パンは英語で「bread」 – 英語由来ではない日本語の「パン」

パンはbread - パンの由来 雑学

私たちが日常的に使っている日本語には、カタカナの言葉になっている外来語が多くあります。日々の生活の中で使われるため、外国の言葉であっても馴染みがあって、違和感はありません。

今回は、食べ物の「パン」という言葉について、掘り下げてみます。パンは英語ではbread(ブレッド)なので、英会話で間違えないようにという話を聞いたことがある人も多いでしょう。しかしそれなら、日本の「パン」という言葉はどこからきた言葉なのでしょうか。それには日本と欧米諸国との歴史が影響しています。

パンは英語でbread

日本は従来お米を主食とする国でしたが、明治時代以降には食の多様化も進み、現代ではお米だけでなく「パン」や「パスタ」のような小麦製品も親しまれています。

パンは英語では「bread : ブレッド」と呼びます。

パン挿絵

bread(パン)とは、小麦粉、水、酵母または他の膨張剤を混ぜて焼いた食品のことで、関連した英単語には以下のようなものがあります。

パンに関する日本語英単語
小麦粉flour
酵母yeast
生地dough
混ぜたmixed
焼いたbaked

小麦粉はflourで、カタカナ表記するとフラワー(またはフラゥア)となって「花 : flower」と似ていることで、日本人には少し発音が難しい単語としても有名です。小麦の状態はwheat(ウィート)で、粉の状態に加工されたものをflour(フラワー)と呼びます。日本語の方は、「粉」が付くかどうかだけの違いで覚えやすいですが、英語では別の単語を覚える必要があります。

yeastは酵母の事ですが、日本ではパンの発酵に使う酵母の事を「イースト菌」と呼ぶので、比較的覚えやすいでしょう。

生地を意味するdoughは発音を間違えやすい単語です。カタカナで表記すると「ドウ」で、発音はローマ字の「dou」とほぼ同じなので、注意しましょう。英語ではこの単語の様に、読まないghが付いていることが良くあります。

英語でpanはフライパン

日本のカタカナ語になっている「パン」ですが、英語でも同じ発音をする単語があるため注意する必要があります。

英語でpan(パン)と言うと、フライパンの意味になります。

フライパン挿絵

この間違いをしてしまう日本人は比較的多く、外国人に「日本人はフライパンを食べるのか」と驚かれたり、笑われたりすることがあるようです。以下に、自分の好物を話すという「よくある状況」での失敗例を紹介します。

(誤用)
英語 : My favorite food is pan.
意味 : 私の好きな食べ物はフライパンです。

(正解)
英語 : My favorite food is bread.
意味 : 私の好きな食べ物はパンです。

日本でカタカナの言葉なので、元は英語だと思い込んでいると、このような失敗に繋がってしまいます。英語がカタカナの言葉になっているものは多いですが、その他の言語からカタカナになっているものも意外と多いです。

日本でbreadを「パン」と呼ぶ由来

日本の「パン」は、ポルトガル語の「pão (パオン)」に由来します。

日本に欧米の国の人が辿り着いたのは、学校の授業でも習う「1543年 : 鉄砲伝来」です。世界的には大航海時代の真っ最中で、ヨーロッパから極東の国である日本にまで辿り着いた大きな事件です。

ちなみに、大航海時代の最大の発見である「アメリカ大陸の発見」は1492年で、日本に鉄砲が伝来した少し前(50年前)の出来事です。

鉄砲伝来は、ポルトガルの船が種子島に漂着したことで知られていますが、その際に鉄砲と一緒に「パン」も伝来しました。日本には、英語の前にポルトガル語が伝わっているということになります。

ポルトガル語に由来する日本の言葉

日本で今も使われる「ポルトガル由来の言葉」は多く、代表的な物には以下のようなものがあります。

  • ビスケット
  • コロッケ
  • ボーロ
  • チャルメラ
  • コップ
  • ボタン
  • マント
  • カルタ

日本では、鉄砲伝来以降ポルトガルの宣教師などが多く訪れ、その過程で多くのポルトガルから品物が持ち込まれることになりました。そのため、ポルトガル由来の言葉の多くは「名詞」となっていて、当時見た事のない物品の名前を、ポルトガル語の名前と共に受け入れたと考えられます。

