データベースというと、IT業界に関りがない人でも聞いたことがあるほどに、とても有名で重要なIT技術なので、聞いたことがある人も多いかもしれません。現代は情報化社会と言われるほどにIT技術の活用が進み、一般の利用者の人が思っている以上に、私たちの生活の中にデータベース技術が活用されています。
今回の記事では、特にIT業界を目指して就職活動をしている方や、現在IT業界で働いていて新しい技術の習得をしたいと考えている方を対象に、オススメの分野であるデータベースについて紹介しています。是非、自己投資する分野の選択や、就活に向けての勉強の参考にしてみてください。
データベースとは
データベースとは、大量のデータを効率よく扱うことを目的として制作されたシステムやソフトウェアの事を指しています。
IT社会とか情報化社会と表現されることがあるほどに、現代の社会では多くの情報を扱うようになっています。多くの情報を効率よく扱うために、データベースの重要性は高まり続けています。ハードウェアやソフトウェアが高性能になるに伴って、さらに多くの情報を短い時間で処理することが可能となり、より便利なサービスを利用者に提供できるように進化していっているのです。
データベースは、IT業界では非常によく利用されている技術ではありますが、勤務先の企業や担当している部署によっては取り扱いがない場合や、他の人が担当しているといった場面も少なからずあるでしょう。
ここでは意外と身近なところで活躍しているデータベースというものが、実際にはどういったものなのか簡単に紹介しています。
データベースはソフトウェアの一種
そもそもデータベースというのはイメージしにくい単語かもしれませんが、一種のソフトウェアの分類だと思って問題ありません。データベースは名前の通り、データを扱うことに特化したソフトウェアです。WindowsやMacなどのコンピューターに、アプリケーションをインストールするように、IT技術者がデータベースのソフトウェアをサーバー等のコンピューターにインストールする、といったイメージで使われます。
データベース製品にはいくつかの種類があって、無料のものも有料のものもあります。
IT業界では有料な製品が選択されていると思われがちですが、意外と無料な製品も多く選択されています。無料のデータベース製品であっても機能や性能は十分に高く、世界的に信頼度が高いものが多いのもデータベースというソフトウェアの特徴の一つです。Linuxと同じように、有料な製品は機能面で優れているでなく、トラブル時などに提供元のサポートが受けられるという大きなメリットもあります。
現代は、学生時代にデータベースに触れてみたいと考えている人でも、インターネットに接続されたパソコンさえあれば、無料でダウンロードして簡単に勉強を始められるという、とても恵まれた時代です。一方で、企業の採用などでは、「簡単に始められるのに行動していない」ということが減点項目に挙がることもある時代とも言えます。
身近に活用されているデータベースを含むサービス
データベースという名前は聞いたことがあっても、実際にその製品を目にしたり触ったことがある人は多くないでしょう。通常データベースはソフトウェアやサービスの裏側、つまり制作しているIT企業が扱っている領域にあるもので、一般利用者の目には見えない部分にあるからです。
データベースを活用したソフトウェアの代表としては、AmazonのようなEC(ネットショッピング)サイトが挙げられます。ECはデータベースの塊のようなシステムで、商品や販売者、売り上げ返品履歴など、ほぼ全ての情報がデータベースで管理されていて、利用者が見ているのは「データを人間が判断しやすいように整形した画面」ということになります。
その他にも、Googleの検索のような「データを検索して何かの結果を得るシステム」や、X(旧Twitter)のような「データを登録して履歴を閲覧・共有するようなシステム」の多くも、扱うデータをデータベースで管理しています。今読んでいただいているこの記事についても、データベースに登録された情報を元に生成されています。
今のインターネットを中心とした情報社会では、データベースを避けて通ることが難しい程に、データベースは満ち溢れています。
基本的なデータベースの構造
基本的なデータベースのイメージが湧いたところで、もう少し具体的にデータベースについて紹介します。
データベースは、テーブル(表)とカラム(列/項目)といった表形式を基本とした構造になっています。Microsoft Excelなどの表計算ソフトを利用したことがある人であれば、イメージしやすいかと思います。
通常、一つのデータベースには、複数のカラムを持ったテーブルを複数定義して、それぞれのデータを蓄積し、検索・抽出・更新といった操作を行っていきます。とてもシンプルな構造なので直感的に理解しやすいと思いますが、シンプルだからこそ技術力の差が顕著に表れる分野でもあり、とても奥深い世界です。
