ソーラーシステムは英語だと太陽系 – 意味が異なるカタカナ語

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日本語では、外来語の音を基にした多くのカタカナ語が使われています。元の言語の発音とは異なる場合も多く、本来の言語圏の人が聞くと面白い変化として受け止められることも多いようです。ただ、カタカナ語の存在は、外国語圏の人が日本語を学習するときに単語の習得を容易にするということもあります。

しかし、カタカナ語の中には、発音だけでなく意味すらも変わってしまっているものがあったり、外来語本来の意味とは異なる形で勝手に作られた造語などがあります。そういった単語は、会話をしている中で、お互いが違うものを想像してしまうため、コミュニケーションにおいて重大な障害となることがあります。

今回は本来の言語とは異なる意味で使われている単語としてソーラーシステム(Solar system)という言葉を紹介します。

ソーラーシステムと聞くと太陽光発電と思ってしまう

現代社会では、特にリベラルな集団を中心に持続可能な社会を追求する風潮が強く、エネルギー問題の解決には風力や太陽光発電の活用が注目されています。日本国内でも、東京都で太陽光発電の設置が義務化されたり、山間を削って大量の太陽光発電を設置したメガソーラーなどの建設が推し進められており、賛否両論の議論が盛んです。

そんな太陽光発電に注目が集まる社会に生きている私たち日本人にとって、「ソーラーシステム」という言葉は非常に身近なカタカナ語で、太陽光を使って発電するシステムを意味する言葉として頻繁に耳にします。

日本語のソーラーシステムという言葉に慣れていると、英語でSolar Systemという言葉を耳にしたときに勘違いが発生してしまうことがあります。勘違いが発生する面白い動画がKevin’s English Roomの少し古い動画にあったので、参考までに紹介いたします。

この動画では、日本語の単語を英語で説明して、何の単語であるかを伝えるというゲームが行われており、「地球」という単語をNGワードPlanet,Spaceを使わずに伝えようとした際に、Solar system(太陽系)が使われています。しかし、聞き取った日本人の回答者はソーラーシステム = 太陽光発電と理解したために、混乱してしまいます。英語圏との人との会話で発生しうる擦れ違いとして、とても参考になる場面のように感じます。

Solar system は英語だと太陽系

英語でのSolar systemは、太陽光発電ではなく太陽系の事を指します。太陽系というのは、地球を含めた太陽を中心にした星系のことです。

Solarというのは、太陽に関連した技術や現象であることを指す形容詞です。つまり、Solar systemというのは太陽に関連したシステムということになります。日本でもよく知られているSunという英単語は、名詞として「太陽」を意味する単語です。

Systemというのは、日本ではカタカナ語として一般的に使われる言葉ですが、日本語にすると「組織」「制度」「仕組み」といった意味合いの他に、「体系」「系統」のような意味もあります。単純に「系」という意味合いで使われることもあります。

つまりSolar systemというのは「太陽の系」なので、日本語では太陽系と訳されます。一方で日本のカタカナ語になっているソーラーシステムは「太陽を活用した」「仕組み」という意味合いになっていると言えるでしょう。

英語で太陽光発電はSolar power

英語で太陽光発電のことを指す言葉は、Solar powerと表現するのが一般的です。専門的にはphotovoltaicという単語もありますが、日常会話で使われることは稀でしょう。

そもそも英語では、電力のことを表現する際にはPowerという単語が使われます。日本のカタカナ語でパワーというと、「力」や「力強さ」という意味合いで使われるため、英語のPowerが電力の事を指すことに違和感を感じる事もあるかもしれません。

発電のことはPower generationと表現する他、Power plugというと電源プラグ(コンセント)のことを指すなど、英語ではPower = 電源・電気といった意味合いで使われることが多いです。

日本人にとっては違和感のない言葉ではありますが、カタカナ語のソーラーシステムは、英語においては「電気」の意味合いがない言葉で、太陽光発電には結び付きにくいといえます。

英語で太陽系の惑星

太陽系には、地球を含めて8つの惑星があります。各惑星の英単語は、日本国内ではキャラクターの名前などで使われることも多く、カタカナ語として定着しているようにも感じます。

