私たちの話す日本語の中には数多くの外来語が存在します。今回は、「見せかけの」という意味で使われる「フェイント」という外来語と英単語feint, feignについて比較しながらまとめています。よく似た意味の2つの単語とその語源をみてみましょう。
日本語の「フェイント」は何語由来?
日本語での「フェイント」という言葉は、「見せかけの」という意味合いで使われます。日常会話でも様々な場面で使われますが、特にスポーツのような競技における戦術として使われることが多い言葉です。
例文 : 彼は右にフェイントをかけて、左にドリブルで突破した。
サッカーのような球技だけでなく、格闘技(ボクシング)などでも相手を欺く戦術や動作として「フェイント」という言葉は頻繁に使われます。
「フェイント」という言葉を、「純粋な日本語」で表現するとしたら以下のようなものが考えられます。
- 陽動
- 牽制
- 偽装
日本語で使われる「フェイント」は、英語のfeintが基になっている外来語です。
英単語「feignt : フェイント」の発音と意味
日本語で「見せかけの」という意味で使われる「フェイント」という言葉は、英語から取り入れられた外来語で、基となっているのはfeintという英単語です。
発音や意味について確認してみましょう。
feintの発音
feintの発音は、カタカナで表記すると「フェイント」となります。

feintという英単語には、日本人の苦手な発音もなく、音としてもカタカナのフェイントに非常によく似ています。最後の「t」は子音だけで、日本語の母音である「o」音はないので、そこだけ注意が必要です。
feintの意味
feintの辞書的な意味には以下のようなものがあります。
- 見せかけ
- 陽動
- 牽制
feintは以下の様に使われます。
例文 : I made a feint of studying.
和訳 : 勉強のふりをした。
上記例文では、日本語の「フェイント」と同じ「名詞」としてfeintが使われています。feintは可算名詞で、単数の場合はaやtheを、複数の場合はfeintsとsを付けて表現します。
動詞としても使われるfeint
日本語では「フェイント」は戦術や技術を意味する「名詞」として使われる単語ですが、英語のfeintは「動詞」としても使われます。
動詞としてのfeintには、以下のような意味があります。
- ふりをする
- 偽る
例文 : The boxer feinted with his left hand.
和訳 : ボクサーは左手でフェイントをかけた。
日本語ではフェイントは名詞であり、動詞とするためには「フェイントをかける」とする必要がありますが、feint自体が動詞としても使える英語は、日本人としては少し違和感を感じるかもしれません。
feintの変化形
feintを動詞として使う場合、時制の影響を受けて以下の様に変化します。
現在 | 過去 | 過去分詞 |
---|---|---|
feint | feinted | feinted |
日本語に翻訳する場合、「フェイント」は日本語として十分定着しているので、「フェイントをかけた」や「フェイントをかけられた」と翻訳してしまって問題ないでしょう。
feintと似た意味の英単語「feign : フェイン」
英語には、feintと同じ「見せかけの」という意味を持った動詞にfeignがあります。
feignの発音
feingの発音は、カタカナで表記すると「フェイン」となります。

「feint : フェイント」と比較すると、最後のt音がないだけで、母音の音はまったく同じです。
feignの意味
feignは英単語のpretend(演じる)に近いニュアンスを持った単語で、辞書的な意味には以下のようなものがあります。
- 装う
- ふりをする
- 偽る
feignは以下のように使われます。
例文 : He feigned illness.
和訳 : 彼は病気のふりをした。(仮病を使った)
feignは目的語を持たずに自動詞として使うこともできますが、目的語と合わせて他動詞として使われるのが一般的です。
「feign death : フェインデス」はどんな技?
feignを使った面白い表現に、feign deathという言葉があります。
feign deathという表現は、ゲームや映画などで使われることがあり、死を装うという意味から「死んだふり」という意味合いになります。
例文 : Rexxar’s ‘feign death‘ ability makes him invulnerability for a short time.
和訳 : レクサーの「死んだふり」スキルは、短時間彼を無敵状態にします。
feignの変化形
feignは動詞なので、時制の影響を受けて以下の様に変化します。
現在 | 過去 | 過去分詞 |
---|---|---|
feign | feigned | feigned |
feignedの発音はfeintと似ていますが、最後の音がt音ではなくd音になっているため、発音や聞き分けるのには注意が必要です。

feintとfeignの比較
feintとfeignは、どちらも「見せかける」という意味を持った動詞として共通していますが、英語としての使われ方には違いがあります。
feintとfeignの「ニュアンス」の違い
同じような意味を持ったfeintとfeignは、日本人感覚ではどちらを使っても良さそうに感じますが、英語としてはニュアンスの違いがある単語で、適切に使わないと意味は通じても「違和感」が生じることになります。分かりやすいように例を挙げて紹介します。
先に紹介したfeign death(死んだふり)という表現は、feintを使ってfeint deathとすることもできそうですが、英語表現としてはfeignの方が使われます。
辞書的な意味合いは同じですが、両者には以下のようなニュアンスの違いがあります。
英語表現 | ニュアンス |
---|---|
feign death | 死んだふり |
feint death | フェイントデス |
feintという単語には、日本語と同じように「スポーツ」や「軍事」などの技術としてのニュアンスがあります。そのため、feintを使った表現からは「~のふり」よりも「技の名称」のような印象を強く感じます。
どちらも意味合いとしては同じなので意図は伝わるとは思いますが、聞き手としては「カタコト」の英語の様に聞こえてしまうかもしれません。
feintとfeignの語源
「feint」と「feign」とは、どちらもラテン語の「fingere : フィンジェーレ」に由来しています。ラテン語からフランス語の「feindre : フォンドル」を経て、英語に取り入れられました。いずれも「ふりをする」「見せかける」という意味の言葉です。
ラテン語のfingereは、イタリア語にはそのまま「fingere : フィンジェレ」として残っており、「見せかけの」「偽物」という意味で使われます。
言語に歴史あり
日本語のフェイントと言う単語はただの外来語の一つではありますが、その語源を辿ると英語、フランス語、ラテン語やイタリア語といった、長い言語の歴史が見えてきます。

現在では数多くの国がひしめき合っているヨーロッパ地域ですが、元を辿ればローマ帝国であり、ローマ帝国の公用語であったラテン語の影響が現代でも色濃く見られます。
私たちの使っている日本語(外来語)の中にも、世界の歴史を乗り越えて現代まで辿り着いた言葉や表現が数多くあり、大変興味深いものです。
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