就活シーズンになると、毎年多くの人が自分のやりたい仕事を選んで、真剣に将来の事を考えながら就職先を選びます。企業の製品や実績を調べたり、面接での自己アピールの練習をするなど、採用試験の対策を頑張っている人も多いでしょう。
今回は、主にIT企業を希望している新卒(学生)を対象に、IT企業での「残業」について紹介しています。就職するとなると、仕事の内容だけでなく、給与などの待遇や働く環境なども大事です。説明会などでは情報を得にくいリアルな事情と共に、残業を回避するためのアドバイスも紹介していますので、職種選びなどに活用してください。
「説明会と違う実際」に戸惑う新社会人
就職活動時期になると、様々な場所で就職説明会や企業説明会といった催しが開催され、新卒の学生たちは実際の企業の人たちの話を聞く機会が得られます。
説明会では、企業は自社の良い点をアピールすることで、多くの応募者を獲得しようとしますが、過去の実績や得意な分野、昇給や福利厚生など、就職活動をしている人たちが気になる点を短い時間でまとめて紹介してくれるため、学生たちにとっても就職先を選ぶことに役立ちます。
しかし、決められた時間内ですべての事を網羅して説明することはできません。質問の時間が設けられている場合は、気になる点は確認しましょう。
希望する会社については「しっかり確認」しよう
近年では、新入社員が初出社から数日で会社を退職してしまうケースも少なくないようです。理由のひとつには、「入社してみると社員が残業していた」といったものがあるようです。
説明会などでは、企業側が不利になる情報は「伏せておく」ということもあるでしょう。嘘をつくわけではなく、あえて話題にしないのです。また、部署によっては残業がないということを、あたかも全社的に残業がないように紹介するといったこともあるでしょう。
想定と実態が異なっていたら、継続して勤務することが難しいと考えるのも当然です。無理して働き続ける必要はありませんが、貴重な「新卒」のステータスを失う事にもなり、再就職は当然不利になってしまいます。そうならないためにも、説明会などの機会を活用し、しっかりと確認を取るようにしましょう。
IT業界で残業が多い職種
IT業界は、他の業種に比べると比較的残業が多いかもしれませんが、すべての職種で残業が発生しやすいかというと、そんなことはありません。
IT業界に入る前には、どういった職種が残業になりやすいかは分かりにくいものです。ここでは、仕事の性質上どうしても残業になりやすい職種を紹介していますので、是非参考にしてみてください。
プログラマー – 時間ではなく成果を求められる職種
プログラマーという職種は、IT業界のエンジニア職のひとつで、プログラミング言語を使ってソフトウェアを製作するのが主な仕事で、それに付随した打ち合わせや資料作成なども行います。

プログラミングには人数が必要ですが、経験を積んだプログラマーは上流工程のエンジニアへとステップアップしてくことも多いため、毎年多くの募集がかかる職種でもあります。
「プロのプログラマー」には納期や期限がある
社会人の仕事には色々な種類がありますが、プログラマーのような製造に近い仕事の場合、必ず「納期」と呼ばれる期限が設けられます。請け負った仕事を、いつまでに終わらせるかという約束事です。
通常「納期」というと、顧客との間で取り交わす約束(契約)である場合が多いですが、上司や先輩との間にも、仕事の期限を設けるのが一般的です。それらを組み合わせることで、全体の製作日程(スケジュール)が作られていて、最終的にはソフトウェア全体が決められた日程で完成するようになっています。
企業やプロジェクトにもよりますが、基本的にスケジュールは自分も合意した上で作成されます。自分の実力でかかる日数を要求し、その日程で納期や期限が決められることになります。
プログラマーという製造職の「責任と残業」
プログラマーの残業は、自分の作業がスケジュール通りに作業が進んでいない時に発生することがほとんどでしょう。他の職種と違って、他人の病欠などのせいで残業になるということは少ないかもしれません。他人の領域を引き継ぐのは、作業効率も悪く、全体品質の低下にもつながりやすいので、基本的には自分で責任をもって処理します。入院などの「やむを得ない長期休暇」などの場合は、人員構成やスケジュールも含めて、顧客にも説明して納期や契約内容の見直しがされることもあります。
休みを取っていなくても、自分の作業ミスや、見積もりが甘かった場合などには、スケジュールに遅れが発生します。仕事が進んでいなくても、納期(期限)は迫ってきます。自分が約束したスケジュールなので、基本的には自分で解決しなければならず、それが「残業」となるのです。それがプロの仕事の責任ということになります。
残業の少ないプログラマー
プログラマーの仕事で残業を減らすのであれば、余裕のあるスケジュールを組むか、慣れた仕事だけを請け負う必要があるでしょう。そうすれば、決められた日程で悠々仕事ができます。
