国人の不起訴」に関する問題と、幕末期の「不平等条約」の共通点についてまとめてみます。
不平等条約とは
日本では江戸時代末期に、欧米列強との間に「不平等条約」を締結しました。
不平等条約には、以下のような大きな制約がありました。
- 領事裁判権(治外法権):日本で犯罪を犯した外国人は、日本の法律ではなく外国領事の裁判を受ける。
- 関税自主権の欠如:日本は独自に関税を決められず、相手国と協議して決める必要があった。
安い外国製品が大量に入ってくる – 関税自主権の喪失
外国の製品を輸入した際に、安い製品が大量に流入してくると国内の商品が売れなくなってしまうため、国内の産業を保護するために「関税」という税金がかけられます。
日本は不平等条約により、関税を自分たちで決める権利を失い、国内の産業に大きな打撃を受けました。
産業革命によって大量の製品を安く生産できるようになっていた欧米諸国は、商品を販売できる相手(植民地)を求めていました。日本国内で時間をかけて手作りしているもの等は、外国の工場で大量生産されたものと価格では勝負にならず、売れなくなってしまいました。
欧米列強は、植民地の関税自主権を奪ってその国の産業を破壊し、自国の製品を高値で販売し続けることで、大きな利益をあげていたのです。
外国人による犯罪を裁けない – 治外法権
現代では、犯罪を犯した場合は人種や国籍に関係なく、犯罪が起きた場所の法律によって裁かれます。不平等条約で認めさせられた「治外法権」は、このルールを捻じ曲げ曲げるものです。
不平等条約によって、外国人の犯罪者を日本の法律で裁けなくなりました。
外国人が日本人に暴行したり、殺人を行ったとしても、日本の法律ではその犯罪者を裁くことが許されなかったのです。つまり、外国人は日本で「やりたい放題」状態だったといえます。
治外法権が認めさせられた時期 ー 下田協定について
一般的には、不平等条約は「日米修好通商条約」によるものとされています。
治外法権に関する内容は、日米修好通商条約よりも前の「下田協定」にも記述が見られます。
西暦 | 条約 |
---|---|
1854年 | 日米和親条約 |
1857年 | 下田協定 (日米追加条約) |
1858年 | 日米修好通商条約 |
日米追加条約(下田協定)はその名の通り、先に結ばれた日米和親条約を補う内容で、追加の開港地などと共に日本の外国人についての取り決めが行われており、後の不平等条約の土台を築いたとされています。
下田協定(第4条) – 外国人犯罪に関する規定
下田協定の中で、外国(アメリカ)人の犯罪についての取り扱いが規定されています。
アメリカ人に対して法を犯した日本人は日本の法律で日本司法人がこれを裁き、日本人に対して日本で法を犯したアメリカ人はアメリカの法律に基づいてアメリカ総領事がこれを裁く。(第4条)
この規定により、日本人はアメリカ人を裁くことができなくなりました。
関連記事:日本が結んだアメリカ以外の不平等条約
不平等条約としては、1858年にアメリカとの間に結んだ「日米修好通商条約」が知られています。しかし、日本はアメリカ以外の列強国と次々と不平等条約を結んだことはあまり知られていません。
以下の記事では、アメリカとの日米修好通商条約から安政の五か国条約、そして明治時代になっても次々と結んでいった不平等条約をまとめて紹介しています。また、なぜ各国と不平等条約を結んでいったのか、その背景も解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
令和時代の外国人犯罪の不起訴問題
令和時代は、円安の影響もあって日本を訪れる外国人観光客も多く、インバウンド需要によって経済の活性化などの良い面がある一方で、外国人による犯罪の増加といった悪影響も問題視されています。
令和時代の外国人関連の問題
令和時代に話題になることが多い、代表的な外国人に関連した問題は以下のようなものが挙げられます。
- オーバーツーリズム
- 外国人による交通事故
- 移民や難民による地元住民トラブル