また、江戸時代に入ると日本は鎖国をしており、外国の船は大きな制限を受けることになります。鎖国期間中も取引を継続したヨーロッパの国「オランダ」は、日本に最新の科学技術や学問を伝える等、大きな影響を与えています。オランダから入ってきた西洋の学問は「蘭学(らんがく)」と呼ばれていました。蘭(らん)はオランダを意味する日本の漢字表記のひとつです。(和蘭, 阿蘭陀などもある)

アルファベットの「Z」を日本では「ゼット」と読みますが、英語では「ズィー」と発音します。この由来にはいくつかの説がありますが、オランダの読み方「ゼット」が鎖国中に日本に伝わったとする説が有力です。興味のある方は是非以下の記事もご覧ください。

日本語と英語の出会いは遅い

歴史の中で、日本にヨーロッパの言葉が伝来してきたのは大航海時代以降の事です。鉄砲伝来以降にポルトガル、鎖国中にはオランダと交流することで、言語を含めて様々なヨーロッパ文化が持ち込まれました。

日本に「英語」が伝来したとされるのは、初めてイギリス人(三浦按針 : みうらあんじん)が日本に到着した1600年とされることが多いです。1600年というと、日本では関ヶ原の合戦が有名ですが、世界ではポルトガル・スペインで世界を分け合うという壮大な植民地政策が進行中で、日本もその渦に巻き込まれていきます。

三浦按針は、本名を「ウィリアム・アダムス」というイギリス人(イングランド人)です。当時のイギリスはポルトガルやスペインとは敵対関係にありましたが、オランダとは仲が良く、ウィリアム・アダムスはオランダの船に乗って日本に辿り着きます。その後は徳川家康の下で、外交顧問・通訳として活躍しており、江戸時代初期の日本に大きな功績があるとされ、現代でも三浦按針を記念した場所や行事があります。サツマイモを日本に伝えたことでも知られています。ちなみにイギリスという国名は、Inglez(イングレス)というポルトガル語が語源だとされています。

三浦按針や徳川家康と共に、当時のポルトガルとの情勢を基に作られたドラマ「SHOGUN」は、2024年に世界的に大きな話題にもなりました。

英語と言えばアメリカが思い浮かぶ人も多いかもしれませんが、アメリカが日本に訪れるのはかなり遅く、三浦按針(1600年)から200年以上経った1800年代の事です。学校教育で習う「ペリー来航」は1853年の出来事で、ペリーはアメリカ海軍を率いて、日本に開国を迫ったことで知られています。ペリー来航について、日本では良い事のように考えている人を見かける事がありますが、本当にそうなのか以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご覧下さい。

「日本語」を知ると「歴史」も分かる

言語は歴史の中で様々な変化をしながらも「常に人と共に」あり、その中には人類の長い歴史が刻み込まれています。

今回紹介した「パン」が英語のbreadではなく、ポルトガル語に由来しているという事例からも分かるように、外国と日本が接してきた歴史が、日本語の言葉にも刻まれており、言語から時代背景や流れを感じる事ができます。

日本人は物事の由来などを「知りたい」と思ったり、考え方を「理解したい」と感じる人が多いようで、言語学習をする日本人の特徴として語られることがあります。身近な物事というのは「当たり前」のことで疑問に思うこと自体が難しい事ではありますが、知らないことに疑問を持ってみると、そこには新しい発見があることも多く、それらの多くは歴史で繋がっていることでしょう。

現代はインターネットなどの技術のおかげで、調べ物をするのが格段に便利な世の中になっています。是非素朴な疑問などを調べてみてください。

日本語の中には、英語由来であっても意味が変わって使われるようになっている言葉もあったりします。以下の記事では、日本で使われる「ラッシュ」という英語由来の言葉も、本来の意味から変化して使われています。興味のある方は是非ご覧下さい。

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