しかし、過度に余裕のあるスケジュールは現実的ではありません。人間の稼働日数・時間は、そのままコストということになります。同じものを作るならコストが少ない方が良いものです。他のIT企業や、他のプログラマーの方が短い期間で作ることができるなら、あなたに仕事を頼む人はいないでしょう。
慣れた仕事だけを請け負うことも難しいものです。決まりきった仕事を繰り返すだけであれば、高額な正社員を雇わずにアルバイトにさせておけばよいのです。ただ、企業によっては似た様な製品の製造を続けることで、仕事の効率を上げ、スケジュールの不安要素を極力排除することに注力している場合もあります。そういった「得意分野」がある企業では、比較的残業は少ないかもしれません。仕事の起伏が少なく単調な代わりに、安定した勤務時間を得られる可能性があるでしょう。
ITインフラ – 24時間稼働するサービスを支える技術者
ネットワークやサーバーといった「サービス提供の基盤」のことを、IT業界ではITインフラまたは単にインフラと呼びます。(インフラストラクチャ : Infrastructureの略語)
IT企業の募集職種には、ネットワークエンジニアやサーバー技術者といったインフラに関連したものがあります。一般的には、プログラマーのような製造職と比べて給与は高額な場合が多く、中途や経験者限定となっている場合もあるでしょう。

対象業務は、新規サービスの設計構築や、稼働中のサービスの運用保守といった、専門とするインフラ機器に関連した内容になります。プログラマーなどのITエンジニア職からキャリアアップしてなっている人も多い職種でもあります。
技術も業務も安定したITインフラ分野
現代のITインフラの中心は、インターネットに接続されたサーバー機器で、サーバー機器内で稼働しているWebやDatabaseなどのサーバーソフトウェアがサービスを提供しています。こういった技術には歴史があり、IT業界では珍しく目新しい技術よりも安定性が重視される分野のひとつです。
一度覚えた技術が長く役に立つ分野で、勉強などの自己投資が少なくて済む上に、高い給与を貰えるため、ITインフラを勧めるような就職アドバイスを見かけることも多いでしょう。実際、プログラマーのようなスケジュールに追われる仕事に比べると、安定した仕事をしていることが多い職種でもあります。
しかし、高い給与には理由があるものです。ITインフラには「絶対に止めてはならない」という重大な責任が付いてきます。プログラマーのスケジュール遅れとは違い、止めた場合には損害賠償など企業の責任問題にもなり、規模によっては障害情報としてニュースになってしまうこともあるでしょう。
ITインフラの深夜残業や不規則な勤務
ITインフラの日常業務は安定していますが、仕事の節目には「計画的な深夜残業」がある職種でもあります。新規サービスの開始や、定期的なメンテナンスなど、利用者が寝ている時間に作業しなければならない業務があるため、計画的に深夜作業のスケジュールを組むことがあります。一般的には深夜残業の翌日は休みになったり、午後出社といった措置がとられることになります。ゆっくりとした通勤は混雑もなく快適ですが、不規則な勤務体系は意外とつらいものです。
また、突発的な障害などの対応では、緊急呼び出しや徹夜作業などもあるような仕事です。急にサーバーにアクセスできなくなった場合などは、例え深夜帯であっても出社して原因の調査と復旧作業が必要になります。プログラマーに起因する障害(いわゆるバグ)というものは、計画を立ててじっくり対応することも可能ですが、ITインフラの障害は一分一秒を争います。企業によっては、毎日の深夜対応を「当番制」にしていたり、完全に外部委託していることもありますので、事前に企業の対応方針については確認しておきましょう。
ITエンジニアになる「心の準備」をしておこう
IT業界に新社会人として就職することを目標に頑張っている人も多いでしょう。自分の好きなコンピュータに関連した仕事、自分の得意なプログラミングの能力を活かせる仕事に就きたいと考えて、本気で就職活動している学生も多いです。
この記事を読んでいる人には、これからITエンジニアを目指す人、初出社を目前に不安と緊張を抱えている人など様々な立場の人がいるかと思います。実際に入ってから戸惑う事のないように、ITエンジニアの仕事が夢ではなく現実として考え、しっかり「心の準備」をしておきましょう。
最初は怖い「責任のある仕事」
IT業界に入って仕事をし始めたころの事を思い出すと、多くのエンジニアは「怖かった」といった印象があることでしょう。自分に任された仕事が終わらなかったらどうしようとか、もし失敗したらどうなるのだろうと不安に思い、時間が経ってもその緊張感はなかなか忘れられません。自分に仕事を任されて嬉しいと同時に、これがプロの仕事・責任なのだと痛感するものです。

多くのITエンジニアは、新人の頃に「抱え込む」という代表的な失敗をしてしまいます。これは自分の責任だから自分で何とかしようという「やる気」や「責任感」から起こるもので、真面目な人ほど致命傷となる皮肉な失敗でもあります。
自分で解決困難な場合は上司や先輩に相談しよう
