中国が日本の屋久島付近の領海侵犯 – 領海とEEZを再確認

中国の領海侵犯 雑学

2024年8月31日に中国の測量艦が鹿児島県口永良部島近くの日本の領海に2時間近くにわたって侵入した、というニュースが報道されました。私はこの報道を聞いてとても驚きました。

これまでにも北朝鮮がミサイルを日本のEEZ(排他的経済水域)に打ち込むといったようなニュースがあったり、中国と尖閣諸島周辺でにらみ合いが続いていたりといった、日本の国土を脅かすような事件の報道はありました。しかも、今回領海侵犯された場所は、中国が領土主張している尖閣諸島とは異なる場所です。自分の家の庭に知らない人が入ってきて、勝手に何か作業しているという怖い状況ともいえるでしょう。

今回はこの事件の詳細を確認しながら、改めて領土、領海と共にEEZについても確認しておきましょう。

中国領海侵犯と高市大臣の発言

私はこのニュースを以下の報道で知りました。この動画は、TBSのYoutubeチャンネルの動画で、中国海軍の測量艦が領海侵犯をしたことに対して、日本の対応が甘すぎると高市大臣が指摘していることを伝える内容となっています。

この動画は1分14秒という短い時間の中に、事件の概要と高市大臣の発言、そして高市大臣や日本の国防上の懸念などが短く簡潔にまとまっていて、とても好感が持てます。お時間のある方は、短いニュースですので是非ご覧ください。

事件の概要について、動画内で使われていた地図を一部抜粋させていただきながら紹介しておきます。

屋久島 (from 報道)

私は九州地方の地理に詳しくなく、改めてGoogleの大きな地図で屋久島の場所を確認してみましたので、その地図も合わせて載せておきます。分かりにくいかもしれませんが、右の方にある赤い点線で囲まれている島が、上記地図の屋久島です。この地図を見ると、中国から遠く離れた日本の島の横を中国軍の測量艦が2時間も滞在していたという状況が、とても異常な事態であることがよく分かります。

屋久島(Google Map)

この事態に対して、日本の対応としては「外務省が大使館に対して強い懸念を伝えて抗議」となっています。これはつまり大事にしないようにする、いわゆる「事なかれ主義」的な対応と言えるでしょう。これまでの中国に対する対応と同じ共言え、とても弱腰な対応でもあります。

高市大臣は、今回の件はこれまでとは異なり、大使館へ懸念を伝えるだけで済ませてよい話ではないとしており、総理大臣や外務大臣、防衛大臣それぞれが中国のそれぞれのカウンターパートに厳重抗議して、再発防止を約束させる必要があると発言していて、それが冒頭の動画の報道となっています。

私個人の感覚としては高市大臣の発言に賛成ですし、当然のことだと感じてしまいます。中国は東シナ海、南シナ海でとても高圧的な行動を繰り返しており、世界が甘い顔を続けるようであれば、増長して自体が一層深刻化してしまう懸念もあります。

中国とフィリピン公船の衝突 (2024年8月)

中国に関して、同じようなニュースが連日報道されています。同じくTBSの報道ですが、8月31日にフィリピンが公開した情報として、南シナ海の船舶の衝突事件が報じられています。

日本も過去(2010年)に尖閣諸島周辺で中国の漁船と日本の海上保安庁の船が衝突するという事件が発生していて、他人事ではありません。

中国が日本の尖閣諸島の領有を主張していて、何度も日本の領海を侵犯していることは、日本国内でも知られていますが、中国は日本だけでなく、南シナ海ではフィリピンと同じような事を繰り返しています。

台湾有事との関連性

中国は東シナ海・南シナ海に対する圧力を強め続けており、この話題の際にはいつも台湾有事という言葉が囁かれます。

台湾は日本国民からすると独立した一つの国家ではありますが、日本という国としては台湾を国として認めていない事には注意が必要です。これは、国連のアルバニア決議に起因する古くから続いている世界的な問題の一つで、中国がよく言う「一つの中国の原則」に国際社会が準じているからに他なりません。

台湾は経済的に中国に依存している部分はあれど、国家としては完全に独立した自治を行っていて、間違いなく中国とは別の国として機能していますが、中国側としては「台湾は中国の一部」という姿勢を崩していません。

中国が台湾を軍事力も使って強制的に併合しようと動き出せば、東シナ海・南シナ海の各国だけでなく、日本との同盟国であるアメリカなどの世界中を巻き込んだ大きな紛争/戦争に発展する懸念があり、その一連の事変を台湾有事として恐れています。