太陽系惑星の英単語は、太陽に近い順でそれぞれ以下のようになっています。

惑星英語
水星Mercury
金星Venus
地球Earth
火星Mars
木星Jupiter
土星Saturn
天王星Uranus
海王星Neptune

日本では、惑星を暗記するのに「すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい」という頭文字をとった語呂合わせが使われたりもします。日本人からすると、英語の惑星名は何故か「かっこいい」ように感じますが、よく考えたらキャラクター名に惑星名を使っているということは、日本語にすると「ちょっと恥ずかしい」名前のようにも思えてしまいます。

惑星 (Planet)の語源

日本語では、太陽のような輝く星を恒星、月のように惑星を周回する星を衛星と呼びます。それぞれ天体を表す星に、役割や性質を表す漢字が付いた名前が付けられています。

一方で、地球のような恒星の周りを回る星のことは惑星と呼び、「惑う」という感じが使われています。役割でも性質でもない惑うという漢字を使って命名されていることには理由があります。

惑星というのは英語ではPlanet(プラネット)ですが、元々はギリシャ語に由来しています。まだ天体の観測技術が高くなかった頃、自身で輝かない惑星の観測は難しく、地球から観測すると右や左に移動する不思議な天体だった惑星は、「惑う星」として名前が付けられたとされいます。

以下の記事は、全体としては「惑う」という漢字を使った論語のお話ですが、記事中に惑星(プラネット)についても詳しく紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

不惑 (40歳) - 論語に励まされた人の心理と頑張るより健康を優先する精神
孔子は40歳で惑いがなくなったと述べています。自分の人生がどこに向かうのかを、40歳になってから明確に理解し、迷いがなく突き進むことができるようになったというのです。 年始だからこそ、初心忘るべからずという気持ちで、孔子の論語について触れながら人生について改めて考えをまとめていってみようと思います。

雑学 : 惑星ではなくなった冥王星

私が幼いころは、太陽系の惑星は9つで、覚え方の語呂合わせも「すい・きん・ち・か・もく」に続いて「ど・てん・かい・めい」または「ど・てん・めい・かい」でした。しかし、2006年に「めい」に該当する冥王星は、太陽系の惑星から除外されました。

冥王星は、英語ではPlutoと呼びます。

冥王星に新しい何かが分かったからといった理由ではなく、惑星の定義が見直されたためにこのような事が起こっています。惑星よりも少し小さな天体の事を準惑星とするようになったため、サイズが小さかった冥王星は、惑星から準惑星へと分類が変わった形です。

元々惑星だった冥王星は、他の惑星とは周回軌道が少し異なっており、その特殊な軌道のおかげで太陽からの距離が海王星よりも近くなったり遠くなったりしています。その関係で、語呂合わせの並びが変わるという面倒なことが起きていたわけです。

Neptune pluto

この冥王星が惑星から除外されるという件については、当時デモも行われたことで話題にもなりました。冥王星が惑星でなくなることに対して、何か不利益を被る人たちがいたのか、私にはデモの目的がよく分かりませんでした。

カタカナ語の罠に注意

英語などの外国語を学習する際に、元となるカタカナ語で聞き覚えのある単語と出会うということがよくあります。しかし、元の言葉が日本語として使われている時と異なる意味であることは意外と多いため、カタカナ語の意味に引っ張られないように注意が必要です。

個人的な見解ですが、誤った意味でのカタカナ語を広めたり、使ったりしている人の存在は、言語学習における大きな障害であると感じます。もちろん歴史的な経緯で、英語とは違う意味や発音で伝わっている場合など、仕方ないものもありますが、そうでないものを意図的に使い続けている場合も多いです。一度広まってしまったものは修正が難しく、誤った語彙が延々と使い続けられてしまいます。

今回のSolar sysytemについても、太陽光発電の事を伝えるのであれば、日本語で太陽光発電とするか、英語で表現したいのであればソーラーパワーといった英語表現に則った言葉にするべきでしょう。しかし、ソーラーシステムという言葉が広がった今となっては、その認識を修正することは容易ではありません。

私たちは日常会話において、省略した言葉を生み出したり、外国語の音から新たな外来語/カタカナ語を生み出し続けていますが、できるだけ将来外国語を習得する人が混乱しないような、便利な言葉として生み出すことを心がけたいものです。また、誤った意味でカタカナ語を使っていることを、無知で恥ずかしいと感じ、謙虚に正せるような人でありたいと、個人的には思います。

最期に、歴史的な理由で不思議な発音が伝わっているZについての記事を紹介しますので、こういった由来などが気になる人は是非ご覧ください。

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