言語の勉強をしていると、日本語の訳が同じになっている違う単語や表現と出会うことがあります。そんな時は、自分の知っている表現との違いが気になるものです。
今回は、「rely on : 頼る」という英語表現と同じ日本語訳を持つ「depend on」「count on」について、それぞれのニュアンスなどを紹介します。また、意味的にも近い「rely on」と「count on」については、記事の後半でアニメのシーンを引用しながら、実際に使われる状況を紹介しています。意味を知るだけでなく、具体的な会話の中でのシーンをイメージするのに役立ててください。
depend on : 依存する (頼る)
depend onは、日本語での「依存する」という意味合いが強く、よく経済的に依存している場合に使用される表現です。dependは、カタカナで無理やり表現するとディペンドということになるでしょう。もしかしたら、日本では中学2年生くらいで習う英単語なので知っている人も多いかもしれません。
I depend on my parents.
上記表現では、「頼る」と訳してしまうと「私は親を頼っている」となってしまいますが、実際には「(経済的に)依存している」という意味です。
私は親のすねをかじっています。
少し意訳気味ではありますが、このように捉えても差し支えないでしょう。親に経済的に依存している/頼っているという状況です。
rely on : 信頼する (頼る)
「頼る」という言葉からは「信頼」を感じます。信頼して頼る場合の英語表現といえばrely onです。relyをカタカナで無理やり表現すると「リライ」となるでしょう。メールの返信などで使われる英単語のreply(リプライ)からpがなくなって、rely(リライ)です。
I rely on you.
私はあなたを頼りにしています
この言葉からは強い信頼を感じ、日本語的に言うと「頼むよ!」とか「頼りにしてるぜ!」といった表現のように、仲間意識のようなものも感じます。この表現は、アニメや映画などでもよく耳にします。
relyという動詞自体が「頼る」という意味で、そこから変化した英単語も同じような意味で使われることが多く、reliable(頼りになる、信頼性のある)といった形容詞は、特に耳にする機会が多い単語でしょう。
You are a only reliable friend.
あなたは唯一の信頼できる友人です。
裏切り者だらけのような状況で、一人の友人を頼りにしている場合などに、信頼しているという意味でreliableが用いられます。
count on : 数に入れる (頼りにする)
少し奇妙に思うかもしれませんが、数字のカウントを意味する英単語countを使って、count onで「頼りにする」という意味合いで使われます。
You can count on me.
私を頼りにしてください。
これと似たような表現を、日本語でもすることがあります。複数人のグループで戦力を確認する際などに、「自分も数に入れて」というと「戦力に含める = 頼りにして」という意味合いになりますが、count onはそれととても似たニュアンスを感じる表現です。頭数(あたまかず)という単語も近いでしょう。
上記表現からは、以下のようなニュアンスを感じ取ることが出来ます。
あなただけじゃない、私の事も数に入れておいて。(頼りにして。私もいるよ。)
rely onとcount onの違い
同じようなニュアンスの言葉で、同じように使われるrely onとcount onですが、会話の中では少し使われ方に傾向があるように感じます。rely onは、自分から相手への信頼を伝えることに使われることが多い表現です。「頼りにしてるぜ、相棒!」という感覚です。
一方、count onは、自分から相手に「頼りにして」「サポートするよ」という場合に使われることが多く、上記例で示したように「can」と合わせて利用されることが多いです。「後ろは任せて!」という感覚です。
英語表現 | ニュアンス |
---|---|
I rely on you. | 頼りにしてるぜ、相棒! |
You can count on me. | 後ろは任せて! |
どちらも形式的には「頼る」という和訳になりがちですが、使われ方や発言者の心情には違いがあります。こういった違いはどの言語にもあり、とても興味深いところです。
シーンで覚える
英語表現を覚える際に、実際に会話で使われる印象的なシーンと一緒に覚えると、記憶に残りやすいので、ここで人気アニメ「無職転生」から、それぞれの使われるシーンを引用しながら紹介してみます。
rely on
rely onが使われている以下のシーンは、無職転生のシーズン2 第16話です。

このシーンは、主人公ルーデウスの下に2人の妹たちが到着し、妹たちを護衛してくれたルイジェルドとお別れをするシーンです。妹の一人ノルンがルイジェルドについていきたい(兄と一緒は嫌だ)と駄々をこねたことに対して、ルイジェルドが返答しています。
英文 : Rely on Rudeus from now on, not me.
原文 : これからは俺ではなくルーデウスを頼れ。
この台詞では、自分が頼りにするという一人称視点ではなく、第三者視点で「~を頼りなさい」という表現でRely onが使われています。ここでの「頼れ」という言葉には、上で紹介したように「信頼」のニュアンスが含まれています。rely onを使って翻訳したことで、日本語のニュアンスが英語で表現されているといえるでしょう。
count on
日本人の感覚で少しわかりにくそうなcount onについては、2つほど例を紹介してみます。
以下のシーンは、無職転生のシーズン2 第19話です。