SQL – データベースへの問い合わせに使う特殊な言語
データベースはデータを扱うソフトウェアで、データの保管に関する構造は前述した通りテーブルやカラムといった表形式となっています。データの登録から検索・抽出といった操作には、SQLという問い合わせ言語が利用されます。(厳密にはSQLに対応していないデータベースソフトウェアも存在しますが、ここでは言及しません。興味のある方は是非調べてみてください)
SQLという言語をすべて紹介することはできませんが、ここでは簡単にどんなイメージのものかをご紹介します。基本操作として以下のようなコマンド(命令)があります。
- INSERT (登録)
- UPDATE (更新)
- DELETE (削除)
- SELECT (選択)
これらを使って様々なデータ処理を行っていきます。複数のコマンドは結果を連結することができて自由度は非常に高く、発想や工夫次第で結果は同じでも処理速度やプログラムの複雑さなどが変わってくるため、優れたデータベースエンジニアがいるとソフトウェアの品質向上につながりやすいです。
少し余談ではありますが、プログラムで実現すると2~3日の作業となるような内容を、データベースの工夫で1時間程度で解決してしまうといったことが容易に起こる世界で、プログラムと比較して簡素で安定しているデータベースによる実装は、品質面でもコスト面でも非常に優れています。
SQLは、通常サービスやアプリケーションといったプログラムから実行されていますが、データメンテナンスなどの作業では、エンジニアが直接データベースに打ち込んで実行する場合もあります。
表計算ソフトとの大きな違い – リレーション
データを管理するソフトウェアとして代表的なものには、MicrosoftのExcelやGoogleのSpread Sheetなどがあげられると思います。これらは、データを表形式でまとめて特定の計算を自動で行うなど、現代の業務では多くの業種・職種で欠かせないソフトウェアとなっています。
データベースも同じように表形式でデータを管理しているのですが、構造上の大きな違いとして「リレーション」が挙げられます。
これは複数の表を関連付けて管理するという構造で、表計算ソフトでも類似した計算を行うことができます。ただ、データベースのリレーションの便利な所は、問い合わせ言語のSQLを利用することで、表計算よりも圧倒的に大規模で複雑な構造のデータを、容易に素早く扱えることにあります。
リレーションを蜘蛛の巣のように張り巡らされた複雑なテーブルから、必要な情報を一つのSQLによって一本釣りしてしまうようなイメージです。
現代のIT現場では、スマートフォンアプリのような小さなデータを扱うソフトウェアにおいては、データベース利用の是非について検討を行うことがあります。件数が少ない単純なデータであったとしても、SQLによる優秀な検索機能や、プログラムから簡単に制御可能な様々な計算機能を目的として導入されるケースも多いです。
IT業界でのデータベースの扱い
ここではIT業界で扱われているデータベースについて紹介しています。これからIT業界に入ろうと考えている就職活動中の人や、データベース技術を習得してキャリアアップを目指そうと頑張っているエンジニアの方々は、是非参考にしてみてください。
データベースサーバーとデータベースという言葉
データベース製品の多くは、サーバーというサービスを提供するコンピューター上に配置され、大量のデータを管理するといった機能を提供するという形態をとっています。サーバーという単語が少しややこしいのですが、言葉の意味としては「サービスを提供する機器やソフトウェア」となります。
データベースはその性質上、「ソフトウェアとしてのサーバー」としての役割も持ちつつ、「機器としてのサーバー」上に配置されることがあるため、IT業界内では「データベース」も「データベースサーバー」も両方とも使われる言葉です。
データベースの話をする上で、「サーバー」を付けて話す場合は、特に稼働している機器やサービスの提供に関して強調した意味合いで使われることが多いです。単にデータベースというとソフトウェア内でのデータの扱いや、データベース製品の事を一般的に指すことが多いでしょう。
ただし、上述の「サーバー」の意味を包括して単純にデータベースと呼称することもありますので、結局のところは文脈から何を指しているのかを判断する必要があるでしょう。
利用頻度の高い主要なデータベース製品
ここでは、IT業界でソフトウェアを制作していく過程で、選択されることが多いデータベース製品を紹介しています。以下は執筆時点(2024/07)のデータベース製品のシェア推移グラフです。
参考 : historical trend of the popularity ranking of database management systems
殆どが「サーバー機器」上で24時間稼働してサービスを提供する「データベースサーバー」に該当する製品です。ここではサーバー機能を持たないものとして、一つだけですがSQLiteを紹介しています。
