2025年の参院選後に増税路線が加速する可能性 – 自公政権の行く末

参院選後の可能性 政治

2025年は米の高騰問題やトランプ大統領の関税の話題など政治に関係したニュースが多く、物価高騰に苦しむ日本国民の声が、SNSなど様々な所で聞かれます。現政権の石破内閣は支持率を低下させ続け、自民党・公明党の政党支持率も下がり続けています。2024年には衆議院総選挙が行われ、2025年は参議院選挙が行われます。日程はまだ分かりませんが、7月までには実施される予定です。

現政権に不満を持っている有権者が、減税政策などを主張している政党を支持し、「参院選で結果を出そう」という呼びかけ等も見かけます。今回はそういった方達に向けて、参院選の後に起こる可能性のある事を紹介しつつ、選挙の重要性について改めて考えてみます。

衆議院と参議院 – 日本の政治体制

本題に入る前に、念のため日本の二院制と法案(法律案)の議決の流れを確認しておきましょう。

日本の国会は、衆議院参議院という2つの議院からなる二院制を採用しています。衆議院は2024年に選挙が実施され、参議院は2025年に選挙が行われる予定です。

各議員の議員数と任期(および選挙)は下表のとおりで、2025年の参院選は3年ごとに行われる「参議院議員の半数」が対象となる選挙ということになります。

議院任期議員数
衆議院4年
解散で地位を失う
465名
参議院6年
3年ごとに半数改選
248名

出典 : 国会の構成 – 衆議院のホームページより

法律案の議決と衆議院の優越

国会で出される法律案は、衆議院と参議院の両方で議論され、それぞれ独立して議決されます。

「法案」と「法律案」の違い
「法律案」は国会で正式な審議(議決)をする対象で、「法案」はその前の審議をしている段階のものを指すことが多いようです。

それぞれ独立しての議決なので、両院の結果が異なることもあります。パターンとしては、以下のようなものがあります。

衆議院で否決された場合

衆議院で否決されたものは、参議院の議決は行われず、その法案は廃案となります。

衆議院で可決、参議院で否決された場合

衆議院で可決されても、参議院で否決されることもあります。その場合は、衆議院で再度議決が行われ、出席議員の3分の2の賛成が得られれば、法案は可決されます。(衆議院の優越 : 日本国憲法第59条)

衆議院と参議院で異なる結果となった場合は、意志の調整を図るための両院協議会が開かれることがあります。両院協議会の委員3分の2の可決が得られれば、再度両院の本議会で議決されます。

出典 : 衆議院と参議院の関係 – 参議院のホームページより

参院選後に起きる事

未来の事は誰にもわからず、ここに記載されていることは可能性のひとつでしかありません。

日本の未来を作るのは、主権のある私たち日本国民です。行動によって変化する未来ではありますが、その行動の先を「予測」しておくことは大事な事ではないでしょうか。起き得ることを想定しておけば、そのための心構えもできるというものです。

参議院で与党が過半数を割り込む – 3分の2の壁

現在の自公政権は、衆議院で過半数の議席を持っていない「少数与党」という状況です。予算や法案など全てにおいて、政府与党は野党と協議して、合意を得る必要があります。2024年の衆院選で、自民党内の結論が国会の結論となっていた体制に、終止符が打たれた形となりました。

2025年に行われる予定の参院選でも、2024年の衆院選と同じような結果となり、参議院の議席も「与党の過半数割れ」という状況になる可能性があります。

通常の場合、衆議院で過半数を得た与党が、参議院で過半数を割り込むと、その国会は「ねじれ国会」と呼ばれます。この名称はメディアによる造語なので、衆議院も参議院も与党が過半数を割り込んだ新しい国会の形が誕生したら、また新たな造語も誕生するかもしれません。

自公政権は、衆議院に続いて参議院でも議席を減らすと、いよいよ「打てる手」が限られてきます

参議院で法律案が否決されてしまうと、衆議院で再度議決が行われます。前述のとおり、「衆議院の優越」が認められた日本の国会においては、衆議院で再可決されればその法律は成立することになります。

ただし、衆議院の再決議では、可決するための議席数は「3分の2」となります。衆議院での再可決をするためには、自公政権は新たな味方を増やさなければなりません。自公と連立して「3分の2」の議席を満たすことが出来る政党は多くありません。

