日常的に食べている身近な食べ物の中にも、実は材料を良く知らないものというのは意外とあるものです。日本の食事に対する絶対的な信頼があるからこそかもしれませんが、おいしいことが重要であり、材料には興味のない人も多いでしょう。
今回は、ポン・デ・リングや白いたい焼きの材料として使われている「タピオカ粉」についてのお話です。小麦粉と違って「もちもちした食感」になるタピオカ粉を使った料理の工夫などと共に、その元となる穀物であるキャッサバの特徴や歴史などについても紹介していますので、是非ご覧下さい。
大人気なポンデリングの「もちもち食感」
ポン・デ・リングとは、日本のミスタードーナツで販売されているドーナツの一種です。2003年に販売開始されてから大ヒットを続けており、現在も様々なランキングで人気ナンバーワンを獲得するほどに愛好家の多い商品です。

ポン・デ・リングは、「もちもちとした食感と花に似たユーモラスな形」が特徴の商品とされているように、一般的な「さくさく・ふわふわ」なドーナツとは違って、もっちりとした食感が楽しめます。また、玉が連なったような形状は可愛らしさもあって覚えやすいことも人気の秘訣なのかもしれません。
ポンデリングは何粉で作られる?
通常のドーナツは、パンと同じで「小麦粉」から作られます。
ポン・デ・リングも基本的な生地の作成には小麦粉が用いられますが、あの独特な「もちもち食感」は、「タピオカ粉」によるものです。(タピオカでんぷん)
タピオカ粉は、小麦粉よりも保水力が高く、時間が経ってもドーナツの柔らかい食感を維持しやすいという特徴があります。その反面、小麦粉と混ぜると熱による膨張が均一にならず不格好となるため、ミスタードーナツでは玉が連なったような形状にするという工夫がされています。

タピオカ粉はネット販売もされており、「タピオカでん粉」「タピオカ澱粉」などといった表記がされているものが多いようです。これらを使って自作のポン・デ・リングやパンを作ったり、他のお菓子等の食べ物を作る際に「もちもち食感」を追加するために使われているようです。
大流行した白いたい焼き
タピオカ粉を使った「もちもち食感」の食べ物と言えば、一時期大流行した「白いたい焼き」もそのひとつです。

「白いたい焼き」は、小麦粉から作った普通のたい焼きと違い、タピオカ粉が使われています。また、通常のたい焼きはアンコが入っていて、熱い状態で食べるのに対し、白いたい焼きはカスタードが入っているものを冷たい状態で食べるものが多いようです。
タピオカ粉の「もちもち食感」と共に、新しいカスタード入りのスイーツとして、瞬く間に大流行し、2000年代後半には日本全国に多くのお店が作られました。
白いたい焼き屋さんが閉店ラッシュになった理由
しかし、沢山あった白いたい焼き屋さん(最盛期は500店舗以上)は、今や探すのが難しい程に閉店してなくなってしまいました。今でも一部のコンビニのスイーツコーナーでは「白いたい焼き」の商品は見かける事ができます。

白いたい焼き屋さんが閉店ラッシュになった理由は、「物珍しさ」で話題になったものが、多店舗展開で提供過多となったことで話題性を欠き、人気が低迷して販売数が落ち込んだことによるものです。新しい物珍しさを提供しようと、白以外にピンクや緑のたい焼き等を売り出している店舗もあったようですが、販売数は思ったほど伸びなかったようです。
タピオカの原料
タピオカといえば、日本ではタピオカミルクティーなどで知られており、一時期大きなブームにもなりました。

タピオカは、キャッサバという芋のデンプンで、キャッサバの根(根茎)を乾燥させてから粉砕して粉にしたものから作られています。
芋のデンプンを使った物としては、日本では春雨や葛切りのようなサツマイモから作られたものが有名です。しかし、日本ではそもそもキャッサバという名前の芋があまり知られておらず、どちらかと言えばキャッサバよりタピオカの方が有名かもしれません。
タピオカの原料であるキャッサバについて、少しまとめてみます。
キャッサバは世界を支える主食穀物
キャッサバという穀物は、日本では目にする機会も少なく、知らない人も多いでしょう。
しかしキャッサバは、世界的には米や小麦などと同じように、人類にエネルギーを提供する主要穀物(主食)として生産・収穫されていて、主食収穫量のランキングでは10位までには入る(2008年には第5位)重要な穀物です。参考までに、以下にWikipediaの主食作物ランキングの表を掲載します。

主にアフリカや南アジアなどで生産・消費されていますが、日本がタピオカブームの際には近隣でキャッサバの生産国でもある台湾からも大量に輸入されました。現在では、日本でも「食料自給率の改善」などを目的として、キャッサバの生産を日本国内で始める動きもあるようです。
キャッサバは新大陸(アメリカ大陸)由来
キャッサバはトウモロコシと同じで、大航海時代(14世紀ころ)に新大陸で発見された、歴史的にみると比較的新しい穀物です。
コロンブスが新大陸を発見したことで、私たちの文明社会には数多くの品物や文化などが持ち込まれ、また逆に新大陸にも様々なものを持ち込んだこの動きの事を、「コロンブス交換」と呼びます。
キャッサバは中南米辺りで発見された後、コロンブス交換でヨーロッパやアフリカなどに持ち帰られ、徐々にアメリカ大陸以外でも生産されるようになりました。日本でも米を育てる事が出来ない土地でサツマイモなどの別の穀物を育てることで食料を確保していた事例などが有名ですが、米や小麦を育てる事が難しかったアフリカでは、トウモロコシやキャッサバのような乾燥して痩せた地域でも育つ穀物が重宝されました。
また、コロンブス交換で入ってきた新しい穀物は、その後の奴隷貿易での食料としても活用されたことも知られています。
「米不足への備え」としての知識
2025年(令和7年)の日本では、昨年から続く米の価格高騰に国民が苦しめられています。昨年の「令和のコメ騒動」が話題になった後には、2025年も夏過ぎ頃から深刻な米不足になるだろうという話がされており、今だけでなく今後の日本の食料事情にも不安が多い状況です。
人間は生きるために炭水化物が必要です。日本では炭水化物と言えば、米や小麦が一番に思い浮かびますが、世界的にはトウモロコシやジャガイモ、そして今回紹介したキャッサバ(タピオカ)なども代表的な主食です。
もちろん日本の主食である米が、適正な価格で国民に供給される状況になることが望ましいのですが、生きるために自分たちで出来る事を考えておくことも大事でしょう。
今回ポン・デ・リングや白いたい焼きで紹介したキャッサバのように、炭水化物を得ることができる他の穀物についても知識を収集して備えておくと、本当に米不足に陥った際などには役に立つこともあるかもしれません。
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