「濃い・薄い」という形容詞は日本語と英語で「言葉の範囲」が違っており、訳そうとすると少し複雑なことになります。今回は、日常会話などで使われることが多い「味」や「色」などについて、英語ではどのように表現するのかをまとめて紹介します。
複雑な日本語の濃い・薄い
「濃い」や「薄い」を英語の辞書やネットで調べると、様々な単語が表示されてきて困惑することになります。
日本語と違い、英語で「濃い」と表現する場合は、対象の物や状況によって単語が使い分けられます。
日本語の「濃い・薄い」は、対象や状況が変わったとしても、同じ言葉で表現可能なものが多くあります。日本語で「濃い・薄い」と表現するものには、以下のようなものがあります。
- 味
- 色
- 髪や髭
- 霧や化粧など
日本語でこれらのことを濃い・薄いと表現しても何の違和感もありませんが、英語ではそれぞれの状態を違う単語で表現しますので、順番に見ていきましょう。
英語での「味」の濃い・薄い
食べ物の「味が濃い・薄い」を英語では、strong / weekで表現します。
味が濃い | 味が薄い |
---|---|
strong | weak |
英語では、食べ物の味付けが「濃い・薄い」という状態を、味のパンチの強さからなのか、strong/weekという力強さを表す言葉で表現します。
例文を確認してみましょう。
英文 : This Miso soup is too strong for me.
和訳 : この味噌汁は私には濃すぎます。
外国から来た友人と食べ物屋さんなどに訪れた場合などでは、味付けの「濃い・薄い」を選べたり、味付けについて会話したりといったシチュエーションは十分あり得るでしょう。
辛いことをspicy、甘いことをsweetというような「味の表現」については、多くの日本人でも馴染みがある気がしますが、味が濃い・薄いという表現であるstrong / weekについては、意外と知らない人も多いような気がします。
英語での「色」の濃い・薄い
デザインのお仕事をしている人や、ファッションに気を付ける人達が使うことが多いと思われる「色が濃い・薄い」という日本語は、英語では「dark / light」を使って表現されます。
色が濃い | 色が薄い |
---|---|
dark | light |
色の濃い・薄いは、日本語の「暗い・明るい」と意味合いが近く、英語ではdark / lightと表現します。
英文 : The print is too dark.
和訳 : この印字は濃すぎます。
日本でのダークやライトというカタカナ語は、「明るさ」を意味する言葉として使われていますが、英単語としては色合いが「濃い・薄い」という意味でも使われます。
日本語では、「暗い」と「濃い」には意味合いに大きな隔たりがあり、違う状態の事を指しますが、英語ではそれらは同じ単語で表現します。
日本語の「濃い・薄い」は対象が広いため、「暗い」と「濃い」には違いがありますが、「色合い」についてだけ考えると、暗いと濃いは英語表現の様に似た様なものなのかもしれません。
英語での「髪や髭」の濃い・薄い
日本語では、髪や髭の事も「濃い・薄い」と表現します。毛のような密集度合いを表す濃い・薄いという状況は、英語ではthick / thinで表現します。
髪や髭が濃い | 髪や髭が薄い |
---|---|
thick | thin |
密度が濃い状態の事を指す場合はthickと表現します。(逆はthin)
液体がドロドロして密度が高いような場合は上述のstrongのイメージで、森の木々のように空間上に散在しているものの密度が濃い場合はthickというイメージです。
thick / thinというのは、元々分厚い(太い)・薄い(細い)という意味の言葉です。日本人には少し覚えにくいthickとthinについては、以下の記事でも解説していますので、是非参考にしてみてください。
毛が「濃い・薄い」についての会話は、どちらも良い気持ちがしない気がしますが、例文としては以下のようなものが挙げられます。
英文 : He has thin hair.
和訳 : 彼は髪の毛が薄いです。
上記例文では、thinが「細い」の意味もあるため「髪の毛が細い」とも読み取れそうですが、通常この文脈では「薄い」と読み取ります。
髪の毛が「細い」を表現する方法 – 「薄い」との混同回避
髪の毛が「細い」と表現しようとしてthinを使ってしまうと、「薄い」という違う意味で伝わってしまう可能性があります。
髪の毛一本一本が「太い・細い」を表現しようとする場合、少し工夫して以下のように表現すれば意味が伝わるでしょう。
英文 : Your every single hair is thin.
和訳 : 髪の毛一本一本が細いですね。
上記英文では、全体の状況が薄い(thin)なのではなくて、毛の一本一本(every single)と付けることで、細い(thin)という意味合いになるように工夫してあります。
会話の中で使う場合には、異なった意味で伝わらないように注意して使いましょう。
英語での「霧」や「化粧」の濃い・薄い
日本語は本当に多くのものを濃い・薄いと表現する言語で、霧や化粧のことも、「濃い霧・濃霧」や「化粧が濃い」のように表現します。
英語では、霧や化粧についてそれぞれ違う英単語を使用して表現します。
対象 | 濃い | 薄い |
---|---|---|
霧 | dense | light |
化粧 | heavy | light |
霧の濃い・薄いはそれぞれdense fog / light fogと表現し、化粧の濃い・薄いはheavy makeup / light makeupと表現します。
どちらも「薄い」方は明るく軽いイメージのlightが使われていますが、「濃い」方は異なる単語が使われるため注意しましょう。
日本語では濃い化粧の事は「厚化粧」と呼ぶため、英語に直訳すると「thick makeup」ということになりますが、英語では濃い化粧のことを「heavy makeup」と表現するので、ニュアンスとしては「重化粧」ということなのでしょう。
違う単語でも意図が伝わることも多い
天気予報などでは「濃霧」の事をDense fogとかDense foggyと表現しますが、単純に「霧が濃い」という日本語を英語に直すと「The fog is thick」で問題なく伝わります。
日本語でも、「化粧が重い」と言われれば「化粧が濃い = 厚化粧」と認識できるように、英語でもある程度ニュアンスや意図は通じます。
thinのように「薄い」と「細い」といった誤用が危ういものは避けたいですが、基本的には間違えることを恐れずに話すことが大事でしょう。
奥深い日本語と多彩な英語
今回紹介した表現以外にも、英語では関係性が濃い・深いをdeep / shallow relationshipと表現するなど、対象や状況によって様々な単語が使い分けられます。日本語の「一対の形容詞」だけをとっても、英語では本当に多くの単語を使い分けていることに驚かされます。
どちらの言語が優れているという話ではなく、日本語は多くの意味を「含んでいる」言葉が多く、それぞれの言葉が「奥深い」とか「趣深い」と感じることが多い気がします。
一方英語は「状況に対して個別に言葉を割り当て」していて、本当に「語彙が豊富」で「多彩」な言語だと感じます。
色々な英単語を勉強して覚え、英会話の中でそれらを使うことも言語習得の醍醐味の一つですが、何気ない日常の中にある言語の違いなどに気づいたり、そこから歴史や文化の違いを知ることが出来ると、それもまた面白いと感じます。是非皆さんも身近なものの面白い言語の違いを探してみてください。