和製英語「コンパニオン」とcompanion – 意味の違いに気を付けよう

和製英語 - コンパニオン 言語

日本語には、「和製英語」というものが存在します。

コンパニオン」という日本の言葉は、英単語「companion」が基になっているように見えて、実は日本で作られた和製英語です。英語とは違った意味で使われている和製英語に慣れてしまうと、英会話や英文の読解などで間違った解釈をしてしまう危険性があります。

和製英語「コンパニオン」とcompanionの違い

日本語で使われる「コンパニオン」という言葉と、英単語の「companion」の意味合いについて、違いを簡単に比較すると以下の様になります。

単語意味合い
コンパニオン(女性の) 接客係
companion旅の連れ
和製英語「コンパニオン」と英単語「companion」

それぞれの言葉について、順番に確認してみましょう。

日本語の「コンパニオン」の意味

日本語のコンパニオンという言葉は、以下のような意味で使われている和製英語です。

日本語の「コンパニオン」は、イベントや宴会などで来賓の案内接待をする女性(の役割)のことを指すことが多く、「接客係」や「付き添い」といった言葉に近い意味で使われます。

商品の発表イベントなどで、商品の傍に立っている女性のことをイメージする人も多いのではないでしょうか。また、宴会などで給仕をする女性の事をコンパニオンと呼ぶこともあります。

コンパニオン - 日本語イメージ
コンパニオン – 日本語のイメージ

「コンパニオン」と「キャンペーンガール」の違い

日本では、商品の傍に立ってアピールする女性のことを「キャンペーンガール」や、省略して「キャンギャル」などと呼称することがあります。

「コンパニオン」と「キャンペーンガール」は以下のように違った役割があるとされています。

単語役割
キャンペーンガール商品を引き立てる「モデル」
コンパニオン商品を紹介する「接客・案内」
コンパニオンとキャンペーンガールの違い
「キャンペーン」も和製英語なので注意しよう

コンパニオンと同じように、キャンペーンガールの「キャンペーン」も和製英語です。

単語意味合い
キャンペーン割引期間、安売り
campaign政治運動、選挙運動
和製英語キャンペーンと英単語campaign

日本語のキャンペーンという言葉は、割引期間安売りのような販売促進関連の意味で使われますが、英語のcampaignは政治的な運動や選挙運動の事を指す広い意味の言葉です。

日本語の意味合いでcampaignという単語を使うのであれば、sales campaignやadvertising campaignのように補足する単語が必要になります。

英語の「companion」の発音と意味

英単語のcompanionの発音は以下の様になっています。(by Google 翻訳)

companionの発音(by Google翻訳)

カタカナ読みでは「コンパニオン」とされることが多いですが、実際の英語の発音では「a」は「aとeの中間」のような音なので「コンペニオン」に近い音になります。

代表的な意味には以下のようなものがあります。

  • (旅の) 連れ
  • 友人、仲間
  • 相棒、補助ツール

companionという英単語は、旅を共にする「」または「動物」というイメージが強い単語です。

companionのイメージ

英語のcompanionは、人だけでなく犬や猫を含め動物全般も指す単語です。英英辞書に記載される最初の意味は以下のようなものになります。

英英辞書でのcompanionの説明 :
a person or animal with whom one spends a lot of time or with whom one travels.

和訳 :
一緒に多くの時間を過ごしたり、一緒に旅行したりする人または動物

英語のcompanionのイメージ
英語でのcompanionのイメージ

また旅以外でも、companionという単語は同行者や共に生活する仲間の事などを指す意味でも使われます。

日本の「コンパニオン」に相当する英語

日本語の「コンパニオン」を英語で表現する場合、英単語のcompanionは意味が違うため適切ではないでしょう。英語での表現には以下のようなものが考えられます。

  • booth hostess : ブースに立って案内する女性
  • promotional model : 商品をアピールするモデル

booth hostessは日本語のコンパニオンに近く、promotional modelはキャンペーンガールに近い表現ともいえます。

もっと単純にevent staff (イベントスタッフ)のような表現も使えます。他にもゲーム展示会などでは”booth bunny”という言葉が使われることもありますが、こちらは少しカジュアルで、性的な響きがあります。

