身近にあるものでも、日常生活に支障のないことについては意外と気にならないものです。何となく知っていれば困ることがないからです。子供や部下を持つ等で「人に教える」立場になって、曖昧な知識しかないことで説明に窮するということを経験すると、それまで気にならなかった事についても確認するようになることもあるでしょう。
「ゴボウはイモなの?」という素朴な疑問を耳にしたときに、「違うでしょ」と笑ってしまう人もいるでしょう。しかし、よく考えたら根菜類や地下茎などといった言葉は思い浮かぶものの、具体的にその言葉の意味やゴボウとイモの違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。今回は、そんなゴボウとイモについての違いと共に、関連する周辺知識をまとめて確認していってみます。
ゴボウはイモと何が違う?
日本で生活していると、近所のスーパーなどの野菜を販売している場所で見かけることもあるため、ゴボウやイモの事を知らない人は少ないでしょう。また、それぞれ別の名前で違う形をしているため、同じだと考える人はあまりいないでしょう。
どちらも土の中にできているものを収穫することが知られているためか、分類として「ゴボウはイモだ」と考える人もいるようです。
以下のYouTube動画は「ぶいすぽっ!」の配信の一部を切り抜きされたもので、小森めとさんの「ゴボウはイモだと思っていた」という発言に対し、その他のメンバーが困惑しているというシーンです。
ゴボウはイモなのか、そもそもイモとは何なのかなど、順番に確認していってみましょう。
イモ・ゴボウは根なのか茎なのか? – 地下茎とは
イモの話を始める前に、最初に地下茎について確認しておく必要があるでしょう。
地下茎とは名前の通り、地下にある茎の事を指します。地中に伸びる茎で、植物が栄養を貯めたり増殖したりする際に形成されます。根ではなく茎の構造をしているため、土の中にあっても「茎」と分類されます。
地下茎は、役割や構造などによっていくつかの種類に分類されます。代表的な物としては以下のようなものがあります。
- 根茎 (こんけい) – タケ類、アマドコロなど
- 鱗茎 (りんけい) – ユリ類、タマネギなど
- 塊茎 (かいけい) – ジャガイモ、キクイモなど
- 球茎 (きゅうけい) – サトイモ、クワイなど
ジャガイモは地下茎の一種であり、細かい分類としては塊茎に該当します。塊茎というのは、ジャガイモのように、地下茎の一部がデンプンなどを貯蔵して塊のようになったものです。つまり、ジャガイモは茎ということになります。
一方ゴボウは根です。茎のように地中にまっすぐ伸びますが、私たちが食べる部分は根の部分です。ゴボウからはヒゲの様なものが伸びていますが、あれらはメインの根から分岐した細かな根で、側根(そっこん)と呼ばれます。
ヒゲが生えている野菜と言えば、「サツマイモ」を思い浮かべる人もいるかもしれません。側根の生えているサツマイモは根であり、分類上はゴボウにも近いといえます。まとめると以下の表のようになります。
種類 | 茎 or 根 |
---|---|
ジャガイモ | 茎 |
ゴボウ | 根 |
サツマイモ | 根 |
ジャガイモは茎で、サツマイモは根ということになると、「ゴボウはイモなのか」いよいよ分からなくなってきます。そもそもイモとな何なのでしょうか。
イモとは「根や茎が肥大化したもの」
イモという同じ名前が付いているのに、根や茎のものがある事を不思議に思う人もいるでしょう。イモは以下のようなものとされています。
植物の根または地下茎が養分を貯蔵して、球形や紡錘形(ぼうすいけい:円柱状で両端が細くなる形状)などに肥大したものを指します。
上記にあるように、イモというのは茎も根も含んだ言葉です。イモは、冬の間に地上部分が枯れてしまった後、春に芽を出して生育するための初期エネルギーとなります。

ゴボウは土に植えても芽が生えてきません。このことからも、「ゴボウはイモではない」ことが分かります。前項で同じ根であると紹介したサツマイモは、イモでもあるので、土に植えると発芽します。