画像では少しわかりにくいですが、エリナリーゼとルーデウスが母救出の救援のためにラパンを目指している旅の途中です。上記場面はグリフォンと戦闘する直前、立ちふさがる大きな岩をルーデウスの魔法で登った直後で、「魔力量が多いと頼もしい」というエリナリーゼの言葉に対して、ルーデウスが返答しています。
英文 : You can count on me.
原文 : 任せてください。
この台詞に続いて、「最短距離で行けるなら出し惜しみしませんよ。」と発言しており、ルーデウスがこの旅を早く完了したいという思いも描かれています。頼りにするという意味には違いありませんが、もう少し「謙虚さ」がある表現で、「私だってやれますよ。なので頭数(あたまかず)に数えておいてください。」といったニュアンスが感じられます。
以下のシーンは、無職転生のシーズン2 第22話です。絶望回でもあるこのお話の冒頭、ヒュドラ戦開始前の会話です。

ロキシーが弟子のルーデウスに必要な物を尋ね、回復魔法のスクロールを渡した後のシーンで、ロキシーの援護するという心強い言葉に、ルーデウスが「よろしくお願いします。どうにも俺はビビり癖があるようで…」と弱気な言葉を返したので、それに対してロキシーが励ます様に返答しています。
英文 : Of course, you can count on me.
原文 : はい。背中は任せてください。
とても面白いことに、日本語の原文は上記例と異なるのに、英語訳は同じ「you can count on me.」となっています。この現象からは、言語の違いというものを感じずにはいられません。それと共に、日本語の表現の豊かさのようなものを思い知らされます。
「背中は任せてください」という日本語の表現は、「頼って下さい」という意味ではありますが、「見えていないところを援護(サポート)する」という意味も含まれた言葉です。英語でそれを表現しようとすると回りくどい言い回しになってしまうと判断されたのか、ここでは「頼りにしてください」という意味でcan count onを使って翻訳されたのだと思われます。大筋の意味は変わっていないと言えるでしょう。
しかし、日本語と英語は所詮違う言語なので、完全に同じニュアンスには成り得ず、英語字幕で日本のアニメを再視聴すると、様々な違いに気づき、日本語表現が本当に繊細で素晴らしいものだと思い知らされます。本件については以下の記事でも少しまとめていますので、興味のある方は是非そちらもご覧ください。
アニメ「無職転生」について
とても有名で人気な作品ではありますが、今回英語表現のために引用させていただいた無職転生のことについても少しだけ紹介いたします。
オフィシャルサイト : TVアニメ「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」公式サイト
本作は、いわゆる異世界転生ものと呼ばれる作品で、現実世界で事故にあって死亡した主人公が、剣と魔法の世界の赤子として生まれ、新しい人生を始めるところから物語が描かれます。ファンタジーの世界が舞台にも関わらず、人間模様や心理描写がとても緻密で、その上背景はもちろんの事動きのあるアニメーションがとても綺麗なため、没入しやすいアニメと言えるのではないでしょうか。
人間の失敗や挫折からの立ち直りや、幸福や喜びまで細かく描かれるため、キャラクターの心情に感情移入が深くなってしまい、個人的には「涙なしでは見れないアニメ」の一つです。何度見直しても、同じシーンで涙が出るこの現象は、一体何なのでしょうか…。残酷なシーンや少し過激な性的な描写もあり、正直子供向けとは思えない作品でもあり、人を選ぶ作品なのかもしれませんが、個人的には人生の中でもトップクラスに好きな作品です。是非興味のある方は観てみてください。(2025年2月時点では、Season1,2共にAmazonプライム対象作品になっています)
言語の違いを知ることは楽しい事
言語の学習をしていると、同じ意味で違う単語がたくさん出てきて、それぞれをどのように使い分けすればよいのか悩むことがよくあります。単語帳のような機械的な方法で学習をしていると、実際に使う場面が想像できず、覚えているのに会話で使えないという事もあるでしょう。今回紹介したシーンなどが、単語や表現のイメージとして役に立つことを願っています。
今回は「頼る」という英語表現に複数のパターンがある事を紹介してきましたが、日本語も同じようなことがたくさん起きる言語です。特に日本語の1人称(僕、私、俺など)の多さは、海外の日本語学習者に絶望を与えることで有名です。
今回紹介した無職転生においては、日本の「愛称」のような文化が英訳にほとんど乗っていないことが、シリーズ通して気になりました。妹の一人アイシャが、姉のノルンの事を「ノルンねぇ」と呼んでいても、英語訳は「Norn」だけ、つまり呼び捨てとなっているのです。日本では名前を「呼び捨て」にすることは、場合によっては「失礼」とする文化があり、兄弟でも名前を「呼び捨て」にするのは年下を呼ぶときなどに限られるでしょう。この英訳を日本人が見ると「失礼な物言いをする妹」というニュアンスを感じてしまいますが、英訳でこの物語を楽しんでいる人たちが実際どのように感じているのかは、その言語圏の人にしか分からない事です。
言語の学習は、こういった文化の違いを身近に感じる事ができて、個人的にはとても楽しいものだと感じます。様々なデジタルコンテンツを、家に居ながらにして視聴できる時代になったことに、感謝せずにはいられません。
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