江戸時代には様々な学問や思想が登場します。
事件や出来事について学ぶ際、行動を起こした人たちが学んだ学問や思想を知ると、その出来事や人物についての理解が深まります。また、江戸時代の学問や思想は、その後の歴史の中で形を変えながら、大きなうねりを起こしていきます。
今回の特集では、本サイトに掲載している「学問」や「思想」に関連した記事を紹介しています。
尊王攘夷思想に影響した学問
江戸時代には、朱子学・国学・陽明学・水戸学といった学問が展開しました。
その思想の積み重ねが、幕末に尊王攘夷というスローガンに結びつきます。
単純化すれば、朱子学から水戸学への流れが本筋となり、国学が精神的基盤を与え、陽明学が行動を促した、と整理できます。
尊王攘夷思想に影響した学問
日本という国家を揺るがすようになる「尊王攘夷」思想は、学問・思想の流れを簡単に図示すると、以下のような流れで形成されて行きます。

各学問が尊王攘夷思想に与えた影響を、分かりやすく表にまとめてみます。
| 学問 | 尊王攘夷への火種 | 尊王攘夷思想への役割 | 
|---|---|---|
| 朱子学 | 忠孝の精神(誰に忠義を尽くすのか?) | 幕府権威の正当化 同時に「忠」を天皇へ読み替える下地に | 
| 陽明学 | 行動の哲学(思ったら動け!) | 攘夷運動や天誅へ直結する行動哲学を提供 | 
| 水戸学 | 尊王中心史観(天皇こそ正統) | 尊王思想を体系化し、攘夷論と結合 | 
| 国学 | 日本固有の道(外来は退けよ) | 外来思想を退ける攘夷論の思想的根拠に | 
各学問の基本情報
江戸時代には、蘭学や心学など、他にも多くの学問や思想がありますが、本特集では尊王攘夷思想に繋がる以下の四種類だけを扱います。
- 朱子学(しゅしがく)
- 江戸幕府が正統とした儒学の一派。
 秩序と上下関係を重視し、武士の統治理念を支えた。
 
- 江戸幕府が正統とした儒学の一派。
- 陽明学(ようめいがく)
- 中国の王陽明が説いた儒学の一派。知行合一を唱え、実践を重視。
- 大塩平八郎や幕末志士の行動原理となった。
 
- 水戸学(みとがく)
- 水戸藩で『大日本史』の編纂を通じて生まれた学問。
- 尊王思想を打ち出し、大義名分論を強調。
 幕末には「尊王攘夷」というスローガンへとつながり、動乱に大きな影響を与えた。
- 桜田門外の変は、水戸学に強く影響を受けた水戸浪士を中心に起こされた
 
- 国学(こくがく)
- 本居宣長らが推進した、日本古典(古事記・万葉集など)の研究。
- 「やまとごころ」を強調し、日本固有の精神を重視。
 天皇中心の尊王思想を支えると同時に、外来を退ける攘夷思想にもつながった。
- 水戸学に思想的な影響を与えた。
 
江戸時代の学問・思想を学ぼう
以下に、江戸時代の学問や思想を理解するのに役立つ記事を紹介します。
まず最初におすすめ – 学問が広がった背景を知ろう
江戸時代の学問といえば、まずは「朱子学」です。
幕府は統治を安定させるため、朱子学を武士階級の正統な学問と位置づけ、昌平坂学問所などで広めました。朱子学の倫理や価値観は、武士教育や藩校を通じて社会全体に浸透していきます。
しかし1700年代に入ると、社会の変化や幕府の権威低下もあって、朱子学以外の学問も広がり始めました。陽明学や国学、蘭学、心学など、多彩な思想が花開きます。
(1790年に幕府は「寛政異学の禁」で朱子学以外を禁止しますが、勢いを止められませんでした)
以下の記事では、その歴史的な背景も詳しく紹介していますので、まず最初に読むことをオススメします。
死すらも受け入れる行動力 – 陽明学に影響した事件
陽明学は儒学の一派ですが、その特徴は「行動主義」にあります。
中心思想のひとつに「知行合一(ちこうごういつ)」があり、正しいと知ったことは、結果が不利でも実際に行わなければ本物の知ではないと説きました。
この考え方は、ときに人々を「死をも恐れず正義を貫く行動」へと駆り立て、歴史に大きな事件を引き起こす原動力となりました。
代表的な事件には、「大塩平八郎の乱」や「桜田門外の変」などがあります。
桜田門外の変は、江戸城桜田門外で大老・井伊直弼が暗殺された事件です。
実行したのは水戸藩の浪士たちで、彼らは「天誅!」と叫んで井伊を討ちました。
この「天誅」という言葉自体は中国古典に由来しますが、幕末にそれが実際の行動スローガンとなった背景には、陽明学の強い影響がありました。
以下の記事では、学問が彼らの行動を正義と信じさせ、暗殺という決断を後押しした心理を明らかにしています。
江戸時代の学問・思想に関する記事
その他、思想や学問に関連した記事には以下のような記事がありますので、是非興味のあるものからでも読んでみてください。
人や出来事の理解が深まり、歴史を知るのも楽しくなります。また、現代においても分からなくなりがちな「日本って何だっけ」という根本的な点を、改めて考えさせられます。
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