日本でコンパニオンの意味が変わった背景

日本のコンパニオンが、英語のcompanionと意味が変わってしまた背景についてまとめてみます。

companionの語源

companion(英語)

  • ラテン語 com-(共に)+ panis(パン)=「共にパンを食べる人」
  • 本来は「友・仲間・同行者」を意味。
  • 英語では今も「友人・同行者・相棒」の意味が中心で、接客スタッフの意味はない。

ちなみに「パン」は英語ではbreadです。語源に興味がある方は是非以下もご覧ください。
💡関連記事 : bread(英語)を日本ではパンと呼ぶ理由 – 言葉の由来と歴史

日本での意味変化の経緯

日本でコンパニオンという和製英語が定着したのには、以下のような背景があります。

  1. 戦後日本の外来語ブーム
    • 1940~50年代以降、ホテル・観光業や外資系企業の文化が広まり、「英語風の職業名」に人気が出る。
    • 英語のcompanionを「付き添い」「同行者」というニュアンスで取り入れ、接客サービスに当てはめた。
  2. 観光業・接待文化の影響
    • 1950~60年代の観光地・温泉旅館などで「宴会の席に付き添い、場を盛り上げる女性スタッフ」をコンパニオンと呼ぶように。
    • このときの役割は「お酌をする女性」「宴会を華やかにする存在」。
      → “同行者” のイメージが「接客のために同席する人」に変化。
  3. イベント業界・キャンペーンガール化
    • 1970年代以降、モーターショーなどの展示会や商業イベントで「コンパニオン」が商品紹介・販促活動を担うようになり、「イベントコンパニオン」という定着した職業名になった。
    • 英語の promotional modelbooth hostess に相当。
  4. 和製英語として固定化
    • 英語圏ではこの意味でcompanionは使わないため、
      日本語でしか通じない「コンパニオン」という職業カテゴリができた。
    • 現代では「宴会コンパニオン」「イベントコンパニオン」など細分化され、完全に和製英語化。

例文で覚えよう

英単語のcompanionと、和製英語のコンパニオン・キャンペーンガールなどの違いを覚えるのに役立つ例文をいくつか紹介します。

  • Companion(本来の英語の意味:同行者・仲間)
    • She was my only companion during the long train journey.
      長い列車の旅の間、彼女だけが私の同行者だった。
    • A dog can be a loyal companion to elderly people.
      犬は高齢者の忠実な相棒になれる。
    • He enjoyed hiking with a trusted companion.
      彼は信頼できる仲間とハイキングを楽しんだ。
  • Companion(書籍やアプリの副読本・補助ツール)
    • This book is a helpful companion to the main textbook.
      この本はメインの教科書の良い副読本だ。
    • The museum offers a smartphone companion app for visitors.
      博物館は来館者向けにスマホのガイドアプリを提供している。
  • 「コンパニオン」(和製英語:イベント・接客スタッフ)
    • The company hired several promotional models for the car show.
      その会社は自動車ショーのために数名のキャンペーンガールを雇った。
    • She works as a booth hostess at trade fairs.
      彼女は展示会でコンパニオン(ブースの案内係)をしている。

(誤用の注意)
英文 : In English, “companion” usually refers to a friend or someone who accompanies you, not a hired hostess.

和訳 : 英語での“companion”は友人や同行者を意味し、雇われた接客スタッフ(コンパニオン)ではない。

身近な疑問から学びを得る

日常生活では、言語について考える機会は多くないかもしれませんが、当たり前に使っている言葉でも、よく意味の分からない言葉や不思議に思ったことを調べてみると、恥ずかしい思いをしなくて済んだり、広い視野で物事を見れるようになることもあるかもしれません。

普通や常識と思われていることにも疑問を持ってみると、意外な知識と繋がって、また新しい疑問が湧いてきたりもするので、是非試してみてください。