このシリーズはPHPでデータベースを扱いたいと考えている方を対象とした記事となっています。
PHPは、Webサービスの構築などに利用されているプログラム言語です。JavaScriptのようなクライアントサイド(ブラウザ側)で動作するのではなく、サーバーサイド(Webサーバー側)で動作するプログラムです。無料で利用することができて機能も豊富なため、広く様々なサービスの構築で利用されています。Webサービスでは膨大な情報を扱うためにデータベースが利用されることが多く、PHPではデータベースを扱う方法がいくつも提供されています。
このシリーズでは、PHPからデータベースを扱う際に利用することが出来るPDOについて、基本的な利用方法を紹介していきます。一通り読み進めれば、PHPからデータベースを扱うことができるようになると共に、基本的なセキュリティーや安全な実装についての基礎が学べるようになっていますので、是非参考にしてみてください。
PDOとは
PDOというのはPHP Data Objectsの略で、PHPからデータベースを扱うための拡張モジュールです。PDOはPHP自身に含まれているため、利用するために複雑な手続きがほとんど必要ありませんが、各データベースに接続するためにはデータベース固有のPDOドライバを利用する必要があります。
PDOはデータベースを抽象化するため、データベースの種類に依存することなくデータベースをプログラムから扱うことが出来ます。ただし、データベース製品固有の特殊な機能などは、PDO経由では利用できない場合もあります。PDOを含めた抽象化技術の最大の強みは、例え扱うデータベース製品が変っても、一定のプログラムで同じ動作を実現可能なところです。
以下の項で、PDO以外の選択肢と比較しながら、PDOを選ぶメリットについて確認してみます。
PDO以外の選択肢とPDOを選ぶ理由
PDO以外にもデータベースを利用する方法は様々あります。PDOと同じように抽象化レイヤーに相当するものだと、DBAやODBCといった他の言語や環境でも耳にするものが、PHPからも利用できます。
また各データベースに特化したベンダー固有のアクセス方法も利用することができ、これらを利用することで、そのデータベース固有の特殊な機能などをフル活用することができます。ただし、MySQLやPostgreSQLなどデータベース製品毎に異なるため、ベンダーの対応状況やバージョンなども含めて確認する必要があります。
選択する上で大事なことは、利用する方法毎にメリットやデメリットがあり、どの方法が一番良いというものではなく、用途/目的にあった方法を選択するべきという事です。
PDOを選ぶ理由は、最も単純で汎用性が高い事です。
PDOに限りませんが、どうしてもデータベースの特殊な機能を利用する必要がある場合を除いて、抽象化レイヤー(PDOやODBCなど)を選択する方が良いでしょう。抽象化レイヤーを選択しておくことで、仮に利用するデータベースを制作途中で変更する様な事態になっても、容易に対応が可能という強力なメリットを得られます。
PHPで提供されている他の抽象化レイヤーであるDBAやODBCは他のプラットフォームや言語で慣れている場合などは選択しても良いかもしれません。ただ、PDOはPHPのために作られた抽象化レイヤーで、とてもシンプルな構造をしているので、これからPHPでデータベース関連の勉強をしようとする人には特にオススメです。
PDOを学ぶことで出来ること
PDOを学ぶとPHPからデータベースを扱うことが可能になります。データベースへの問い合わせに使うSQLについての基礎知識は別途必要になります。
PDOを使うことで、データベースに対して任意のSQLを発行することが可能になります。SQLの基本操作であるINSERT(挿入)、UPDATE(更新)、SELECT(選択)、DELETE(削除)などを組み合わせて様々な機能をプログラム上で実現が可能となります。また、各データベースが提供しているトランザクションについても、PDOの抽象化レイヤーから共通して扱うことが可能です。
Webのプログラムを行うPHPのようなプログラム言語と、MySQLやPostgreSQLなどのデータベースは、それぞれ異なる技術分野ですが、PDOによってそれらをつなぎ合わせることで、より高度なソフトウェアを実現することができるようになります。
またPDOはデータベースを扱う抽象化レイヤーであり、データベース製品に共通する技術を理解し、扱いに慣れていくことに役立ちます。MySQL等特定のデータベースで勉強を始めた場合でも、PDOの学習を続けることで、PostgreSQLなど他のデータベース製品も同様に扱うことができる技術が習得できるでしょう。
PDO習得の全体像
PDO自体が提供している機能は多くありません。以下は2024年時点でのPHPのマニュアルで確認できるPDOクラスの全貌です。
参考 : PHP: PDO – Manual
機能の種類は多くないため、網羅して学習を進めてもそれほど習得に時間がかかるものではありません。データベースの操作に全ての機能が必要という訳ではありませんので、このシリーズでは基本的なデータベース操作について順を追って紹介していきます。
まとめ
PDOはPHPからデータベースを利用するのにとても役立ちます。個人でプログラム制作をするだけでなく、企業で大きなデータベースを扱う場合にも利用される非常に優れた拡張モジュールです。
一度使い方を覚えてしまえば、各種データベース製品(MySQLやPostgreSQLなど)をPHPから同じように扱うこともできるようになるだけでなく、他のプログラム言語を利用する際には類似した抽象化レイヤーを理解する助けになるでしょう。
Webプログラムとデータベースを組み合わせることで、ECサイト(Webショッピング)や検索、SNSなど、現在一般的に利用されている各種サービスのほとんどが実現可能になってきます。PHPとPDOをあわせて学ぶということは、広く社会的に役立つソフトウェア制作ができる技術を習得することにもなりますので、是非興味を持って触れてみてもらえればと思います。