イモの種は花が咲いた後の実に生成されますが、食用で栽培する場合は発育が遅いために使われることは少なく、一般的には種芋と呼ばれる発芽用のイモを使用します。一方ゴボウはイモではないので、種芋ではなく種子を使って栽培します。
地下茎と根の見分け方 – イモと主根の違い
ゴボウやサツマイモなどのように「ヒゲがあるものは根」だと覚えておくと、地下茎と根をある程度見分けられるようになるでしょう。ヒゲの部分は、中心の根から周囲に張り巡らされる枝葉の根であり、私たちが食べている部分は中心にある根ということになります。
枝葉の根の部分の事は、枝根(えだね)や側根(そっこん)と呼ばれ、中心の根は主根(しゅこん)と呼ばれます。主根はイモの様に養分を蓄えて太くなっていますが、その理由は発芽するためではなく、植物をしっかりと支え、広く深い範囲から水や養分を吸収するためと考えられています。
主根を食用とする、ヒゲ(側根)のある代表的な物と言えば以下のようなものがあります。
- 大根
- 人参
- ゴボウ
- カブ
- サツマイモ
最後にもう一度おさらいしておきましょう。
種類 | 食用部位 | 茎 or 根 |
---|---|---|
ジャガイモ | イモ | 茎 |
ゴボウ | 主根 (not イモ) | 根 |
サツマイモ | イモ | 根 |
こうして改めて確認すると本当にややこしいです。この原因は、私たちが使う「イモ」という言葉が、ジャガイモという意味で使われたり、分類上の表現として使われることにあるのかもしれません。
よく聞く「根菜類」って何だっけ?
根菜とは、地中にある部分を食用にする野菜の事です。つまり野菜の一種です。
野菜の定義は分野によって様々で、明確な定義はないようですが、基本的には食用の植物の事を指して使われる言葉といっていいでしょう。野菜には以下のような種類があります。
- 葉菜類:キャベツ、ホウレンソウ、レタス、セロリなど
- 根菜類:ダイコン、ジャガイモ、ゴボウ、サツマイモなど
- 果菜類:キュウリ、カボチャ、トマト、ナスなど
- 茎菜類:アスパラガス、ウドなど
- 花菜類:ブロッコリー、ミョウガなど
ここまでに紹介してきたジャガイモ、ゴボウ、サツマイモは、いずれも地中にある部分を食べる野菜であり、根菜類に分類されます。
厚生労働省の食事摂取基準などでは、イモは野菜とは別で「いも類」として分類されます。そのため、イモは植物の分類上では野菜(根菜)ではあるものの、栄養的な分類では「野菜ではない」ということがある複雑な食べ物です。
イモは野菜かと問われると、日本人でも困ってしまうことがあるのは、こういった行政的な分類の複雑さが背景にあるとも考えられます。また、野菜と根菜といった言葉についても、細かな定義についてまで考えることは少なく、根菜は野菜とは違うものと勘違いしてしまうこともあるでしょう。
イモやゴボウの栄養
日本人としては少し意外かもしれませんが、世界的にみるとイモは代表的な主食穀物のひとつです。今はどこの国も食の多様性が進んでいますが、歴史的にはイギリスは米や小麦ではなく、ジャガイモを主食とした国であることが知られています。
このサイトでは何度も登場している主食ランキング(Wiki)の表を再度掲載します。

このランキングの中にある「イモ」が名前に含まれているものとしては、ジャガイモ、サツマイモ、ヤムイモがあります。また、第5位のキャッサバはタピオカの原料であり、サツマイモと同じように根の部分を食用とするイモです。10種類の主食作物の中に4種類のイモがあることになりますが、トップ3のトウモロコシ、米、小麦の収穫・消費は圧倒的で、これらだけで世界の3分の2の人口を支えていると言われています。
ヤムイモという種類はあまり聞き覚えがないかもしれませんが、日本の山芋はヤムイモの一種です。西アフリカの方では、ヤムイモは主食としても栽培されています。
トウモロコシやキャッサバという主食穀物は、今や世界を支える重要なエネルギー源ですが、コロンブスが発見した新大陸(アメリカ大陸)からもたらされた比較的新しい穀物であることはあまり知られていません。タピオカやキャッサバについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので、興味のある方はそちらもご覧ください。
