今週、家の食料が少なくなってきたので何気なく近所のスーパーに行って、色々と食品を購入してきました。その際、底をついてしまった米を買い足そうと思ってお米のコーナーに行ってみると、お一人様一個限りの張り紙と共に目に入ってきた空っぽの商品棚に絶句してしまいました。まさか米が買えないとは思っていなかったのです。
2024年8月現在、日本国内では全国的に米が不足している状況が続いており、一部では令和のコメ騒動とまで報道されるほどになっています。今回は、このコメ不足の現状と原因、そして今後の日本の米の需給について、改めて考えてみたいと思います。
8割の店舗でコメが品切れの状況
2024年8月、日本の小売店の店頭から米の在庫が消えてしまいました。私の近所のスーパーでは完全に販売在庫がない状況で、棚には一種類の米もないという状況でしたが、この状況は全国的に発生しているようです。
米の不足状況について、現在様々な報道機関から情報が出てきていますが、今回はTBS様のチャンネルから一つ動画を紹介させていただきます。
大阪府では実に8割の小売店から米の在庫がなくなるという危機的な状況になっています。何件ものお店を廻って、ようやく米を購入することができるという人もいる程のようです。近所にスーパーが何件もあるような都会であれば、何とか米を入手する方法がまだあるのかもしれませんが、地方などでそもそも米を扱う店舗が少ない地域では、お店で売り切れてしまうと米を入手することは難しくなるでしょう。
何故この時期に米がこんなに不足した状況になっているのでしょうか。
2024年の夏に米が不足している理由
2024年の8月末には日本中で大きな被害が出ている「台風10号」が、現在もまだ日本列島の上を闊歩している状況で、事前の対策などで備蓄の米を購入している人も多い事でしょう。私自身も、スーパーでコメが売り切れている状況から、「台風の対策で売り切れている」と思ってしまったほどに、今回の台風10号は驚異的な規模で、各種報道でも対策を呼び掛けていました。
しかし、この米不足の問題は、なにも台風の影響だけではないようです。
上記TBSの報道によると、2023年の米の収穫は例年と大きな差はないとしながら、猛暑の関係で米の大きさが小ぶりで、精米する際に割れてしまうことがあるため、市場への供給量が少なくなってしまったとしています。
米の品質の問題だけではなく、お盆の時期や台風・地震などの天災も重なったことで、米の需要が供給を上回ったのではないかという見方もあるようです。つまり、いつにもまして米の供給量が少なくなっているのに加えて、今回の台風の影響などが重なったために、全国的に米が品薄な状態となっているようです。
政府備蓄米の放出要請
自体が深刻な大阪では、吉村知事が政府に対して「備蓄米の放出要請」をかけたことが報じられて注目を集めています。しかし、農林水産省は備蓄米の放出には慎重の様子で、備蓄米がすぐに放出されるといったことはないようです。
備蓄米は、毎年政府が予算を付けて20トン程度購入している「緊急時のための措置」のため、今回のような一般的な品薄状態のためのものではないということですが、実際には米価をあげる対策が水泡に帰してしまい、価格低下に伴って農家の方々に致命的なダメージを与えることを防ぐために、簡単には備蓄米を放出できないという事のようです。
ですが、逆に言うと「政府が買い占めてるから米がない」ともいえる状況でもあるわけで、個人的には需給バランスをみながら備蓄米についてもお役所的に定量を国内供給から調達するのではなく、国外なども視野に入れながらうまく立ち回ってほしいと思ったりもします。ただ、国内の米価の問題や、国外との調整など色々と諸問題があって簡単に解決するのは難しいのだろうとも思います。
政府は、「新米が流通することで徐々に状況は改善する見通しである」としています。
しかし、この新米による状況の改善は、すなわち「来年も夏には米不足になる」ことを意味しています。来年の消費を前倒して今年の夏に消費してしまうのですから当たり前の事ではあります。
そもそも日本国内の米の需要・供給は毎年低下していて、そのバランスに問題があるようです。
米の需要が供給を上回る時代に
日本では、米の需要と供給は低下し続けており、令和の時代には昭和時期の半分程度しか生産・消費されなくなっているというのが、米の基本的な状況です。これは日本国内の食が多様化したことも要因の一つではありますが、何よりも「米の生産者が高齢化」していて、新たに米を生産する人口が少ないことが大きな原因でもあります。