Oracle
有償のデータベースとして名実ともにシェアNo.1の超有名製品です。歴史も長いため実績も多く、大規模なシステムの構築の時には必ず名前を聞く製品の一つです。
データベース技術者の技術力を証明する日本の国家資格として「データベーススペシャリスト試験」というのがありますが、Oracleも独自の技術者試験「Oracle Master」を実施しているのも大きな特徴と言えます。データベーススペシャリストは、情報系国家資格の中でも特に高難易度の高度技術者試験に分類されていて、IT業界の中でも取得している人は多くありませんが、Oracle Masterは難易度が設けられていることもあって、自分の実力を証明する目的などで取得している人も比較的多く、IT現場でも一定の評価を得ています。
本格的にデータベースを中心にエンジニアとして活躍することを考えるのであれば、現状Oracleを避けて通ることは難しい、という程とても重要な位置付けの製品です。
MySQL / MariaDB
無償のデータベースの代表格と言えば、シェアの高さでMySQLを挙げる人が多いのではないでしょうか。近年では、MySQLをベースに独自に開発が進められているMariaDBも非常に利用されることが増えてきています。
MySQLの最も強い印象は「実行速度」で、扱うデータ量が多い場合や複雑な構造をしているデータを早く処理しなければならないような環境において、採用されることが多い傾向にあります。
ただ、MySQLから派生したMariaDBが頭角を現していることからも分かるように、MySQL自体には大きな欠点があり、それが「ライセンス」です。MySQLのライセンスはGPLと呼ばれる形態で、MySQLはこの中で「無料で利用できるけど利用していることを明記」する必要があるとしています。そのため、個人で勉強で使う分には何の影響もありませんが、企業によってはこれを敬遠して採用候補から外れるということが起こったりします。MariaDBは、MySQLから分離して開発が進められており、ライセンス上利用の表記が必要がなく、機能的な改善点も多いため、近年利用者が延びているようです。
PostgreSQL
無償のデータベースとしては、MySQLに一歩シェアが及ばないものの、広く利用されているのがPostgreSQLです。MySQLと比較すると機能的には遜色がなく、ライセンスなど面倒な問題を抱えていないことから、大小問わず多くのシステムで採用されます。
特に個人や中小規模のウェブサイトなどの受託制作などでは、IT企業側からは「無償で制限がない」ということで発注先へ説明や推薦が容易で、発注している企業側としても初期費用や運用費用がかからない点も含めて懸念事項も少なく、安易に選択されやすい傾向があります。
IT現場ではLinux上でサーバーとして利用されるのが一般的ですが、Windows上で動作する分かりやすい無償の製品があるのも特徴で、開発はWindows上で行って、本番はLinux上のサーバーという住み分けも行われることがあります。
これから勉強を始めたいけどお金を掛けたくないといった人は、まずPostgreSQLから始めてみるのも良いかもしれません。
SQL Server
データベースとしてはOracle/MySQLと上位争いをしている製品であるSQL Serverは、Microsoft Windows上でのみ動作します。一般の人が利用しているWindowsにはServer用途で販売されているWindows Serverという製品があり、その中で動くことを想定して作られたデータベースがSQL Serverです。
他のデータベース製品と違って、多くの人が日常的に利用しているWindowsの操作性のままにデータベースの処理が行えるというメリットは大きく、技術者の教育コストなどIT企業側でのメリットは計り知れません。一方で導入する企業側としては、Windows Server自体が高額な上に、更にSQL Serverにもお金が必要となるため、目が飛び出るほどの初期費用が必要になるという、強力なデメリットがあります。
それでも導入する企業が多いのは、Microsoftへの絶大な信頼と、扱いやすさが影響していると考えられます。特に、IT企業から納入されたシステムを社内で運用する場合、社内のシステム部門への教育費用が抑えられる点は大きいでしょう。
これからデータベースの勉強を始める場合、Windowsに慣れ親しんでいるためSQL Serverを選びたくなるかもしれませんが、個人で勉強することを目的とするのであれば、現状オススメしにくい製品です。ただ、導入実績は間違いなく多いので、実際の開発現場などで出会うことはあるかもしれません。
SQLite
最後に紹介するSQLiteはデータベースサーバーではなく、データベースを管理するソフトウェアの一種(データベースエンジン)で、特に近年目覚ましい発展をしているスマートフォン業界で利用されることが多い製品です。
