もちもち食感で人気のタピオカドリンク。その原料が「キャッサバ」という熱帯原産の植物だと知っていますか? キャッサバは世界で5番目に多く生産される主食穀物です。この記事では、キャッサバの特徴や歴史、日本での意外な利用方法までをわかりやすく紹介します。
タピオカの原料「キャッサバ」とは
タピオカのあのもちもち食感、その正体は南米原産の「キャッサバ」というイモから作られています。
おやつの材料と思われがちですが、実は世界中で何億人もの命を支える重要な主食でもあるのです。ここからは、このキャッサバの正体に迫っていきます。
キャッサバの植物としての特徴
タピオカというのは、「キャッサバ」というイモのような植物の根茎(こんけい)から作られています。
根茎というのは文字の通り、根のように土中にある茎の部分のことを指しています。その部分からデンプンを取り出して加工して、小さな球状にしたものを「タピオカ」と呼んでいます。

日本ではタピオカと言ったら飲み物の中に入っていることが多いですが、世界的には中華料理やエスニック料理などで使われたり(pearl tapioca)、プリンのようにして食べたり(pearl pudding)もしています。
根茎やイモなど、植物の分類について詳しく知りたい方は、以下の記事も是非ご覧ください。
世界での生産量と主食としての役割
タピオカの原料であるキャッサバという植物は、日本ではあまり聞き覚えのない植物です。
日本のスーパーなどで販売していることもほとんどなく、自分で栽培している人も少ないため、見た事さえない日本人が多いでしょう。

キャッサバというのは、トウダイグサ科イモノキ属の熱帯低木に分類される植物です。ジャガイモやサツマイモのように、地下に生成される根茎を食します。
熱帯地方で広く栽培されており、特にアフリカなどではトウモロコシに次ぐ主食で、人類の生活の糧として重要な役割を担っている植物でもあります。
キャッサバは世界第5位の主食作物
日本では、主食というと米や小麦といったものが有名ですが、世界的にはトウモロコシ・ジャガイモ・キャッサバなども非常に重要で大きな役割を担っています。

この表を見て分かる通り、世界の生産高としてはキャッサバは第5位となるほどに生産されている主食穀物です。
キャッサバの食べ方とタピオカの利用
キャッサバは茹でたり焼いたりして食べるほか、でんぷんを取り出してタピオカ粉として利用されます。このタピオカ粉、ドリンクの粒だけでなく、意外な料理やお菓子にも変身しているんです。
タピオカ粉を使った意外な食べ物
キャッサバの食べ方には色々な方法がありますが、主食として食している地域では、スライスしたものを揚げたり、棒状にカットしたものを油で揚げたりするなどが有名です。
以下のような「揚げたキャッサバ」は屋台などでも販売されることも多いです。

日本人としても、ポテトチップスのような形状は非常に馴染みがあります。
日本で食べられるキャッサバ食品
日本ではタピオカのほかにも、パンやお菓子、総菜などにキャッサバが使われています。その中でも近年、手軽に食べられる食品として注目されているのが冷凍のキャッサバ芋です。
日本の冷凍食品「キャッサバ芋」
日本国内でも、棒状の揚げキャッサバなどは冷凍食品として販売されていたりもするようです。写真で見ると、ジャガイモを揚げたものとそっくりです。

タピオカ粉を使ったドーナツ「ポン・デ・リング」
タピオカ粉を使ったもちもち食感の代表格が、あの『ポン・デ・リング』です。誕生秘話は以下の記事で詳しく紹介しています。
キャッサバの歴史:南米から世界へ広がった理由
現代では広く世界的に生産されて食べられているキャッサバですが、トウモロコシと同じように15世紀までは私たち文明社会には存在していなかった植物です。
コロンブスの新大陸発見以降にアメリカ大陸から持ち帰られた植物の一つです。キャッサバは新太陸(アメリカ)の中でも南アメリカで多く栽培されていた穀物です。
キャッサバは、ブラジルを植民地にしていたポルトガルが奴隷貿易での奴隷用の食べ物として使っており、アフリカへはポルトガルによってコンゴ辺りに最初に持ち込まれたとされています。
- 15世紀末:南米で栽培されていたキャッサバがヨーロッパへ
- 16世紀:ポルトガル人が奴隷食としてアフリカへ導入
- 17世紀:アフリカで主食化、スペイン・オランダがアジアへ拡散
その後アフリカでは急速に主食として広まっていき、後にアジア方面へもスペイン人やオランダ人の手によって広まっていったとされています。
世界で最も生産される主食穀物「トウモロコシ」
同じように新大陸から持ち帰られたトウモロコシは、今や世界で最も生産されている主食穀物です。炭水化物としてエネルギーになるだけでなく、私たちの重要なタンパク源である肉や卵を提供してくれる家畜の飼料として欠かせないものとなっています。
トウモロコシについて詳しくまとめた記事もありますので、興味のある方はそちらもご覧ください。
キャッサバ栽培が注目される理由
キャッサバは私たち日本人には馴染みがあまりありませんが、日本の食料自給率の改善や痩せた土地での米・小麦に代わる穀物として、近年国内でも注目している人が増えているようです。
キャッサバは、作付面積当たりのカロリー生産量が最も優れた穀物でありながら、悪い生育環境でも栽培が可能な点が非常に優秀で、国内だけでなく世界的にも食糧問題や地球温暖化対策などの諸問題への解決策として期待されている穀物でもあります。
「ポテトチップス」はご飯?
幼い頃は、「お菓子はご飯ではありません」といった教育をされることは多いですが、食の歴史や世界の食文化などを学んでいくと、ポテトチップスだって十分ご飯(食事)になり得ることに気付きます。
キャッサバのように、日本では主食とされない作物が世界では主食になる例は他にもあります。代表的なのがジャガイモです。
ポテトフライは「付け合わせ」ではなく「米の代わり」
ジャガイモは、日本では主食というイメージがあまりありませんが、世界的には第4位の生産高を誇る、立派な主食穀物の一つです。
イギリスの有名な料理に「Fish and Chips : フィッシュ アンド チップス」という料理があります。

Fish and Chipsは、魚料理の付け合わせにジャガイモのフライが付いている料理なため、日本人としては米かパンが必要と感じる人もいるでしょう。
イギリスの主食は元々ジャガイモであり、Chips(イモのフライ)の部分が米の代わりなのです。
ジャガイモは「炭水化物を多く含んだ主食穀物」です。そのため、イギリスのFish and chipsは日本の寿司と栄養的には同じ組み合わせ(炭水化物 + タンパク質)になっていると言えるのです。
学びは日々を豊かにしてくれる
身近な物事の中にも知らない事というものは意外と多いものです。インターネットの普及によって調べ物が簡単にできる時代になったので、皆さんも是非疑問に思ったことを調べてみてください。
色々な事を学ぶことで、日々の生活も楽しくなること間違いなしでしょう。
タピオカは南米生まれのキャッサバから作られ、今も世界中で多くの人の命を支えています。次にタピオカドリンクを飲むとき、遠い大陸からやってきた歴史を思い出してみてください。