問題の多くは、外国人が「日本のルール」を理解していないことによるものです。
日本の法律的なルールの場合もあれば、法律などに明記されているものではない「日本の慣習」や地域の暗黙のルールといったが侵されている場合もあります。「人に迷惑を掛けない」ことを大事にする日本人と、その倫理観すらも持ち合わせない外国人は、各地でトラブルになっています。
外国人とのトラブルが戦争になった日本の歴史
1862年には、外国人とのトラブルが軍事衝突にまで発展した「生麦事件」が起きています。以下の記事では、現代の外国人トラブルと共に、歴史上の出来事やその後について詳しく紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
不起訴となる外国人犯罪者
文化的な違いがある外国人が、異国の地のルールを理解せずにトラブルに巻き込まれることはあるでしょう。日本人が外国に行ってルールを破って捕まって、外国の刑罰を受けることも起こり得ます。その国の治安を維持するためには必要なことです。
現代の令和の日本では「外国人が不起訴」となることが問題視されています。
日本では犯罪件数は増え続けて治安は悪化し、安全な国ランキングも順位を下げ続けています。国民の経済状況などから、日本人による犯罪も増えていますが、外国人の犯罪は逮捕しても起訴すらされないケースも多いため、SNSなどを中心に日本の警察や司法に対する批判的な声も聞かれます。
明かされない不起訴理由
2025年3月18日に、衆議院の法務委員会にて、日本保守党の島田洋一議員が政府に対して「外国人不起訴」について質疑を行いました。

回答したのは法務省の森本宏刑事局長と、自由民主党の鈴木馨祐法務大臣です。
法務委員会(3月18日)での質疑 – 日本保守党(島田洋一)
不起訴理由の開示に関する質疑の内容を、抜粋して以下に記載します。
島田議員の質問
埼玉県川口市にて、女子中学生に性的暴行を働いたクルド人 (懲役1年 執行猶予3年 – 難民申請中)が、執行猶予中に12歳の少女に性的暴行を加えた事件(起訴・公判中)がある。
そんな中、女性がトルコ国籍男性に70m程付け回された後、公園で性的暴行を加えられた事件が起きたが不起訴となり、埼玉地検は不起訴理由を明らかにしていない。
女性のプライバシーに配慮は必要だが、不安感が高まる中で、ある程度不起訴理由を開示すべきではないか。
森本 刑事局長
不起訴理由は検察当局が判断している。
性犯罪の場合は(プライバシーなどの関係で)、どこまで言及できるか難しい。
「不信感の払しょく」のためにも情報提供が必要
島田議員の質問
出稼ぎ目的のクルド人が、難民申請して滞在期間を延ばしている。その期間に、女性をターゲットにした犯罪を犯す人間が、現に連続してでている状況にある。
一般論だけでは不信感を呼ぶ。(法務大臣に向けて)情報提供について指導するべきでは。
鈴木 法務大臣の回答
一般論ということになるが、自分も強い危機感を持っている。
適切な入管、迅速な送還の実施など、適切な運用ができるように努力していきたい。

幕末の歴史は政府への不信から
外国人犯罪を裁けない日本の現在の姿からは、「不平等条約」や「治外法権」を思い出さずにはいられません。
江戸時代の末期は、ペリー来航以降激動の時代を迎えます。中でも、不平等な内容を含む日米修好通商条約の締結は、天皇の許可を得る前に調印したこと(違勅調印)が問題視されました。
幕府(政府)の中心人物だった井伊直弼は、状況説明を行うことで天皇の理解を得られましたが、動き出した政府への不信は止まりませんでした。
誹謗中傷を含んだ政府批判が全国的に行われるようになり、井伊直弼は強硬な言論弾圧を名目にしながら、中心となる人物を投獄・処刑しました。(安政の大獄)
以下の記事では、安政の大獄が行われた背景から実態、そしてその後の反応までをまとめていますので、是非あわせてご覧ください。
政府批判を「誹謗中傷として規制」を掛けた後に待つ悲劇を、歴史は教えてくれています。