データベースサーバーと違い、巨大なサーバー機器を準備する必要がなく、製作したプログラムに同梱して配布することで、各端末内で簡単にデータ処理機能が実装できるということで、採用されることが多くなっています。
将来的にスマートフォンのアプリ開発をしたいと考えている人は、使い方などを学んでおいて損がない製品ではありますが、データベース技術としては限定的で偏った知識になってしまうので、できれば他の製品をメインに据えて勉強し、SQLiteは補助的な物として勉強するのがオススメです。スマートフォンでの活用が増えていると言っても、それは「端末内で処理するもの」に限られます。ネットワーク経由で他の利用者と情報を共有したり、商品を注文するといったアプリなどでは、上述のようなデータベースサーバーを利用または併用されています。
IT業界で働くエンジニアとデータベース
ここでは、IT業界で働くエンジニアがどのような形でデータベースと触れ合っているのかについて紹介しています。
もちろんIT企業は様々なので、実際には企業によって当てはまらない場合も十分にあります。例えば組み込み系と言われる小さな電子機器のようなソフトウェアを制作するIT企業では、大規模なWebシステムを制作している企業に比べてデータベースを扱う機会は少ないでしょう。
就職や転職を機にデータベースを勉強しようと考えている場合などは、目標としている企業の製品や取引先などの情報から、データベースの知識が必要とされるかどうかを見極めることも重要です。以下は比較的多いデータベースを扱うソフトウェアと触れ合うエンジニアの一例として、参考にしてみてください。
データベースの利用はエンジニアの日常
データベースを扱うソフトウェアは多く、新しく制作することになったソフトウェアではもちろんの事、過去から長い期間運用を続けているソフトウェアやサービスなどでも活用されていることが多く、一つの仕事が終わっても、次の仕事でもデータベースを扱う、ということは多くあります。
新しいソフトウェアの場合は、必要な要件から扱うデータの構造設計などから行われて行くのに対し、既存のシステムの拡張などでは現状のデータベース設計を見直しながら、拡張する方針を決定していくことになります。
既存システムから学べることは多い
データベースの経験が少ないうちは、上司や先輩が設計して筋道を示してくれることが殆どだと思うので、最初から大規模な設計を任されて大変な思いをすることは少ないと思います。ただ、自分には関係ないと思うのではなく、興味を持って全体を把握しようと努力する姿勢は大事です。既存のプログラムからも学べることは多いですが、既存のデータベースの設計はノウハウの塊で、お金を払っても学習が難しい貴重な勉強素材です。
大規模なデータベースは本のような設計書が山積みになっていることも多く、全体を理解するのに長い時間が必要となるかもしれませんが、少しづつでも理解していくと、自分が設計することになったときに、必ずその知識は役に立ちます。
データベースの設計・構築は、高度な知識や経験が求められる
データベースの設計は「ソフトウェアにおける心臓部」と言っても良い程に重要な位置付けで、その品質によってプログラムの制作期間/コストも左右され、出来上がったソフトウェアの品質自体にも影響します。
そのためデータベース設計業務は、多くの場合経験豊富なエンジニアが担当せざるを得ず、後継者を育てるのが非常に難しい分野でもあります。
愚者は経験から学ぶと言われることもありますが、データベースの設計は経験と知識が何よりも求められる部分があり、経験や実績がない場合は、そもそもその仕事を担当させてもらえないかもしれません。そのため、最初の方で紹介したOracle Masterのような資格を肩書に持っていると、信頼に繋がりやすい分野でもあるわけです。
将来的に手堅いデータベースの分野でエンジニアとして活躍することを考えるのであれば、個人の勉強と共に、日々の仕事を着実にこなしながら先人たちのノウハウを吸収していき、少しづつ信頼を積み上げていくという地道な努力が何よりも大事です。
IT業界で役立つデータベースを勉強しよう
現在の日本はIT後進国と言われることがありますが、とにかくIT技術者が足りていない状況が続いています。技術者希望でIT企業の門をたたく人の多くは未経験で、学校で少しプログラムに触れたという程度の人が多い中、独学ででもデータベースを含めた勉強をしているやる気のある人は輝いて見え、採用される確率も高くなるでしょう。
また、既にIT企業で働いているエンジニアの方も、データベースは先輩の仕事と割り切るのではなく、興味を持って是非少しづつでも触れていってみてください。その会社の中だけでなく、将来キャリアアップで転職をするときにも、きっとその知識はあなたの役に立ってくれるでしょう。
今回はIT業界でより活躍するために、データベースの勉強をオススメするという内容でした。この記事を見て少しでも興味を持ってくれた方がいれば嬉しい限りです。