イモは主食になっていることからも分かるように、炭水化物が多く含まれます。炭水化物の他には、食物繊維、ビタミンC、カリウムなどが含まれます。主食に分類されないゴボウは炭水化物が少なく、食物繊維が多く含まれています。
100gあたりのエネルギーや栄養素についての比較してみましょう。イモは代表としてサツマイモの数値を掲載しています。
種類 | エネルギー(kcal) | 水分(g) | 炭水化物(g) | 食物繊維(g) |
---|---|---|---|---|
サツマイモ | 151 | 58.1 | 39.0 | 3.5 |
ゴボウ | 50 | 83.9 | 13.7 | 6.1 |
サツマイモは多くの炭水化物を含んでおり、ご飯と同じくらいエネルギーを得ることが出来る食べ物です。ゴボウは食物繊維以外にも多くの栄養(カリウムなど)を含んでおり、病気の予防などに役立ちます。古くは今の様に日常的に食べるものではなく、薬として使われていたとも言われています。
他の食品の栄養などを調べてみたい方は、是非文部科学省の食品成分データベースを利用してみてください。少し専門的すぎる気もしますが、検索機能もあって、ちょっとした調べ物をするには便利です。
出典 : 食品成分データベース – 文部科学省
イモやゴボウを表す英単語
イモの英単語「potato」は、日本ではカタカナ語の「ポテト」として一般的に使われています。ポテトチップスの様に商品名になっているものもあります。

今回の記事で扱ってきた、サツマイモやゴボウ、それに根菜類といったものは英語では何と呼ぶのか、それぞれ確認してみましょう。
日本語 | 英語 |
---|---|
ジャガイモ | potato |
サツマイモ | sweet potato |
ヤムイモ | yam |
キャッサバ | cassava |
ゴボウ | burdock |
根菜類 | root vegetables |
ゴボウを指す英単語のburdockは、日本ではあまり馴染みがないかもしれません。発音はカタカナで無理やり表記するとバードックということになるでしょう。根菜類のroot vegetablesは、root(根)のvegetables(野菜)なので、単語そのままの意味です。
ジャガイモはpotatoで、サツマイモはsweet potatoですが、ヤムイモはyam、キャッサバはcassavaという特別な名前があります。日本の山芋はJapanese yamと区別して呼ばれることもあるようです。サツマイモと区別してジャガイモを表現する場合は、irish potato(アイリッシュポテト)と呼ぶこともあります。
スラングとしてpotatoが使われると、「怠け者」や「だらだらしている」といった意味になります。
知ってるようで知らない事は多い
人間の一生で学べることには限りがあります。この世のありとあらゆることを学び、知らないことが無いという人はいないでしょう。そのため現代の人は、「必要な事」だけを学んでいくものです。今回紹介したイモやゴボウについては、植物や栄養といった事を扱う仕事をしている場合以外は、あまり必要とされない知識でもあり、正確には知らなかったという人が多いかもしれません。
ビジネスシーンなどでは知らないことを正直に伝える事が難しい場合もありますが、人生の中で知らないことがある事自体は普通の事で、何ら恥ずべきものではないはずです。恥ずかしいのは「知らないことを知ったかぶり」することでしょう。ただ、知っているつもりなのに、考えてみたらよく分からないということも多くあるものです。恥ずかしい思いをする前に、正確な情報を学んで覚えておきたいものです。
幸いな事に、現代はインターネットを通じて簡単に様々な情報を得ることができる時代です。隙間時間に少し調べるだけで疑問を解消することができるので、気になったことはそのままにせず、是非調べてみてください。本サイトでも面白い雑学関連の話題を記事にしていますので、時間のある方はそれらもみていってください。
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