先の報道内でも、米の需給のグラフが紹介されています。
毎年下がり続けていた米の需要と供給ですが、昨年は10年ぶりに需要が増加しており、生産量の低下に対して需要が上回っているというのが現在の状況となっています。
2024年の米の生産量は順調な様子で新米の収穫も着々と進んでおり、昨年よりは供給の状況は良くなることが見込まれているようです。しかし、今後も米の需要が増加するのであれば、根本的な「生産者の高齢化と減少」という問題が、解決のための大きな障害になってくることは明白でしょう。
日本では未曽有の物価高で、国民は経済的な困窮状態にあります。物価が高騰したことで食品も軒並み高騰し続ける中でも、米は安定した価格で供給され続けていましたが、現在は米も品薄高騰を続けており、地域によっては例年の150%程度まで販売価格が上昇してしまっているところもあるようです。
米騒動・一揆は歴史の中だけではない
日本では、歴史の授業などで「昔は米を求めて一揆があった」と習います。これは戦国時代のような大昔に国内で貧困にあえぐ農民たちが、領主の米蔵に襲撃をかけて米を奪うという一種の暴動です。多くの人は、「昔の事」と認識していることでしょう。
しかし、この米を求めて暴動を起こすという事件は、近代になってからも起きています。
大正7年(1918年)には、日本国内500か所で述べ70万人の国民が、米を求めて襲撃や暴動を起こしています。これを米騒動と呼び、冒頭の報道ではこの状況と類似した状況であることから「令和のコメ騒動」と報じているのでしょう。
当時日本は第一次世界大戦で輸出が増大し、シベリア出兵前に米を買いだめておこうとする需要の一時的な増大と合わせて、農村の過疎化と米生産者の減少といった条件が重なり、全国的に米不足な状況となりました。その上で政府が米の値上げを行ったために、多くの国民が米の獲得のために立ち上がったという経緯があります。
この米騒動の状況は、現在の状況と似ている部分が多く、今回の備蓄米の対応も含めて、政府は慎重に対応していかないと、同じような結末を迎えてしまうかもしれません。ただ、当時の日本と違って、現在は米以外に小麦やトウモロコシといった輸入100%依存の炭水化物・別の主食も日本人の食を支える柱となっていることもあり、米がないだけで直ぐに日本全国が飢餓状態になるということはないのではないでしょうか。
しかし、米を使った料理を提供する飲食業界などでは、この価格高騰は非常に厳しいのではないかと思います。米が高騰したことで、飲食店の値上げが起これば、結局消費者全体に対してその価格増加分がのしかかってくることになります。そしてこれは、一時的な物ではなく、今後永続して起こり続ける現象であることが、個人的には大きな絶望感につながります。
来年もまた夏頃にはコメ不足に
私は日常的にそれほど米を食べるという程ではなく、主に麺類が中心の生活をしている人間ではありますが、長期間の保存が容易で、比較的安価に炭水化物を摂取できる米は、備蓄食料としては欠かせません。結構な貧困生活をしている私は、食料がないときは、炊いた米にふりかけをかけて晩御飯にするときもある程で、お腹も満たされてエネルギーも十分補給できる米はありがたいものです。
なので、米が高騰するのは本当に困るし、そもそも今のように購入できないという状況は本当に辛いものです。そして何より、今年のこの状況が来年以降も続く見通しというのが、本当に絶望的に思いますが、私個人の力でどうにかなるものでもなく、あるものを食べて生きていく他ありません。
来年あたりは、まだ8月くらいに米不足と騒ぐ程度で済むのかもしれませんが、今後5年10年と時代が進むと、供給量がどんどん減少して、もしかしたら春ころには既に米不足と報道されるのが常習化してしまうのではないかと不安にもなります。さすがにそうなってくると、米も小麦などと同様に輸入に頼るようになってしまうのでしょうか。もし海運の安全性が確保できなくなり、輸入に支障がでるような国際情勢になったら、日本国民はどうなってしまうのでしょうか。私が生きている間には、近隣の人たちと食料の奪い合いをするような時代が来ないことを願っています。
2024年9月の状況 (追記)
2025年以降に参考にするため、2024年に起きたことの状況を記録として残しておきたいと思い、記事作成後の日本国内の状況を追記しておきます。
2024年9月の米の供給状況