今回の日本の屋久島周辺における中国軍による測量や、フィリピンにおける中国海警局の船舶が衝突している事件などは、この台湾有事の前の準備である可能性もあり、これを許してしまうと、一層台湾有事が着々と現実へと近づいてしまう危険性が高まってしまうかもしれません。

領海とEEZの違い

尖閣諸島周辺で日本の領海が侵犯されてしまうことに慣れてしまっている人も多いかもしれませんが、領海というのは本当に領土から狭い範囲である事を理解しておかなければなりません。

似た様な海の範囲を定義する言葉で、排他的経済水域(EEZ)というものがあります。これは領海から更に外側に対して決められた経済活動を行う権利を有している海域の事です。

領海・EEZについて、海上保安庁が公開している地図を紹介しておきます。
参考URL : 日本の領海等概念図

地図にある広い白いエリアが排他的経済水域(EEZ)、内側にある黄緑色の狭い範囲が領海で、その間には接続水域という水色の範囲が設けられています。それ以外の海については公の海であり、公海と呼ばれます。似たような言葉で領空という言葉がありますが、これは領海地域までの空を指しています。

言葉通りではありますが、領海は領土と同じように国の固有の海として認められている海域です。つまり、領海侵犯しているというのは国土に勝手に上陸しているのと同じ意味と言えるのです。今回の事件では中国軍の船が領海侵犯しているという事なので、日本の領土に中国軍が上陸して何らかの作戦行動を行ったのと同じレベルといってもよいでしょう。

ただし、中国側の言い分としては、おそらく測量というのは「軍事活動でなく、安全を脅かす活動ではない」という主張をすることでしょう。これには、領海の定義内にある「無害通航権」という権利が影響しています。平和や秩序を乱さない限り、領海の通航が可能いうのが無害通航権であり、中国軍による測量が「平和や秩序を乱し、安全を害する」に該当するかどうかが争点となり、一方的な非難が難しいため、日本も慎重な対応を余儀なくされています。

無害通航権の事を含めて、念のため、領海などの用語について、海上保安庁のサイトにまとめてある情報をこちらでも掲載しておきますので、確認しておきましょう。掲載している情報は、以下のサイトでもご確認いただけます。

参考URL : 領海等に関する用語 – 海上保安庁

領海

領海の基線からその外側12海里(約22km)の線までの海域で、沿岸国の主権は、領海に及びます。

ただし、すべての国の船舶は、領海において無害通航権を有します。

(補足)
無害通航というのは、沿岸国の平和、秩序または安全を害しない継続的かつ迅速な通航を指し、潜水艦は海面上を航行して国旗を掲げなければならない。 無害通航権の制度は、沿岸国の利益と国際航行の利益とのバランスの上に認められるものである。

接続水域

領海の基線からその外側24海里(約44km)の線までの海域(領海を除く。)で、沿岸国が、自国の領土又は領海内における通関、財政、出入国管理(密輸入や密入国等)又は衛生(伝染病等)に関する法令の違反の防止及び処罰を行うことが認められた水域です。

排他的経済水域

領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く。)並びにその海底及びその下です。

なお、排他的経済水域においては、沿岸国に以下の権利、管轄権等が認められています。
  1.天然資源の探査、開発、保存及び管理等のための主権的権利
  2.人工島、施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権
  3.海洋の科学的調査に関する管轄権
  4.海洋環境の保護及び保全に関する管轄権

日本の国を守るリーダーが必要

記事執筆時点は令和四年(2024年)で、内閣総理大臣は岸田文雄氏です。歴代最下位の支持率を誇り、日本国民の多くから嫌われているにもかかわらず、総理大臣の職に居座り続けることが話題になることも多かったですが、いよいよ自民党総裁選挙も近づいており、岸田内閣も一応の終焉を迎えることになります。

これから日本は人口減少に伴う経済規模縮小は免れず、誰がリーダーになっても国民の生活は苦しくなるばかりなため、こんな時代に総理大臣になりたいと考える人は少ないでしょう。また、政策が失敗して他の人に変わったところで、結局日本が衰退していく未来は変わりません。これからの日本の未来は明るくありませんが、少なくとも国家として存続し、今を生きる日本人が可能な限り苦しまないような、当たり前ではありますが「国を守る」リーダーが必要だと感じます。

今回のニュースで取り上げられていた高市大臣を史上初の女性内閣総理大臣へという声も聞こえてきます。高市さんの発言や考え方には共感を覚える部分は多く、その声には賛同しかありませんが、しかし、自民党は裏金問題など度重なる不祥事で党としての勢いも落ちている中で、今自民党総裁になっても、近く行われる衆院選で自民党が野党に下りそうな予感もしてしまいます。

政党政治から生まれ変わり、本当に優秀な人が活躍できる新しい政治体制が必要なのかもしれません。

コメント