ITエンジニアに責任感があることは良い事です。ただし、プロとして仕事をするのであれば、「結果」が良いものであることが最重要であるべきです。自分の力で解決し、問題を乗り越えることができれば最善ではありますが、それが困難だと感じた時は「早めに上司や先輩に相談」しましょう。
よく「ほうれんそう(報連相)」は仕事の基本と言われることがあります。これは「報告・連絡・相談」をまとめて作られた言葉で、IT業界や新人に関わらず、社会人が仕事をする上で重要な事として、新人研修などで教える会社も少なくありません。
「ほうれんそう」が残業回避に役立つ
ITエンジニアにとっても「ほうれんそう」は大事です。今回紹介したプログラマーやITインフラ技術者にとっても非常に重要です。社会人になりたての頃は、どういったタイミングで「ほうれんそう」すれば良いのか判断に困ることも多いので、以下に簡単な目安を紹介します。
「ほうれんそう」をしっかりしておけば、仕事の段取りは格段に良くなり、残業を減らすことにも役立ちますので、是非参考にしてみて下さい。
「報告」して楽になろう
仕事の進捗や経過を具体的に伝えます。最初のうちは毎日業務終了時に「今日の作業報告」をすると、残業せず帰宅しやすいかもしれません。日中でも何か大きな節目を超えたら(部分的な実装を終える等)、その旨を簡単に伝えるだけでも、上司は安心するものです。
面倒に思うかもしれませんが、上司はあなたよりも状況判断に優れています。あなたは大丈夫だと思っていても、報告内容を聞いて危険だと察知すると、上司は直ぐに方針転換(スケジュールや人員の調整)を決断することがあります。逆に言うと、「報告をした後は上司の責任」でもあります。自分の責任を少しでも軽くするためにも、報告は細かくするようにすると良いでしょう。
「連絡」が漏れると危険
予定にはない突発的な変化があった場合には、その旨を伝えましょう。他の人に何かを指示されたとか、急な会議を入れられた等は、上司にも情報を共有します。
変更を知らない上司が誤った判断をしてしまうと、連絡漏れしていた貴方の責任になってしまいます。連絡がないということは、予定通りの作業をして、予定通りの進捗が得られていると想定されます。事後報告で遅れを報告してしまうと間違いなく叱責されることになります。納品が間に合わない事態にでもなったら、上司だけでなく会社の責任まで問われることになってしまいます。
迷った時はどんどん「相談」しよう
報告や連絡が必要な場面かすらも分からず、判断に迷うようなことがあれば、迷っている事自体も含めて「相談」しましょう。上司が必要とする「報告」「連絡」の種類は、人によっても違うものです。話し合って認識を合わせると、お互い仕事を進めやすくなるでしょう。

ITエンジニアの場合、仕事の内容についての相談をすると、技術的な面でアドバイスを貰えることも多いです。自分の知識では大変な事が、経験豊富な先輩や上司にとっては簡単ということはよくあります。常識となってしまっている上司は教育の必要性に気付かないこともあり、部下や新人の方から相談することが結果として会社全体の役に立つこともあるのです。
「ほうれんそう」は、基本的には「多いほど良い」ものではあります。多すぎた場合は、上司も笑顔で「そんなには必要ない」と指摘してくれるでしょう。逆に「少なすぎる」と怒られることになるため、匙加減が難しいですが、迷った時は「話す」方を選んでおけば、概ね安泰です。
残業回避のために「頑張る」のもアリ
「ほうれんそう」をしっかりすれば、状況を的確に判断できる上司が、適切なアドバイスをしてくれることになるので、それらは残業を回避することに役立ちます。ただし、自分の失態に対しては責任を問われ、残業を指示されることもあるでしょう。
残業指示をされないためにも、仕事に集中し、日々自分を高める意識を持ちましょう。「残業は嫌だ」という気持ちが自身を成長させる糧にもなるものです。
「自分が納得する職種」を選ぼう
IT業界に限りませんが、残念ながら仕事によって残業しなければならない場面というものはあるものです。発売やリリースのスケジュールを遅らせたり、契約で決められた期日に納品しなくてもよい仕事というものはなく、それらを頑張って支えてくれている人がいるから、私たちは日々の生活の中で良い品質のサービスや製品を使うことができているのです。
残業は誰でも嫌なものですが、能力や経験を高めたり、仕事の進め方を改善するなどで、減らすことができるものでもあります。今回紹介したように、職種によって残業が起こりやすい仕事とそうでないものもありますので、就職活動での職種選びは慎重に行い、「自分の納得する」仕事を選びましょう。
残業するような会社は嫌だと思うかもしれませんが、同時に責任のある仕事を任せてもらえるという側面もあります。責任の少ない歯車のような役割に徹するのが良いか、責任をもって自分の力で成し遂げるのが良いか、決めるのはあなた自身です。
入社した後に、どうしても仕事を辞めたいと考えている人は、是非以下の記事などもご覧ください。仕事だけが人生ではありませんので、無理をせず、自分の時間を大切にしましょう。
コメント