日本語では一つの言葉でも、英語では複数の単語がある言葉は意外とたくさんあるものです。そもそも日本語と英語は別々の地域で作られてきた言葉であって、その言葉に共通点はあっても、基本的には1対1で対応しているものではありません。
今回は、「修理する」という日本語に対して、複数の表現が可能な英語の各単語について、意味やニュアンスの違いを確認してみます。日本語でも言葉が変わるとニュアンスが変わる言葉や、同じ意味でも相手によって使い分ける敬語のようなものがあり、使い方を誤ると場合によっては失礼になったり、違和感を感じる事に繋がります。それは英単語も同じなので、できるだけ正しく使い分けできるように、しっかりと確認していきましょう。
fix, repair, mendの違い
日本語では「修理する」という意味の言葉を英訳しようと辞書などを調べると、カタカナ語でも聞いたことのある複数の英単語が見つかって困惑することがあるでしょう。日本語の単語に複数の英単語が見つかることはそれほど珍しいことではありませんが、身近なカタカナ語にまでなっていると、日本人としてはその違いが気になるものです。
「修理する」の意味を持つ有名な英単語には、fixやrepairの他にmendなどがあります。特に、フィックスとかリペアというカタカナ語は日本語でも利用されるため、聞いたことがある人も多いでしょう。ただ、カタカナ語的にフィックスというと、スケジュールなどを「最終決定する」という意味で使われていることが多いかもしれません。
お急ぎの方向けに、まずはそれぞれの単語の違いを理解するため、使われ方などの特徴を以下にまとめてみます。
英単語 | 特徴 |
---|---|
fix | (素人が) 修理する – アメリカ的 |
repair | (専門家が) 修理する |
mend | (主に服や履物を) 修繕する – イギリス的 |
同じ修理・修繕するという意味なのに、修理する人や対象のもので言葉が変化していて、それぞれニュアンスが異なっています。日本語での「直す」と「修理する」の違いのようなものといえるかもしれません。
各単語の意味や使われ方
それぞれの単語について、詳しく見ていってみましょう。英単語としてはそれぞれ根源的なイメージがあるものですが、使われ方によって「適切な日本語訳」は変化するもので、辞書などではそれぞれが異なる「意味」として掲載されています。
ここでは辞書などでよく掲載されている意味と共に、実際に使われているシーンや覚えやすい由来なども含めて紹介していますので、是非参考にしてみてください。
fix
fixは動詞だけでなく名詞としても使われ、動詞としては「修理する」の他にも様々な意味で使われます。日本人としては「固定する」というイメージの方が強い英単語かもしれませんが、修理・修正するという意味合いでも比較的よく目にする単語です。

動詞
- 固定する
- (注意を)じっと向ける
- 決定する
- (罪を)負わせる
- 修理する
- (食事を)用意する
名詞
- 苦境
- 位置
動詞としては、「固定する」という意味でよく使われる単語で、カタカナ語でも使われる「決定する」という意味も、「予定を固定する」という意味で、ニュアンスとしては同じ意味合いと言えるでしょう。
修理するという使われ方は、近年でいうとソフトウェアやゲームなどの業界で頻繁に耳にするようになりました。不具合の修正の事をバグフィックス(bug fix)と呼び、ソフトウェアのアップデート内容等にはFixed a bug ***(***のバグを修正)のような項目がある事も多いです。
先に紹介した通り、fixは素人・一般人が修理するイメージです。ソフトウェアの修正は紛れもなくプロ集団によって行われるわけですが、repairではなくfixが使われます。repairは専門家に修理をしてもらうイメージの言葉と言えるかもしれません。
repair
repairにも動詞と名詞の意味があり、「修理する」という意味の英単語として日本でも有名な単語でしょう。日本でも「リペアキット」のような商品名の修理用品が数多く販売されています。

動詞
- 修理する
- 訂正する
- 償う
名詞
- 修理
- 修理(手入れ)の状態
意味を見ても分かる通り、repair(修理)することで元の状態に戻すといった意味の言葉です。物品が故障して直すという意味合いだけでなく、損害を償ったり、体力を回復するといった意味でも使われます。
そもそもrepairという言葉はラテン語由来の単語で、re(再び) paro(使えるようにする)という単語から作られた言葉が変化したものです。ラテン語の影響を受けている英語には、reから始まる「再び」の意味を持った単語が多くあります。(例 : repeat, replay, redoなど)
mend
mendは「修理する」という意味合いの英単語ですが、日本ではカタカナ語で使われることもないため、日本人としては聞き覚えがあまりない単語かもしれません。他の単語と同様、動詞や名詞で使われます。
動詞
- 修理する、繕う
- 改善する
名詞
- 修繕箇所
修理するという言葉ではありますが、布製品を繕う(つくろう)といったニュアンスがあり、衣服など「身につける物品を修繕する」といった意味合いで使われることが多い英単語です。
Minecraftの修繕 – mending
人気ゲームMinecraftでは、修繕(エンチャント)のことを英語ではmendingと表現します。世界中の多くの人が配信でプレイするゲームですが、日本語に対応しているゲームなので意外と英語での表現を知る機会は少ないものです。近年はVTuberなどのコンテンツ形態で、日本人と海外の人が片言の言語で交流する場面があり、ゲーム内の単語などの意思疎通に苦労する場面もよく見かけるようになりました。印象的な動画を一つだけ紹介します。
上記動画では英語話者の配信者(Koseki Bijou)さんが、日本語話者の配信者に対して、「修繕は英語でmending」であることを伝えているシーンが、切り抜き動画(ホロガイドン 英語解説チャンネル)様によってまとめられています。
続いて日本語でのチャットを読みながら、視聴者に日本語の意味を尋ねる形で新しい日本語の意味を習得していっており、外国語の習得に「環境」や「会話できる友人」が非常に有効であることを改めて知ることもできます。何よりも、Koseki Bijouさんの「言語を習得しようという気持ち」がとても強く、高い好奇心が伺えて、こういった動画は言語学習のモチベーション向上にも繋がります。Koseki Bijouさんはhololive-ENに所属しているVTuberさんで、興味のある方は以下公式YouTubeチャンネルもご覧ください。
YouTube : Koseki Bijou Ch. hololive-EN
学びの基本は疑問から
言語に限らず、何かを学ぶ際に大事なものは「疑問に思う事」だと思います。疑問に思うということは、「興味」が湧いているということでもあるでしょう。疑問にも思わず、興味もない事を、延々と座学などで学ぼうとしても、なかなか習得できないものです。
逆に、興味のある事であれば、強制されることもなく、自発的に調べて学びを得ていくことができるでしょう。mendの項目で引用させてもらったBijouさんの様に、学びたいという気持ちさえあれば、自然と「これって何?」「どういうこと?」と疑問が出てくるものです。
私の場合、会話のための言語(英会話)については、実はそれほど興味関心がなく、どちらかというと言語の体系や歴史に興味があります。日本語と英語という全く異なる言語が、翻訳という過程を経て意思疎通されている現象にも、非常に興味が湧いてくるのです。そのため、本サイトでは英語の辞書のような解説記事ではなく、少し変わった角度から意味の違いを紹介するような記事が多くなっています。由来を辿ったら違う言語に辿り着くとか、面白い経緯や歴史があるものなどは大好物です。
以下の記事では、「明太子」の語源を辿りながら、日本語と英語、そして韓国語まで言及することになっていて、意外と知られていない雑学を掲載していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
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