追記している時点は2024年9月の中旬頃ですが、国内の米の供給状況は徐々に緩和されてきています。これは今年の収穫が進んだことによって、店頭に新米が並ぶようになったからです。私の近所のスーパーでは、米の常設の棚は未だ空っぽで、張り紙にて「お一人様1袋限定」の張り紙がありますが、別途新米の販売コーナーが設けられており、そこには今年収穫を終えたばかりの新米5Kgの袋がたくさん置いてあるといった状況です。私は5Kgの米だと保管に困ることもあって、2Kgの米が欲しかったので、何度もスーパーに通うことで、先日ようやく2Kgの新米を入手することが出来ました。8月に備蓄の米が亡くなってから通算1か月くらいは米を購入することが出来ず、その間は麺類などで凌いだといった状況でした。
全国的にも徐々に供給状況が緩和されて行っているようで、店舗によっては米が普通に並んでいる場所もあるようではありますが、依然として米が売り切れてしまっている店舗もまだあるといった状況のようです。
テレビメディアの偏向報道による扇動
9月になって店頭には米が並ぶようになりましたが、テレビを中心に「令和のコメ騒動」をネタにした報道が続いているようです。実際には店舗によっては米が通常通り購入できるようになっている場所もある状況であるにもかかわらず、米が不足している店舗ばかりを報道することによって、逆に国民の不安を煽る結果となってしまっているようです。その結果、米が不足している地域は一層米が不足するといった事態となり、ないところはトコトンないという状況のようです。
このメディアの報道に対して、ネットを中心に批判的な意見が飛び交っています。
偏った報道をするのではなく、現状を正しく伝える事こそメディアの役割であるはずで、特にテレビメディアは購買力のある高齢者に対して影響力があり、誤った情報で多くの国民が踊らされてしまっているという状況を最近はよく目にする気がします。
米騒動などないという批判的な意見がある一方で、本当に米の購入が困難な地域の人たちから反論が上がることもあって、騒ぎが一層大きくなっているようにも見受けられます。
現在報道すべき米の供給状況としては以下が適性と思われます。
- 新米の供給で米不足は回復傾向
- 店舗によっては未だ不足状態が続いていることもある
- 今後さらに改善は進む見込み
販売価格の上昇は徐々に抑えられて1割高に安定か
米不足は解消してきていますが、今年の新米は値段が高くなっているようです。私の近所でも通常1000円程度の2Kgの米袋が、今年の新米だと1200円程度と20%くらい高くなっているようでした。この状況はどうやら全国的に起きているようで、場所によっては1.5倍~2倍程度まで値段が上がっている場合もあるようです。
この値段の上昇についてのインターネットなどの反応を見る限りでは、今のところ意外と肯定的な意見が多いように見受けられます。肯定的な意見としては「今までが安すぎた」という意見と共に、「生産者が不足しているのだから高騰して当たり前」という現実的な意見もあるようです。
確かに日本国内の米の供給量は年々減少していく一方で、その原因は生産者の高齢化が一端を担っていることは明らかではありますが、そもそも米の生産をする農業では収益が少なく生活が不安定という一面が、新たに米農家をする人を増やすことの弊害となっている一面もあり、この価格上昇は米農家にとっては追い風となるかもしれません。
作る人が少なくなったことで、儲かる仕事となり、生産者が増えれば、今度は供給量が増えたことによって価格の低下が起こるというのは、資本主義・自由経済としては適正な状態であると感じます。増えても減っても値段が一定という今までが、どちらかと言えば異常だったと言えるのかもしれません。
以下の報道によると、米の需要増加は「備蓄」目的のためであって、今後備蓄を消費する状況になると販売数は下がり価格も下がると見込んでいるようです。現時点では3割高なのが、この結果1割程度に落ち着くだろうと述べられています。
米以外のパンや麺類などが、物価高騰で20%程度高くなっていることに対して、米は上昇が抑えられていたため、割安に感じて需要が増大したという状況もあるようなので、今後の物価の動きも考慮すると、本当に1割程度に落ち着くのかどうかは分かりません。
今年いっぱいは、この米の供給や価格が不安定な状況が続くだろうというのが今のところの予測のようですが、上記報道によると、「焦って沢山の米を備蓄のために購入すると、絶対に損することになる」とのことなので、必要な分だけを購入しながら様子を見るのがよさそうです。
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