消費税の減税とPOSシステム – 税率変更は大変なのか

POS税率変更 政治

2025年7月20日には第27回参議院議員通常選挙が行われることになり、党首討論など政治関係の番組や報道が多く行われています。そういった報道の中で、消費税の減税には店舗のPOSシステムなどの対応が必要となり時間がかかるとしているものもありますが、実際にはどうなのでしょうか。

参院選前に争点となる「消費税の減税」

物価高騰の対策などで消費税の減税を訴える野党と、給付を行い消費税は絶対に下げない姿勢をとる与党の討論に注目が集まっています。

与党である自民党や公明党は、消費税の減税をするためには「財源がない」「時間がかかる」といった理由から、「2万円の給付」を行うという主張を繰り返しています。

「システム対応に時間がかかる」というマスメディアの報道

消費税減税について、TBSのYouTubeに公開された動画に、興味深いものがありましたのでここで紹介いたします。(引用YouTube Channel : TBS NEWS DIG Powered by JNN)

動画では物価高対策と消費税の減税について、与野党の主張や国民の声と共に、税率変更にかかる時間などが専門家の意見を交えて紹介されています。

(動画の要約)
■物価高対策についての討論
与党 : スピーディーな給付を
野党 : 消費税の減税または廃止 (給付も時間がかかる)
有権者インタビュー : 両論

■TBS報道のまとめ
各国の消費税(付加価値税)の減税にかかる時間の紹介
– 世界では7日~28日程度で対応されている

POSシステム改修にかかる期間
– 半年~1年かかる
– 日本は税率変更を前提としたシステム環境が整っていない

「POSシステムに詳しいITジャーナリスト」が答えたとされているPOSシステム改修についてですが、おそらく国民の多くは「POSシステム」に詳しくないため、この報道を聞くと「消費税の対応は難しいのだ」と感じる事でしょう。

しかし、実際には多くのPOSシステムは消費税率の変更が簡単にできるようになっていて、それらは時間のかかる対応ではありません。

IT業界で働いていた人間からすると、この報道は「国内のIT企業は消費税の変更すら考慮出来ない程に低レベル」としている内容にも受け取れます。

報道内では、税率変更に時間がかかる例として大手システムメーカーA社、B社と紹介されていますが、大手である程に「税率変更を想定した万全のシステム」を提供しているものです。

税率変更に対応している現在のPOSシステム

消費税は、導入された時点では3%の税率でした。

消費税が5%や8%の変更になった際は、「消費税率が変わるものである」という想定がされていなかったシステムも多く、販売管理システムやPOSシステムでは大きなシステム改修が必要になり大混乱でした。

消費税率変更が考慮されている現在のPOS

現在のPOSシステムは過去の税率変更の経験を踏まえ、「消費税率は変化する前提」で構築されています。

想定の程度は規模によっても異なりますが、POSレジ単体で対応するものもあれば、インターネット経由で全拠点のPOSが繋がれていて、本部で登録すれば全拠点が一斉に変わるものなど様々です。

消費税率の変更は、「新しい税率」と「開始される日付」を入力すれば対応が完了する場合が多く、作業にかかる時間は数秒から長くても数分程度で終わります。(反映されるまで時間がかかるものもあります)

逆に言うと、消費税が存在して当たり前の令和の時代に、消費税率変更の機能を持っていないPOSシステムやPOSレジを探すことは難しいでしょう。

軽減税率で更に複雑化している現在のPOSシステム

現在の消費税は、令和元年(2019年)から導入された軽減税率の関係で複雑化しています。食料品などの一部品目については異なる消費税が適用されるようになったためです。

現在のPOSレジやPOSシステムは、消費税率の変更機能だけでなく、商品の種別に基づいて設定された税率を計算できるほどに高度な機能を持っていて、それらを管理画面から簡単に変更・設定ができるようになっています。

税率変更が大変な場合もある

POSシステムの税率変更は想定内であり、多くの場合対応は容易ではありますが、古いシステムを使い続けている小規模な店舗や、そもそもPOSレジなどを使わず計算機などで対応しているような店舗では、消費税の税率が変わると大変になる場合もあるでしょう。

事業規模が小さな飲食店などは、高機能で高価なPOSシステムの導入が難しいケースもあります。

大手POSシステムの消費税率変更に時間がかかるという点については疑問はありますが、税率変更に伴って大変になる店舗や事業者が存在していることは事実であり、そのことも忘れないようにしなければなりません。

賛成もあれば反対もあるもの

何かを変更すれば、幸せになる人と苦労を強いられる人がいるものです。そのため、一部の人だけが利益を享受せず、大多数が幸せになる選択ができるように民主主義があるのです。

消費税率の引き下げで大多数が幸福になると有権者が判断すれば、小規模店舗の経営者など一部の人が損失を被るとしても実施されることになるでしょう。社会全体に与える影響や責任は、有権者である国民全員が負うことになります。

私たち有権者は、変更に伴うメリットとデメリットを十分に理解して判断をしなければなりません。

情報の「正しさ」と「正す力」

テレビと違い、YouTubeなどのネット情報では、報道の「誤りを正す」力が働き、コメント欄などには正しい情報を共有しようとする人たちも多くいます。

今回紹介したTBSの動画には以下のようなコメントが寄せられています。

私も販売管理システムを多く開発・設計してきましたが、税率変更機能はいわゆる「基本機能」であり、システム設計の基礎です。システム設計時に消費税率変更を考慮するようになったのは、もう20~30年前の話であり、現在に至っては税率変更を考慮出来ていないシステムは売り物にならないでしょう。

テレビを信じる世代には厳しい令和時代

しかし、残念ながら一方通行のテレビ番組を観ているだけの人は、そういった修正された情報を知ることができず、報道された内容が真実であると信じてしまいます。

徐々にテレビの影響力は小さくなってきているとはいえ、未だ高齢者世帯などではテレビは重要な情報源となっています。

マスメディアも人間が運営しているものなので誤ることもあるとは思いますが、選挙に向けての重要な情報番組において真実と乖離がある情報を有権者に提供していると、どうしても恣意的なモノを感じずにはいられません。

SNSなどの情報の危険性が囁かれることも多いですが、本当に正しい情報がどこにあるのか、私たちは注意して見極めていかなければなりません。

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