海外と日本では食文化が異なるため、海外旅行などで見たことのない食材が使われていると、日本人も「これは何ですか?」と聞くことがあります。同じように、日本を訪れた外国人が日本の食事に含まれている食材を見て「これは何ですか?」と聞くこともあります。
今回はそんなシチュエーションで「明太子」を説明するときに使える単語を紹介しながら、日本語と英語で異なる「卵」の呼び方についてまとめてみます。海外から友人が遊びに来た時や、外国人観光客への説明などで役立ててみてください。
明太子は魚のタマゴ
日本ではほとんどの人が知っている食材の「明太子」ですが、この食べ物は海外では一般的ではなく、外国人観光客の人などは知らないことが多いでしょう。福岡県の特産品で、博多名物としても有名なため、日本人でも九州旅行のお土産などで購入する人も多い「明太子」ですが、もしかしたら日本人の中にも具体的な原材料を知らない人もいるかもしれません。
明太子は「スケトウダラの卵巣(卵)」に唐辛子等の調味料を加えて作られています。英語で説明する場合は、簡単にFish eggと話すだけでも理解してもらえるでしょう。
もっと正確に伝えたい場合には、辛い味付けである事も加えてSpicy cod roe(辛いタラのタマゴ)のように伝えると良いかもしれません。
実際の英会話の中で使われているシーンのある切り抜き動画を一つ紹介します。本当にこういった英会話に字幕を付けて動画を作成されている方々には感謝しかありません。現代の日本人英語力の向上や異文化理解への大きな助けになっているでしょう。私もその恩恵を受けつつ、学生時代にこのような技術・サービスがあったらよかったのにと思わずにはいられません。
上記動画ないでは日本のおにぎりの具材のお話がされていて、その話題の中で「めんたいこって何だっけ?」という質問がでています。(1:03秒当たり)
roeとeggの違い
日本の義務教育では、「卵 = Egg」と英語の授業で習います。
今回登場している「roe」という英単語は、同じように卵を意味する単語ではありますが、特に「魚の卵」を意味します。厳密にいうと、魚というよりも海の生物の卵を指します。
英単語 | 意味 |
---|---|
egg | 一般的なタマゴ |
roe | 魚のタマゴ (厳密には生まれる前) |
spawn | 魚のタマゴ (生まれた後) |
日本語では、鳥の卵も魚の卵も同じ「タマゴ」ですが、英語では魚の卵はroeと分けられています。
もっと細かく言うと、roeは魚の体内にある状態のタマゴの事を指し、生んだタマゴの事はspawnと呼ばれることもあります。spawnという単語は、現代ではゲームのキャラクターが生成された(生まれた)時にも使われる単語になっているため、聞いたことがある人も多いかもしれません。
roeは体内のタマゴですが、辞書などで調べるとtypically including the ovaries themselves(通常は卵巣自身も含まれる)とされています。roeという単語は、特に食材として使われている場合に使われます。
roeの発音

roeの発音はGoogleでは上記のようになっており、カタカナで無理やり表記すると「ロウ」といった感じでしょうか。

同じ発音の単語として、行や列という意味で使われるrowがあります。余談ではありますが、日本語では行と列というのは全く違う意味に捉えられる言葉ですが、英語ではそもそも連続して並んでいるものに対してrowという言葉を使っている感じで、行でも列でもどちらにも使うことができ、これはとても興味深い違いです。
同じような発音の単語には、「生もの」のことを指すrawがありますが、こちらは発音が異なっているため注意が必要です。Google Search Lab | AIでの発音記号についての違いを参考までに載せておきます。

カタカナで表現すると、rowはロウで、rawはゥロォーといった感じだそうです。
スケトウダラと明太子の雑学
ちょっとした雑学を少し紹介します。
明太子は博多で名物となっていますが、九州の博多では材料のスケトウダラは獲れないのに、なぜ博多名物になっているのか疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
明太子(辛子明太子)は、第二次世界大戦後に韓国から持ち帰られた韓国の郷土料理を、日本風にアレンジしたのが始まりと言われていて、博多に多くの製造メーカーができていったそうです。明太子の名前も元々は韓国(朝鮮)の言葉で、スケトウダラを表す「ミョンテ(明太)」に、卵を意味する日本語の「子」を付けて命名されたとされています。
また、スケトウダラという魚は日本ではなかなかお目にかかることができず、実物を見たことがある人は少ないでしょう。日本ではスケソウダラと呼ばれることもある魚です。
スケトウダラは、主にアラスカ周辺のような寒い海に生息しており、厳しい漁によって獲られています。水深150m~500mという比較的深い海に生息していて、底引き網などで漁獲されます。日本ではマクドナルドのフィレオフィッシュに使われている事でも有名なお魚です。
日本でお馴染みの魚の卵
明太子を英語で説明するには、spicy cod roeと表現すると良さそうな事は分かりましたが、日本には魚のタマゴを使った料理が沢山あり、他の料理を説明をするのに魚の種類の説明に困ってしまうことも多いでしょう。

ここでは、日本で見かけることの多い魚のタマゴ料理について、英語での表現を見ていってみます。ちなみに上の画像は「とびこ」のお寿司で、下表にもありますがトビウオのタマゴです。
タマゴの名前 | 魚 (日本語) | 魚 (英語) |
---|---|---|
いくら, 筋子 (すじこ) | 鮭 (さけ) | Salmon |
たらこ, 明太子 (めんたいこ) | スケトウダラ | Alaska Pollock ※1 |
数の子 (かずのこ) | ニシン | Herring |
とびこ | トビウオ | Flying fish |
からすみ | ボラ | Mullet |
キャビア | チョウザメ | Sturgeon ※2 |
※1
明太子をSpicy cod roeと説明したらいいと紹介してきましたが、スケトウダラは正確にはAlaska Pollockと呼び、codはタラ(マダラ)のことを指す言葉です。名前だけでなく味わいも異なり、それぞれのタマゴはpollack roe, cod roeと呼ばれて区別されているようです。pollackという英単語を辞書で調べるとcod family(タラの一種)と出てきて、pollockという英単語を辞書で調べるとvariant spelling of pollack(pollackの綴り違い)と出てきます。言語あるあるですが、意味不明なのでどちらかに統一して欲しいものです。
※2
キャビアの代用品として使われることがあるセッパリダンゴウオは英語ではlumpfishと呼ばれ、日本でもその卵をランプフィッシュキャビアと呼ぶそうです。
言語の違いは面白い
今回は明太子やスケトウダラの雑学を挟みながらではありますが、EggとRoeというタマゴを表す英単語について違いをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。最後にご紹介したタマゴの魚については、日本で過ごしていてもちょっと面白い雑学のようにも思います。おいしければ魚の名前なんて気になりませんし、意外と知らないといった人も多いようにも思います。
日本ではタマゴはタマゴで、鶏でも魚でも同じくタマゴと呼びますが、漢字表記で玉子と表記すると料理に使うタマゴを指したりするなど、言語によってそれぞれ特殊なルールのようなものが存在しており、それらが形成されて行った過程などを考えると、言語というものは非常に興味深いと改めて感じます。
英語と日本語の間の違いは、今回紹介したような名詞だけでなく、動詞にも同じように区分けが異なるものが有ったりもします。以下の記事では「説明する」という単語の違いについて紹介していますので、興味のある方はそちらも是非ご覧ください。
個人的には、タマゴが外来語でもないのにカタカナ表記することも一般的で、それが「読みやすくするための工夫」が理由であるともいわれていることに、「日本語の柔軟さ」のようなものを感じ、英語の勉強をしながら日本語の素晴らしさに気付かされたりもします。
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