2025年 - 参院選前の衆議院議席数

「自公立」連立政権の可能性

法律案の再可決に必要となる「衆議院の3分の2の議席」は、465議席中の310議席です。政権与党である自民党公明党の議席を合わせると215議席なので、不足している議席数は95議席となります。

自公政権が、新たに95議席を獲得する方法は、大きく以下の2つになるでしょう。

  1. 立憲民主党以外の野党全てと交渉する (102議席)
  2. 立憲民主党と交渉する (148議席)

多くの政党と交渉するのは大変です。各政党と合意を得るために、自民党は様々な代償を支払う約束をしていくことにもなるでしょう。意思統一には、時間も労力もかかることになります。そう考えると、2番のパターンである、「立憲民主党」と交渉して自公立連立政権を目指す形が現実味を帯びてきます。

第二次野田内閣誕生の未来 – 村山内閣の再来

自民党としても、長く与野党として対立をしてきた立憲民主党との連立は簡単ではないでしょう。しかし、長い自民党の歴史の中で、同じような手口で政権を維持した実績があります。(村山内閣)

日本の第81代内閣総理大臣となった「村山富市」は、自民党結党以降2025年時点までで唯一、「自民党政権下で自民党以外の総理大臣」です。過半数を割り込んだ自民党が、政権を維持するために野党第一党(日本社会党)と手を組み、そのための交換条件として「内閣総理大臣のポスト」を利用した形です。

村山内閣については、以下の記事内「村山富市 : 過半数割れした自民党と連立して総理大臣へ」の項で詳しく触れています。詳しく知りたい方はそちらもあわせてご覧ください。

自民党が村山内閣の時と同じように、立憲民主党と連立するための条件に「総理大臣のポスト」を持ち出せば、現立憲民主党の党首であり総理大臣経験もある野田佳彦による、第二次「野田内閣」の誕生が見えてきます。

「未来のために増税が必要」と主張する立憲民主党

立憲民主党は、一貫して「未来のために増税する」路線を貫いている政党です。立憲民主党内で消費税の部分的な減税の話が出ると、政党から出て行けという発言が飛び出し、ニュースになる程です。

出典 : 枝野氏「減税なら別の党を」発言に立憲内で批判相次ぐ 江田氏らは「食料品の消費税ゼロ」提言 野田代表は亀裂の党内をまとめられるか (FNNプライムオンライン) – Yahoo!ニュース

色々な主張をする政党があることで、意見が衝突して議論が深まり、より良い解決策が見いだせていくものです。主権のある国民が、自分の意見に近い国会議員を選挙で選ぶためにも、色々な意見を持った人や政党が必要でしょう。

しかし、参議院選挙で国民が「減税を期待」して選挙行動をした結果、より一層「増税路線」が加速する立憲民主党による政権運営が始まってしまう可能性があることには、不条理さを感じずにはいられません。

結局のところ選挙が大事

参院選で投票をしても、結局増税路線が変わらないどころか、むしろ加速する可能性があるという絶望的な状況を予測してきましたが、それでも今の政権に反対なら参院選挙で行動することは重要です

参議院議員の任期は6年で、衆議院よりも長いことを忘れてはなりません。今回の参院選で、現政権の自公が過半数を維持するようなことになれば、仮にその後政権交代が起こったとしても「自公の壁」は長く残り続けることになります。新しい政権によって出された減税政策は自民党によって参議院で否決され、衆議院でも再可決を得られず廃案となる未来が容易に想像できます。

衆議院と参議院の両方で意思を表明するしかない

村山内閣が約1年程で総辞職しているように、自民党と立憲民主党が連立したとしても、同じように長続きしない可能性もあります。連立が崩れたときには、2025年の参議院選挙の結果が自民党に重く圧し掛かります。衆議院の解散がなければ、2028年(3年後)には次の衆議院と共に残りの半分の参議院の選挙が同年に行われることになる可能性が高いです。

衆議院と参議院の両院をあわせて国会であり、主権を持った日本国民は、その両方の選挙権を持っています。政治に不満があるのであれば、その両方の選挙に参加して意思を表明するしかないのです。衆議院は4年ごと、参議院は3年ごとに選挙が行われるので、日々「政治の監視」をして備えておきましょう。

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